ある地方紙の「給費制」論調

     いわゆる地方紙と、全国紙の論調には、違いが出ることが、よくあります。なかなかチェックしきれないのですが、その度に、地方紙にもできるだけ目を通さなければいけない、という気持ちにさせられます。

     今回の司法改革についても、そのトーンが微妙に違うことに気づくことが度々ありました。裁判員制度にしても、「司法への国民参加」の大義を掲げて、スタートありきで横並びの全国紙に対し、やや慎重な論調を掲げる地方紙もありました。

     今回の「給費制」問題でも、「貸与制」移行で決着と見ているようにとれる全国紙の姿勢に対し、違う姿勢を示すものが現れました。

     「社会的使命を帯びた法律家の卵を国民が育てる。そう考えてもいいのではないか。司法修習生には修習専念の義務がある。労働実態のない給与ではなく、実情に即して住居や生活費、引っ越し代などを国が支給しても悪くない」

     京都新聞が8月17日掲載した社説「法曹養成  もっと身近な存在に」の結論部分の記述です。法曹を「国費」で養成することへの一定の理解を求める意見に読めます。

     この社説の注目すべき切り口は、司法制度は「社会インフラ」であり、それを支えるのは、弁護士であるということです。弁護士側が強調するこの見方に、市民側の実感がないのは、費用が気になって市民が弁護士に町医者にかかるように依頼する実態がないことであるとしつつ、被災者に弁護士が必要である現実を強調して、社説はこういっています。

     「市民が弁護士の助けを求めやすくなる制度がほしい。米国のような訴訟社会は好ましくないが、弱い立場の者が法律に守られる『インフラ』を社会に築くべきであり、担うのは弁護士だろう」

     つまり、「改革」がいう「身近な司法」にも、さらに弱者救済にも、「インフラ」整備としての弁護士の存在を考えれば、養成への「国費」負担も、市民として考え得る余地があるのではないか、という投げかけに読めます。

     この見解を読むと、例えば、弁護士の「それでもそこそこ儲けている」経済的状況から、貸与制でもやれるとか、あたかも受益者負担の考えに立って、自費で養成されなければ、国民の理解が得られないという主張に傾斜している全国紙が、ことさらにこの「社説」のような見解を封印し、国民の目にさらさせないようにしているのではないか、という気持ちにすらなってきます。

     受益者という意味でいえば、そうした法曹を含む司法「インフラ」の受益者は国民であり、そのための「国費」負担という考え方も本来的にあることを伝えていない感じがします。「給費制」の廃止は、弁護士の意識や社会の弁護士に対するとらえ方を、こういう考え方から分断するもののようにも思えます。

     地方紙の論調が、全国紙のそれと違う一つの理由として、権力との距離を挙げる声が聞かれます。権力の圧力を直接に受けやすい分だけ、全国紙の体制批判のトーンが弱いとか、既定路線への異論を掲載しない傾向があるというのです。

     その意味で、これまでも裁判員制度も含めて「改革」推進への「やぶへび報道」は、極力回避してきたととれる全国紙のスタンスも、こうした傾向のなかに位置付けられてもいいようにも思います。今回の震災と原発事故で、国民も気づいてしまったことですが、この国には、実はいくつもある「村」と、その一角を占め、協力している大マスコミによって、国民に知らされていない「不都合な真実」は沢山あるということです。

     そう考えれば、このまま「給費制」が消えていこうとしている現実そのものが、今回の「改革」を取り巻く状況を端的に示しているようにも思えるのです。

    ただいま、「『給費制』廃止問題」「法曹の養成に関するフォーラム」についてもご意見募集中!
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    http://www.shihouwatch.com/

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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