日弁連「改革」路線礼賛回顧の狙い

     弁護士の中には、既にご覧になった方も多いとは思いますが、日弁連の機関誌「自由と正義」の8月号が、「司法制度改革をめぐる今日的課題」という特集を組んでいます。

     日弁連が出した1998年11月の「司法改革ビジョン」と、1999年11月の「司法改革実現に向けての基本提言」(ともに理事会採択)に照らして、現在の「改革」全体、法曹一元、裁判員制度・刑事司法改革、民事法律扶助・司法アクセスについて、到達点と課題を明らかにするというコンセプトで、弁護士3人、学者1人の論稿を掲載しているものです。

     しかし、特集の狙いははっきりしていますが、これを今、組んだ日弁連の意図となると、ちょっとひっかかるものがあります。つまり、内容をみても、前記趣旨からしても、これまでの日弁連の司法改革路線を全面的に踏襲し、11年前に掲げた旗を降ろさないぞという強いアピールのように思えるのです。

     つまり、未達成については率直に認め、課題として提示しながらも、当初掲げた提言、目標の修正というニュアンスはありません。その後の状況からみた誤算、すくなくともそもそもの見立てを誤っているとするような誤算は、どこにも認められないという検証結果のようにもとれるのです。

     これが、日弁連の「改革」路線の修正という意味で、会員の期待を背負ったはずの現・宇都宮健児会長の執行部で、発行されていることにも違和感を持つ会員がいてもおかしくないと思います。

     とりわけ、「どうなの司法改革通信」Vol.12で取り上げましたが、会員の関心が高く、会内外で大きな議論になっている弁護士の増員について、特集のなかの論稿は、ゼロワン地区解消、企業内弁護士や任期付公務員の採用、被疑者国選弁護への対応での成果と今後の課題を挙げつつ、問題となっている弁護士需要と合格者3000人の是非といったテーマに触れていません。

     前記日弁連の諸提言に引きつけた記述は分かりますが、ここで事情変更も見立て違いもないというのは、今の会内世論の現状との隔たりを率直に感じます。

     そして、前記違和感ということで付け加えれば、この企画自体は、おそらく今、旧主流派の候補が会長に当選して、現執行部を構成していたとしても、ほぼ同じ内容の企画になったのではないか、と思えるのです。もっとも、これを日弁連会務の継続性とも、現執行部への過剰期待ともいうことはできなくありませんが。

     さらに、この企画への違和感を指摘する弁護士の見方があります。弁護士の執筆者が全員第二東京弁護士会の会員であること、執筆者の最も古株が1999年登録で、あとは全員前記提言以降登録と若く、なぜ若手がこうした日弁連のこれまでの路線の理念を礼賛する形になっているのか、なぜ執筆弁護士が全員第二東弁なのに、例の大宮法科大学院大学統合への言及が全くなく、司法修習制度や給費制をめぐる問題についても触れていないのか――などです(花水木法律事務所)。

     第二東弁が既に書いたように、法科大学院制度創設へ弁護士会内で主導的役割を果たしたのをはじめ、日弁連の「改革」路線そのものでも、日弁連執行部に近いスタンスをとってきたという評価があることを考えれば、この企画はおのずと深読みしたくなるものをはらんでいるというべきかもしれません。

     到達点と課題を明らかにするという企画の趣旨は、それ自体「改革」路線を顧みることのようにはとれても、出来上がったものみれば、見方によっては「あの時の提言はまちがっていない」というまさに理念礼賛のようにとれるものです。

     「改革」路線を顧みる形として、これが既に多くの会員の共通認識のうえに立つものであるのか、そのこと自体を疑いたくなります。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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