「実務家教員」から見る法科大学院事情

     法科大学院には弁護士などの実務家が教員として参加しています。

     日弁連によると、2010年5月現在、全国74校の法科大学院の専任教員1690人中、実務家教員は563人で、内弁護士は430人、兼任(非常勤)は1967人中、実務家教員が1260人で、内弁護士が1025人。

     専任教員総数に占める実務家教員総数の割合は30%強、弁護士教員の割合は25%強と、過去3年でほとんど変動がなく、実務家教員総数に占める弁護士の割合も75%強を維持しています。ちなみに実務家教員には、弁護士のほか、派遣裁判官や派遣検察官、官公庁出身者などが参加しています。

     複数校にかかわっている人もいますが、専任・兼任合わせて少なくとも延べ人数で約1500人の弁護士が、法科大学院の教育にかかわっている現状にあります(「弁護士実務家教員の状況」)。

     その実務家教員、とりわけ非常勤の教員が冷遇されているという話が伝わっています。専任にはそれなりの実績や経歴を持った弁護士がなっていますが、非常勤には若手が沢山います。冷遇といわれているのは、まず、その報酬で、本業を犠牲にする経済的メリットのなさから、就任を敬遠される傾向もあるようです。従って、協力は、ボランティアという受け止め方もあります。

     しかし、冷遇というのは、報酬だけにとどまらないようです。法科大学院でのカリキュラム決定などには、専任講師でない限り、携われないことも多く、教育内容の改善提言をしても相手にされないといった状況もあるようです(「福岡の家電弁護士 なにわ電気商会」)。

     前記ブログには、こんなエピソードも書かれています。

     「報酬もでない、意見も通らない、しかも学生のために真剣に教えたら『試験対策だからダメ』などと言われたのでは、いくらヤル気のある人でもモチベーションは著しく低下するのは当然です。ある若手弁護士が講師を頼まれたときには、合格率のあまりの低さに、責任を感じてしまって引き受けられない、と断ったということも聞いております。福岡でも、あるLSの外部講師が、交替要員が見つからないということで、長期間講師を続けざるを得なくなったという有様でした(そうなるとさらに人材供給は困難)」

     そもそも実務家教員については、法科大学院制度での位置付けで疑問視する見方があります。以前にも触れましだ、法科大学院教員について、実務家は概ね2割以上という基準はおかしいのではないか、という意見です。現実的には8割は学者でもかまないし、2割も司法修習を経て法曹になった実務家とは限らず、実務経験があればいいことになっています。

    実務家を育てるのに、この体制はどうなのかという話です。この現状は一方で、法科大学院が受験指導・対策はしない建前ながら、司法試験合格率が実績になるという矛盾や、「職業訓練校」的性格になりきれない現実ともつながっています。大学が運営し、「法務博士」という学位を授ける教育課程と、司法試験や実務家教育との関係が、すっきりつながっていない観があります。

     そして、この体制が、何を守り、何を優遇しようとしているのか、大学運営に法曹養成をゆだねていることによる、その事情も見えてくるように思うのです。 

      「たったひとつ変えるだけで劇的に改善するロースクール制度案(?)」 

      以前、弁護士のブログにこんなエントリーがあったのを見つけました(「赤ネコ法律事務所・別館!」)。その改善点とは、ずばり「ロースクール教育を行う『教員』は、全て実務家にすること」でした。

     「だって、司法研修所だって実務家教官しかいないやん。修習の代用である以上、当然だよね?そして、教員を全て実務家で揃えることが出来ないロースクールは廃止です。ロースクールがそもそも多すぎるから、『ロースクール生のほぼ全てが法曹になれる』という当初の理想が実現しないんだもん。 少しロースクールは減った方がいい。減らす理由が「合格率の低迷」なんてアホです。 で、現実に法曹教員を揃えられないロースクールは淘汰され、ローが減ることにより『ロースクール生のほぼ全てが法曹になれる』という条件は満たされる」。

     さらに、実務家教員は、任期制にして学者化しないようにし、司法試験問題を作成するのもすべて実務家にして、その作成者は一切法科大学院での教鞭を取れなくして、学校間の枠を越え、実務家教員同士の意見交換会などを定期に実施する――といったことも提案されていました。

     この世界の多くの方は、「こんなことは実現しない」とおっしゃるかもしれません。しかし、少なくともそういう方は、前記矛盾を含めた、法科大学院制度の現実だけでなく、それを取り巻く法曹養成と直接関係のない事情を、ある意味、よく分かっている方のような気がします。


    ただいま、「『給費制』廃止」「法曹の養成に関するフォーラム」についてもご意見募集中!
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    No title

    私は民間企業人事部採用担当です。大学院内部の事情は存じませんが、ここ数年で文系M2の就職受験生が急増し、しかもその大半は営業にまったくむかず、正直迷惑感を感じています。法科大学院出身も多い。企業では、その学生が部下になってほしいかどうか?活躍するかどうか?という視点を必ずもって面接官は面接しています。今企業は本当に余裕がありません。企業には就業規則賃金規定というのがあり院卒は初任給から高い賃金テーブルになります。よっぽど欲しい理系の専門家しか院卒はこまるのです。稼ぐ営業職が欲しいのに、御社で法務を担当したいとか、メセナ事業を担当したいとか『君眠たいの??院卒の給料は高くて、企業は採用を自重せざるをえないの知ってるの?』と思います。法科大学院にいったら初志貫徹して法曹界に無事就職して欲しいものです。企業に責任を持ってこられても困りますね。そもそも、私は法科大学院を卒業したのに司法試験に失敗したので御社に入社して法務を担当したい、とか失礼な話です。

    No title

    「実務家教員」ってのはどれぐらい給料が出ているんでしょうか?

    とある大手事務所に、やたら「公益活動」を事細かに書き連ねている事務所がありますが、そこは、冤罪事件とか消費者被害とか難民問題なんかは一切やらない(だって、そんな話ひとつも載せてない)くせに、どこぞの省庁の諮問委員だか審議会だかさらには任期制公務員の課長補佐に就任しただか、あるいは大企業団体の何々委員だかと並んで、どこどこの法科大学院の講師に、という話をやたら細かく書き連ねているんですね。

    大きな医療法人に、臨床経験豊富な医師を医科大学に講師として派遣したり、晴れて医師免許が取れた新人医師に研修の場を提供したりするところがあるかどうかは知りませんが、少なくともそれを「公益活動」と称して、部外者も見るようなHPに事細かに書き連ねるようなところだけはないでしょう。外食チェーンが調理師に、理容チェーンが理容師にそんなことやるなんて絶対に考えられない。
    だって、単なる後進の育成が「公益活動」なわけないから。

    無報酬でない限り公益活動ではない、とはいいませんが、まともな額(少なくとも公務員の給料の上)の報酬が出てるのなら、公益活動なんて称してもらいたくありませんね。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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