「若手」が弁護士会を牛耳る日

     最近、ツイッター上に、ある弁護士のこんなつぶやきが流れました。

     「今の調子で弁護士が増えていったら、そう遠くない未来に若手が過半数を握って弁護士会の中枢が若手だらけになり、制度を変にいじったと上の期を迫害するようになったりしてw」

     迫害というのは、穏やかではありませんが、ここに書かれていることは、必ずしも絵空事ではありません。以前にも書いた通り、弁護士の増員で、弁護士会内の勢力図が急激に傾いています。単純に考えても、それが弁護士会の運営に影響を与えることは間違いありません。

     このツイッターを受けて、現状を分析しているブログがありました。

     「50期以降の弁護士が過半数に」(「法律事務所マーケティングブログ」)

    タイトル通り、司法修習50期(1998年4月修習終了)以降で弁護士全体の過半数を占めたということです。さらに、38期(1986年4月修習終了)以降で3分の2を占めているともしています。

     「中枢を占める」という見方は、ブログ氏も指摘するように、役員人事が修習期順送り的な慣行がある弁護士会についてみれば、直ちに若手が牛耳るような形は想像しにくい面はあります。

     ただ、それはあくまでこれまでの状況を基準にして考えたものです。大きな影響は、なんといっても彼らを無視したならば、当選できないということです。あるいはそこに、若手が押したてた候補の逆転が、そうした慣行そのものを崩していくことは容易に考えられます。

     ある意味、主流派といわれていた、これまでの勝ちパターンの位置取りの候補と再投票に持ち込み、勝利した昨年の現会長の選挙も、弁護士会の選挙で、そうしたドラスティックな展開が起こり得ることを示したものともいえます。これまでの形では測りきれない展開もあり得るということです。

     もっとはっきりしてくるのは、政策が通らないということです。通らないということは、可決されないというより、提案されない、俎上に上らないということでもあります。

     つまり、常に政策提案においても、選挙公約においても、この層を意識しなければいけなくなる、ということです。

     何度も書いているように、弁護士会は必ずしも一枚岩ではありません。若手とひとくくりにしても、その考え方までもちろんひとくくりにはできませんから、もちろん常に若手が一致して、日弁連や弁護士会の政策に影響を与えるという図は描くことはできません。その点で、この「懸念」を大幅に差し引く先輩方もいらっしゃるかもしれません。

     ただ、あえて想像をたくましくして、若手が一致して執行部提出議案に反旗を翻し、否決に持ち込むテーマを考えれば、まず、多くの人がいうのは「会費」というテーマでしょう。高く、かつ徴収理由について必ずしも会員間でコンセンサスが得られていない弁護士会費は、多くの会員の共通する弁護士会に対する不満点になっています(「弁護士会『会費』の無理」「『会費』イメージを超越した弁護士会費」)。

     さらに、もう一歩進めれば、弁護士会の強制加入・弁護士自治というテーマについても、廃止という議論が現実味を帯びてくる可能性すら考えられます。これまでの30年弁護士会を見てきて、今ほど若手からこれらの不要論を耳にする時代はなかったという印象を持っています。それらについて、厳しい経済状況の中、高い会費で弁護士業務の足をひっぱっている根拠になっているとしか感じられなくなっている若手が増えていることは事実です。

     果たして、現在、弁護士会の「中枢」にいらっしゃる方々は、弁護士増員に伴う会内勢力図の激変がもたらすかもしれないこうした展開をどこまで予想し、懸念しているのでしょうか。口ではこうした状況への認識は示されても、強制加入や自治については、楽観的な見方をしているようにとれます。

     「制度を変にいじった上の期を迫害」という、つぶやきに重ねれば、「改革」路線にそって増員政策などを進めた責任が追及される未来がくる、ということかもしれませんが、ただそれよりも、この激変は、自治を持った弁護士会の「終わりの始まり」を意味するものかもしれません。


    ただいま、「弁護士会の会費」についてもご意見募集中!
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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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