現実離れした法科大学院の人材育成目標

    「点からプロセス」として、一発試験の旧司法試験から、法曹養成の中核としての役割を担わされ、今日に至っている法科大学院ですが、具体的には、そもそもどういう教育で、どのような人間を養成することを求められていたのでしょうか。

     度々引用している、「改革」のバイブルである2001年6月の司法制度改革審議会最終意見書を受けて、翌2002年3月に閣議決定された司法制度改革推進計画には、法科大学院が担わされることになったその中身が、具体的に示されている下りがあります。

     「司法を担う法曹に必要な資質として、豊かな人間性や感受性、幅広い教養と専門的な法律知識、柔軟な思考力、説得・交渉の能力等に加えて、社会や人間関係に対する洞察力、人権感覚、先端的法分野や外国法の知見、国際的視野と語学力、職業倫理等が広く求められることを踏まえ、法曹養成に特化した教育を行う法科大学院を中核とし、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた新たな法曹養成制度を整備することとし、そのための措置を講ずる」

     この国の新しい法曹教育のための制度立ち上げに、これはあくまで大きな理想を網羅的に掲げたとみるべきなのでしょうか。素直にこれを読めば、まず、そこに法科大学院にかぶせられた異常ともいうべき、過剰期待の役割付与をみることができます。

     「広く求められることを踏まえ」の前に、列挙された「法曹に必要な資質」。これを備えた人材を、有機的に連携するどこが担うのか、もしくはトータルで担うのかははっきり分かりませんが、文脈からいえば、それは司法試験や司法修習よりも、中核たる法科大学院が主に担うべきものといっているようにとれます。

     率直にいって、前記内容には、二つの疑問が湧いてきます。一つは、本来、ここで法曹養成機関が掲げるべきか疑わしい「資質」が含まれていることです。つまり、「豊かな人間性や感受性」「社会や人間関係に対する洞察力」は、いかに法曹に必要といっても、これは、このプロセスの法曹養成として法科大学院が担うべきものなのか、ということです。つまり、社会経験で培われるようなテーマまでここで掲げる違和感です。

     そして、もう一つは、これも含め、これらについて、法学既修2年、未修3年の法科大学院で、現実問題として、どこまで実現できるものとして考え、実現できるものに各法科大学院を作ることを考えていたのかという疑問です。

     しかも、さらに現実的な法科大学院制度を考えると、こうした人材育成の、いわば達成度が、法科大学院の評価につながっているのかは、甚だ疑わしく、そもそも評価につながる制度ではない、と思えます。

     いうまでもなく、法科大学院の評価は、現実的には司法試験の合格率であり、そもそも司法試験がこれらの達成度を測る形で機能しているのかどうかは疑問だからです。また、これらの達成度を「効果測定」として測る一発試験の在り方というのもよく分かりません。

     むしろ、法科大学院からいったん目を離して、前記法曹の必要な資質を見直してみれば、多様な経験を経て、法曹養成機関が教育によってつくるのではない「資質」を持ち合わせた、社会人が法曹の道を志してもらう重要性、法科大学院に来る前の法学部が担うべき法学教育の充実化、さらには、弁護士になったあとの先輩弁護士についての技術や倫理教育の場としてのOJTといった、むしろ法科大学院の登場を含めた「改革」によって、逆に失われつつあるととれるものが、本来カバーしている内容が含まれているように思えます。

     法科大学院の登場に、なぜこんな大きな理想と理念が掲げられなければならなかったのか、そのことの無理が法曹養成をどう変え、どう歪めたのか、そこが問われるべきなのではないかと思います。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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