「飛び込み客」への弁護士目線

     身近で親しみやすい存在を目指す、と、いまや多くの弁護士が言っています。だから、弁護士に知り合いがいない一般市民が、弁護士を必要としなければならなくなったとき、当然、それこそ町医者を訪ねるように直接法律事務所の門をたたくことだってあっていいはずです。

     ところが、少々踏まえておかねばならない事情があります。

     もともとこの世界では、弁護士との最初の出会いは、知人・親戚の紹介というラインが、本道のような受け止め方が、弁護士側にあります。いわゆる「飛び込み客」について、断る事務所もあるのです。

     その理由としては、弁護士からは「信頼関係が築きにくい」といった、市民としては、分かったような分からないような理由が返ってきたりもしますが、ひとつやっかいな問題は、相談の位置付けです。

     弁護士のなかには、「飛び込み客」に知恵だけもっていかれることを警戒する人がいます。そういう市民のなかには、いかにも依頼するような顔をして、あちこちの法律事務所で法的指南を受けて、結局はどこかへいってしまう人がいる、というのです。

     えー?という方もいるでしょう。それやっちゃいけないの?と思われるかもしれません。別にいいよ、それでもいいからいらっしゃい、という弁護士もいると思いますが、ただ、弁護士としては法的指南は有料課金対象のお仕事なので、折角時間を割いて相談に応じて、はい、さよならは、知恵だけ持って行かれた感を持つのです。一応、30分5000円の相談料の目安はありますが、その30分の中身の濃淡では、そんな感じにもなるもしれません。

     また、もう一つ、最近の傾向として、弁護士が事務所などで業務に絡んで、襲われる事件が発生していることを受け、弁護士側が「飛び込み客」に対する警戒感を強め、弁護士会も注意を呼びかけている現実もあります。(「弁護士の自己防衛は不吉な兆候」)

     だが、市民側からすると、困った問題です。弁護士の方には、実はこの辺の認識が薄い感じもしますが、市民のお客さん感覚からすると、ビジネス社会の慣行として、お見積りも含め、正式にお申し込みする前の相談は無料という感覚があります。法的相談はそれ自体が問題解決の薬にもなるわけですから、前記した相談とは質的に違うのですが、なかなかそこが一般には理解しにくかったりします。

     また、別の回でも、書きましたが、弁護士にもセカンド・オピニオンが必要になってくると(「弁護士のセカンド・オピニオン」)、市民としては実際にいくつかの法律事務所を回って弁護士の意見を聞かなければならない局面だってあります。紹介ありとなしで、法律事務所側の対応に大きく差があるのでは困りますし、その差があるということが市民にとって法律事務所を敷居の高い存在にしていくとも考えられます。

     模範解答をいえば、知人などに弁護士の知り合いがいなければ、弁護士会の法律相談センターや、今は日本司法支援センターへ、ということだとは思います。これで弁護士側も「紹介」という形で一安心だと。現状からいえば、まず、やはり個人的な紹介者があれば、紹介してもらうのが良いでしょうし、いなければ前記したような機関にいくのもいいとは思います。

     ただ、前記した機関にたずねた市民が必ず納得するような形で弁護士とのファースト・コンタクトを果たしているかというと、残念ながらそうは言い切れません。出会いの機会保障という意味では、「紹介なし」のラインが現実的に細く絞られるのは、「身近な存在」としては大きなカセです。

     もっとも別の事情からいえば、弁護士も経済的に厳しい情勢下、そんなことはいってられない、として、「飛び込み」ウェルカムな方もいるでしょうし、前記したような暴力を警戒せざるを得ない状況に頭を悩ませている方もいると思います。

     市民とのファースト・コンタクトの形は、あるいは弁護士会が思っている以上に、弁護士にとっての課題です。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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