弁護士「マネーゲーム」が定着した社会

     以前、毎月ニューヨークにいる日本人から届く、生のご当地情報を流していたブログがありました。現在は、その連載を終了していますが、今から3年前のエントリーで、ニューヨークの弁護士事情をレポートしているものがありました(「月刊 moreな『ニューヨーク通信』」)。

     この内容は、非常に印象的なものでした。ニューヨークには各分野の専門弁護士がおり、マンハッタンの中心で「ロイヤー」と叫ぶと多数の人が振り返ると言われるぐらいに弁護士が多いとしています。一般市民が一生に一度かかわるかどうかも分からない日本と違い、言われている通り、弁護士は当たり前のようにお世話になる存在で、アメリカ在住の日本人も、ビザ申請、マイホームの購入、会社設立などで、いちいち弁護士のお世話になるとしています。

     こんな話も出てきます。

     「交通事故が発生して、負傷者が救急車で運ばれるとその運ばれた病院にすでに何人もの弁護士が待機しており負傷者に直接セールスして依頼を受ける(代理人になり保険会社と交渉)。 成功報酬制で保険受取り金額の30%(それぞれ異なるが大まかに)もらえるので弁護士も気合が入る」
     「一般的に、負傷者側専門の弁護士より(病院で待機している)保険会社側の弁護士の方が、優秀です。保険会社側は、当たり前ですが、できるだけ保険金額を抑えようとする。逆に負傷者側の弁護士は自らの報酬にも関ってくるのでできるだけ取ろうとする。悪い言い方をすれば、お互いの揚げ足取りをして妥協点をさぐる」

     彼も言いますが、これは完全に弁護士がかかわるマネーゲームです。アメリカで事故を起こした当事者がすぐに謝罪しない傾向にあるのは、こうした現状が背景にあるようです。いうまでもなく、過ちを認めた形になることが、その後の司法手続きでのマネーゲームを有利に進めなくさせるからです。

     さらに、こうしたマネーゲームが定着した社会の弁護士と市民の関係がどういうものなのかについて、極めて印象的な報告が出てきます。

     「ここでも資本主義の原理が働いていて、お金持ちは何かあれば多額のお金を払い優秀な弁護士をつけて解決できます。逆にお金がある為に、何かあればすぐに訴えられます。貧困層は、お金がない為に何かあっても訴えることすらできないが(公的機関やボランティアで可能な場合もありますが、)逆に問題を起こしてもお金がない為に訴えられることも少ないです。(弁護士はお金が取れないと分かる相手と交渉はしたがらない。理由は簡単で儲からないからです)」

     ここに描かれているのは、いうまでもお金を中心に動く弁護士の姿です。そして、そのお金がないということは、訴えることができないどころか、訴えられるべきことも訴えられない社会である、と。そして、このおよそ「社会正義」とは無縁な世界を作り出し、支えているのが、ほかならない弁護士であるという実態です。

     実は、この手の弁護士の拝金主義と、彼らの金儲けが当然の前提としてまかり通っているアメリカ社会の話は、同国で仕事をしてきた日本人からよく聞く話です。そして、必ず付け加えられるのは、それとは違う日本の弁護士の姿と、それがアメリカ化することへの懸念です。

     以前にも書きましたが、こうしたいわばアメリカの「訴訟社会」の一面にかかわる話になると、制度や国民性の違いを挙げて、こうはならないという見方が必ず出されます。それを聞くと、あたかも弁護士もまた、日本ではアメリカのような、それを支える存在にはならないといっているように聞こえます(「『訴訟社会』を支える弁護士の本当の姿」)。

     しかし、前記レポートを見る限り、資本主義の原理に基づく弁護士の自由競争は、結局、お金持ちにだけ「正義」の主張機会が与えられ、貧困層には与えられないばかりか、その「不正義」も追及されない社会を生み出しているように見えます。

     そして、弁護士を増員させ、資本主義的な競争による「淘汰」での良質化を強調し、あたかも津々浦々に弁護士が登場する社会を支えるために、大衆がお金を投入する意思と余裕があるように描きつつ、なぜかそこでは弁護士が事件・依頼者を資本主義的に選別する競争は行われないように描いている方々が、わが国に沢山いることを考えると、このレポートが伝えることを、とても他国のこととして片付ける気持ちにはなれません。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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