「受からない」法科大学院制度の想定範囲

     法科大学院修了者の新司法試験合格率の下降が止まりません。2006年48.3%、2007年40.2%、2008年33.0%、2009年27.6%、2010年25.4%、そして今回発表された 2011年が23.5%。「受からない」法科大学院制度は、どんどんその程度を悪化させていることを示しています。

     また、前74校中、前記平均合格率を上回ったのは、18校、実に全体の75.7%の法科大学院が平均以下、最高の一橋大学の57.75%から最下位の姫路独協大学のゼロまでの開きがあり、法科大学院制度の合格率からみる学校間格差と偏りは歴然としたものになっています。

     さらには、既修・未修別の合格率は、前者が35.4%に対し後者は16.2%と、大きな開きがあり、これも「多様な人材確保」という理念が壁にぶっかっている現実を示しています。

     つまり、ここで示されているのは、法科大学院という制度の現時点での「失敗」もしくは「見込み違い」のようには見えます。法曹関係者のなかには、ここまでの法科大学院のふるわない実績に対して、本音はともかく表向きは、「まだわからない」といったデータ不足を理由にして静観する見方もありましたが、さすがにそういう次元の話ではなくなってきています。

     もちろん、合格率が伸びない法科大学院が穏やかでないのはいうまでもありません。既に今回結果から6校が補助金減額の対象になっていると伝えられています。この6校に在籍している学生は、自分の実力とは関係なく不利益を被ることになりますが、それはその学校を選んだ自己責任ということになります。こうしたことがはっきりしてくれば、ますます合格率下位校に志望者は行かなくなりますから、学校の合格率は下がり、ずるずると下の方から、削減の対象になって消えゆく運命をたどります。

     しかし、制度としてみれば、合格率最上位の一橋大以下、5割を超したのはたった3校です。当初、掲げていた修了者「7、8割合格」からは、それでも遠く及んでいないのですから、その意味では、全校アウトの評価になっても不思議ではないのです。

     この惨状は、本当に関係者の想定外だったのか――「分かっていたらやらない」という理屈は理屈ですが、想定と現実の間に格差があるほどに、やはりそこには疑問も生じてきます。

     誤算の最大の理由は、74校という立ち上げた法科大学院の予想外の多さがいわれてきました。これが「7、8割合格」未達成の看板に偽りありとする批判への当局の抗弁です。

     しかし、この制度の想定としては、一つ大きなポイントを指摘する意見があります。この法科大学院構想が全大学体制で進められたこと、つまり、なぜ、あらかじめ設置数を制限し、一定の基準で参入を制限しなかったのか、という点です。この理由は、仮にそういう方向で制度を導入しようとした場合、設置基準で大学間がもめて導入がスムーズにいかなかった可能性、さらには全大学であればこそ、最低年合格者3000人というラインとも結び付いたというものです(小林正啓弁護士「こんな日弁連に誰がした?」)。

     この見方に立つと、二つのことがいえるように思います。この制度設計者にとって実は「乱立」は想定内であり、あえて前記目的を優先させるために、この方法が選択されたとみることもできること。もう一つは、仮に「乱立」になっても、「7、8割」の達成を含め、はじめから一定の合格率が確保されるとの見通しを付けていたのではないか、ということです。いまだに法科大学院関係者からは、司法試験で絞るな、合格させろ、といった声が聞こえてきますが、そもそもそこははじめから「門」の方の調整に期待していたのではないか、ということです。

     また、この構想に対しては、当初から、遠からず法科大学院の「淘汰」が始まり、結局、旧司法試験合格上位校だけの制度になるといったことも法曹関係者の間でささやかれていました。「淘汰」そのものを想定していた、「淘汰」に巻き込まれない関係者たちが制度を推進していたとしても不思議ではありません。

     前記した補助金削減を含めて、今のところ、この制度による影響の責任は、志望者の自己責任であり、制度設計者たちということにはなっていません。しかし、こうした制度をめぐる関係者の思惑や見立て違いを考えると、やはり割り切れないものが残ります。


    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
    http://www.shihouwatch.com/

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信開始!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 資格試験
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR