見立て違いの弁護士増員「予想図」

     弁護士のニーズは沢山あるから増やさなければならない。ニーズはあるのだから増やしてもやっていける――弁護士増員政策に弁護士会がカジを切った時、どのくらいの弁護士が本気でこう思っていたのか、今となってみては確実なことは調べようもありませんが、正直、疑問に思います。

     やっていける、たとえ年間合格者が3000人になっても、大丈夫という確信を抱いていた人は、それほどいたとはどうしても思えません。年間500人の時代に弁護士になった人からすれば、6倍という数に、少なからず「大丈夫か」という気持ちを持っていらした人は決して少なくなかったと思います。

     それでも弁護士会が紆余曲折を経ながらも、増員推進路線できたのは、これを完全に信じていた人もいたとしても、大方、「社会のすみずみまで」とか「社会生活上の医師」とか「二割司法」といったスローガンの前に、「これも時代の流れか」とか「反対もできまい」といった、うまくいってくれること期待半分の諦めの境地もあったのではないか、という印象すら持っています。

     ただ、ある意味、嫌な予感の方が的中したというべきかもしれません。当然のこととは思いますが、よく聞く本音として、ニーズが沢山あって全然弁護士が足りないのなら、何で今、増員弁護士の「受け皿」が問題になるのか、という声があります。増員路線選択を支持した当事者の発言とみれば、他人事のようにも聞こえますが、そうした声が少なくとも中堅以上の弁護士から聞かれること自体、やはり前記不確かな未来予想図に期待と諦めから、一票投じたことを示しているように思うのです。

     この結果は、単純に考えれば、そもそも大丈夫という見立てか違っていたと考えてもいいと思います。しかし、「改革」推進派はそうではなく、これはまだ勝負がついているわけではなく、むしろ弁護士の努力不足をいうようであります。実は弁護士が進出するところは、まだまだあるのだと。

     また、日弁連も最近の機関誌「自由と正義」のなかで、弁護士の増員は「法の支配を社会のすみずみまで貫徹させる」という日弁連提言には「ほど遠い」として、「弁護士を進出させる必要性が高い領域においては、その政策を早急確実に実現するために、組織の弁護士採用の拡大に向けた制度的措置も検討されるべき」としています。(2011年8月号「日弁連が行った司法改革提言と今日の課題」)

     具体的な「受け皿」の見通しが示されていないことと、やはりその中で組織内弁護士に期待し、その制度的裏付けがほしいとしている点で、依然として頼りない、不確かな未来予想図と読まれた弁護士会員の方も多かったとは思います。

     そもそもの見立ての話をすれば、問題はやはり「ニーズ」という描き方です。これまでも書いてきたように、有償と無償のニーズがごちゃまぜの議論なのです。大量の弁護士を支えられる有償のニーズがどれほどあるのかという見立ての問題です。確かに社会に大量のニーズがあっても、それが無償もしくは無償に近いものを社会が期待するニーズであるのならば、単純にそれに当たる大量の弁護士を支えきれません。

     インフラとして、どうしてもそうしたニーズに対応した弁護士を増やすというのであれば、まず、それを支えられる、それこそ制度的措置がなければ破たんするのは当たり前のことです。

     ところが、どうもいったん決めた、増やすという結論に対して、現に問題として現れている、そこの当然に成り立たない部分を、弁護士側の努力ということで埋めるよう迫っているのが「推進派」の論調のように見えます。

     しかも、無理の部分の問題の大衆へのしわ寄せに関して、競争の「淘汰」によって弁護士が良質化し、逆に大衆が利を得るようなきれいな描き方がかぶせられています。さらにもっと嫌な想像をすれば、これは見立て違いではなく、「利」をしっかり確保した方からすれば、すべては見立て通りなのかもしれない、ひそかに描いていた予想図通りかもしれない、ということです。その目的も、公式見解や日弁連がいまだに掲げている「提言」のようなものではないことになります。

     現状を冷静に見て、どこかで見立て違いの予想図を書き変えないことには、弁護士過剰時代の混迷としわ寄せは、国民を危険にさらしながら、えんえんと続くことになります。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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