法科大学院本道に疑問符つけた民主党PT

     民主党の法曹養成制度検討プロジェクトチームが、8月22日にまとめた「中間とりまとめ(メモ)」が話題になっています。事務局長で弁護士でもある前川清成・参院議員が、ホームページ上で紹介しています。

     なにが話題かといえば、政府の「法曹の養成に関するフォーラム」が既に「貸与制」を前提とした方向にカジを切るなか、とりあえず法曹養成全体の見直しまで「給費制」維持しようとする動きとして注目されていることがありますが、さらに経済的な負担の面で法科大学院の問題について直言していることです。

     法科大学院修了者「7、8割」程度の司法試験合格の想定に反し、2010年度合格率は25.4パーセントと低迷、また法科大学院74校のうち約4分の1に当たる17校で修了者の司法試験合格率が1割に満たない状況で、法科大学院志願者数も2004年度は7万2800人、志願倍率13.0倍に達したものの、2011年度は2万2927人、志願倍率5.1倍と、志願者数で約4分の1、志願倍率で約3分の1程度にまで落ち込んでいる――。こうした抜本的な見直しが必要な現状を確認したうえで、次のように指摘します。

     「法科大学院が十分な教育内容を確保できていないにもかかわらず、司法試験を受験するには、原則として法科大学院を修了しなければならないこととなったが、法科大学院で原則である3年間学ぶには、学費だけでも、平均して、国立においては271万1088円、私立においては427万8817円を要する(平成23年8月18日、文部科学省配布資料6)。したがって、経済的に困難な立場にある者に限らず、法曹を志す者にとっては、この学費こそが最大の経済的障壁となっている」

     「給費制」問題で修習生の負担が論議されるなかで、そもそも現在の法科大学院の学費は「最大の経済的障壁」と断じたことが注目されます。さらに修了に多額の学費を要するため、司法修習修了者のうち48.3パーセントの者が奨学金の貸与を受けており、平均貸与額合計は347万円にも達する現状を挙げ、現実的には受験者の約75パーセントが不合格になる現状で「不合格者の『再スタート』を阻害」してしまうといった、これまであまり指摘されてこなかった問題にまで言及しています。

     そのうえで、学費を大幅に引き下げるためには、「思い切った多額の財政支援」が必要になるが、財政的制約でそれができないのならば、法科大学院修了を司法試験受験資格とすることを見直すべき、としました。期待されていない教育効果を上げていないのならば、法科大学院教育強制に合理的理由はなく、多種多様な人材確保というならば、法科大学院に統一、画一化する理由もなく、独学も含め多種多様な勉強方法もあっていい、ということを言っています。

     民主党PTは、ここで法科大学院を本道とし、それを守れとする動きと、それを前提とした議論とは、明確な違いを示しています。

     そして、「給費制」問題については、こう言います。

     「『貸与制』か否かは、法曹への切符をほぼ手中に収めた者にとって、その経済的な負担がさらに増加するか否かの、いわば副次的な問題である。したがって、今般、私たちは『貸与制』に関して、とりあえずの結論を得るに至ったものの、引き続き本質的な課題、すなわち法科大学院制度や、経済的弱者に対しても司法試験受験の機会を保障する方策、加えて『予備試験』の内容や、『回数制限』の緩和、司法修習制度の期間、司法試験合格者数、さらには我が国において法曹が果たすべき役割など、法曹養成制度全般の抜本的な検証と、検討を行い、早期に見直しに着手すべきである」

     「とりあえずの結論」という部分は微妙なニュアンスです。前記した現状認識のもと、法曹養成全体の見直しまで「給費制」継続する動きとの情報が流れています。

     「給費制」維持を求める弁護士からも、出されていた法科大学院元凶説がここで確認されている意味は大きいと思います。そして、法科大学院をなんとか本道としようとしている側からのご意見のような無理がないものに受け取れます。多種多様な勉強方法を認める一点にしても、現状からすれば、法科大学院強制の不合理は明らかですから、逆にいえば、無理に聞こえる主張は、何が何でもという方々の別の目的によるものであることも明らかです。

     そういう意味で、「給費制」であれほど経済的負担の問題を主張する日弁連が、すっきりと民主党PTのような論調に立てていない現実にも目が向けられていいと思います。

     「貸与制」移行の方向を確認し、日弁連・弁護士側が主張する「法曹養成全体の議論」先行論にも委員側の抵抗が出ている「法曹の養成に関するフォーラム」に対し、この民主党PTの動きがどういう形で影響し、また、どういう流れを作っていくのかに、期待と警戒する見方が出てきていますが、それとともに、法科大学院本道という前提に縛られない議論につながるのかが注目されます。


    ただいま、「『給費制』廃止」「法曹の養成に関するフォーラム」についてもご意見募集中!
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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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