弁護士に関する苦情(2)「依頼者のためなら、そこまで言うか」

     ネット上で、疑問に思っていることを書きこみ、それに対する回答も書きこめるYahoo!知恵袋に、最近、離婚を迫られた元夫からのこんな質問が出ていました。

     「元妻側の弁護士のやり方は当然なのでしょうか?」

     彼の元妻は、ある日、離婚したいと言って子供二人を連れて実家に戻りました。子供も離婚に反対していましたが、彼が話し合いを求めても、元妻側は応じず、その後「弁護士を通してくれ」というメールが彼のもとに届きます。

     やがて彼のもとに調停の申立書も届きますが、彼はその内容に驚愕します。日常茶飯事の暴言、暴力、子供たちを脅していて怯えているなどなど、身に覚えがないDV人間であるような内容が羅列されていたのでした。さらにSEXを拒否するとキレるなど、夫婦のデリケートな問題にも触れ、慰謝料と養育費が請求されていたのでした。

     彼は言います。

     「元妻の言い分を聞き、弁護士が申立書を作成するのでしょうが、依頼人のためなら、事実関係の確認もなしに事実にないこと、まして両親の離婚を望んでいない子供たちのことまで利用して申立書を作成する。弁護士は依頼者のためなら、そういうことは当たり前なのでしょうか」
     「依頼人のことだけを考え、その周りにいる人たちの人生なんて関係ないのでしょうか」

     もちろん、これは夫側の一方当事者の言い分です。第三者はそれがすべて事実であるとはいえせん。言い分が食い違うからこそ、司法の場が必要になってくるともいえます。ただ、真実を知っている一方当事者自身、つまり、相手の嘘を知ってしまっている側からすれば、それこそ、その嘘に加担して、相手に有利になるために、あることないこと書き並べている弁護士は、およそモンスターに見えてしまうのです。

     弁護士側は相手側の有利な言い分を主張しているだけ、真実追求の義務はない、と片付ける人もいます。だけど、言われている当事者としては、「あなたは本当にこれを真実だと思って、そちらの弁護をしているのか」「たまたまそちらにいるからそう言っているだけで、こちらについていたら、全く正反対の論理で矛盾を追及しているのではないのか」と言いたくなるのです。

     実は、こうした苦情は、前にいた新聞社で、すごく多かったのです。

     もちろん、こうしたケースの中には、前記したように客観的にみて相手側の言い分が正しいという結論のものもあるでしょうから、その意味では、相手側弁護士の主張は必要だったという結論になる場合もあるでしょう。つまり、嘘ではなかったと。

     しかし、問題は客観的にも嘘の場合の考え方です。客観的に嘘かどうかは裁判所が決めることなんで、こちらも弁護士をつけて、徹底的に争えばいい、ということにはなります。前記相談者の彼も、弁護士をつけ、苦悩しながら、最終的には、親権は元妻、養育費は相場的金額、面会月2回という条件で調停離婚か成立したそうです。でも、彼は「泥沼化させ離婚を成立させ報酬を得る」ことが弁護士の正義かと訴えています。

     ここで言わなければならないことは、二点あると思います。ひとつは、やはり、こうとられることも含めて、弁護士という仕事の性格の宿命であるという面。双方が弁護士をつけ、十全な主張をすることで、正義が実現していくという考え方もできるかもしれません。

     そして、もう一つは、やはり、それでも現実の対応は弁護士によっても違うということです。依頼者のいうことが嘘だと分かれば、受任を断る弁護士はいます。弁護士がついて無理筋の強弁をしている案件を、他の弁護士がきっぱりと「私なら受任しない」と言うのを何度も聞いています。それは、もちろん、そんな強弁を求める依頼者と案件ならばという意味です。

     黒を白にするのが弁護士の仕事ではないということに強い意識を持っている弁護士は、受任前に弁護士としても、法律家として、まず、ジャッジするのです。そこを仮におカネ儲けのために、簡単に越えてしまう弁護士がいるとすれば、私はやはり本来の在るべき姿ではないと思います。

     この元夫の書き込みへの回答では「弁護士は正義の味方でもなんでもない」「依頼人のために白を黒にするのが弁護士の仕事」「今度つける弁護士に騙されないように気をつけて」などなど、弁護士なんてそんなもんだとする市民の回答がほとんどでした。

     その中で、以前、犯罪被害者として、法廷で悔しい思いに涙を流した女性の言葉が出ていました。弁護士という仕事に強い疑心を感じた、と。当時の彼氏で現在の夫は、やはり弁護士でした。「弁護士は最低だ」と涙を流す彼女に、その弁護士の彼氏も涙を流して、「君には何の落ち度もない」と繰り返し言ったそうです。そして、「弁護士は真実かどうかを考える立場にないので、相手の弁護士は悪くない」とも付け加えたと言います。

     弁護士の仕事として市民が理解しなければいけないことだとしても、現実的に理解している人の理解の仕方は必ずしも弁護士が求めているものにはなっていません。やはり、それを含めて、この仕事の宿命というべきなのでしょうか。

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    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





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    No title

    以前の遺産分割審判で、家裁の法廷で相手方弁護士が、私が責任を持って処理するから、訴訟を取り下げてほしいと裁判官の前で言いました。当方は本人訴訟です。動産に関しては相手の弁護士を信頼して取り下げました。遺産である他の不動産につ取り下げるように依頼されましたが、遺産の果実(賃貸住宅の収益)を何年間もも開示するように言っているのに開示してもらえない状態で、まともな話し合いができるのでしょうか?と相手の弁護士に言うと黙ってしまいました。同席してた相手方本人が、開示していると虚偽の返答をしました。裁判官は、当事者同士での話し合い解決は無理ですねと判断して審判を続行することになりました。
    さて、取り下げに応じた動産の分割ですが、相手弁護士に後日連絡を取ると、「もう依頼人から解任されたから、なんともできない」との返答でした。法廷での約束を果たさない、そして遺産の果実である不動産収入状態も明かさない。このようなことが弁護士として許されるのでしょうか?弁護士倫理規範に違反していると思います。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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