「沈黙」がカウントされる行方

     「どうなの司法改革通信Vol.7」で触れましたが、「法曹の養成に関するフォーラム」が行ったアンケート「司法修習終了者等の経済的な状況に関する調査」の結果で、「まだまだ儲けている」という印象の弁護士の収入が示され、さらにフォーラム委員の大勢が貸与制移行になった、とする報道に、「給費制」維持を求める弁護士の中からは反発が出ています。

     この調査の回収率は13.4%ですから、日弁連が6月公表した、「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査報告書2010」の17.95%よりも、さらに低い数値を元にしています(「『弁護士』という仕事への正当な対価と評価」

     この数値だけからも、そもそもこの結果がどのくらい現実を反映しているかは疑問なのですが、弁護士の間では、この手の調査は、「年収が低い人はなかなか答えない」「多くもらっている人間が自慢げに回答するもの」ということが、常識のようにいわれていますので、差し引かれるのは当然のような話です。

     ところが、この回収率が別の解釈をされている、という話があります。あるブログが触れている「フォーラム」に関する日弁連執行部からの委員会内メーリングリストに投稿されたメールの内容に、それが出てきます。

     「そもそも、この回収率の低さに、外部からは給費制維持活動そのものに対して弁護士のやる気・関心のなさを感じると指摘されたようです」(「福岡若手弁護士のblog」)

     この指摘は、「給費制」維持を求めている弁護士としては、やはり痛い指摘だと思います。もちろん、一つには「給費制」というテーマの性格もあります。現実問題として、修習生に支払われる給与というテーマに、当事者意識を持っていない弁護士の方はいらっしゃいます。

     最近も中堅の弁護士に、その辺の感覚について聞きましたが、複雑な気持ちを吐露していらっしゃいました。特に法曹養成を含めてこの問題に関心がある弁護士、特別な関心はないが、後輩のためになんとかしてあげたいと思っている弁護士、関心はないが、関心がないとは言明しないだけの弁護士などなど。そこには、はっきりした温度差があり、現実的に弁護士会挙げての運動にはなりにくいテーマのようです。
    ただ、この弁護士も、「もし、給費制がなかったらば、今、現実的に弁護士にはなれていないと思う」と、はっきりとおっしゃっていました。こう思っていらっしゃる弁護士も少なくないのが、また、この問題の真実ではあるのです。

     もう一つ、このテーマに限らずにいえば、そもそも日弁連・弁護士会の活動に対する無関心の弁護士は、少なくないという現実です。会務や政策に対して関心を持ち、さらに意見表明する弁護士は、弁護士全体の比率からすれば、少数とくくっていいのかもしれません。

     弁護士会のなかには、サイレント・マジョリティといえるようなものが存在し、政策について執行部方針に白紙委任するような状況が存在しています(「『沈黙する会員』と会内民主主義」。前記「フォーラム」の調査の回答率が、日弁連が行った調査とそれほど大きな差がないことでも示されていますが、その状況を考えれば、およそ個人の見解を問うアンケートの結果に消極的な会員の姿が映し出されても、何も不思議でない面はあります。

     そこを、今回の「給費制」問題に関して、全体としての「関心のなさ」と指摘されるのは、痛い事実ではありながら、少なくとも積極的に関与されている弁護士からすれば、当然、そのこと自体が問題の本質、つまり「給費制」の是非に反映させるべき事実ではない、ということになるでしょう。

     弁護士全体の「関心のなさ」というとらえ方が、すべて「貸与制」移行容認の意思としてカウントされつつあるようにとれますが、ある意味、そこもサイレント・マジョリティととるべきでしょうか。

     このなかには、「俺は『給費制』がなくたって、弁護士をやれていた」という方も、もちろんいらっしゃるかと思いますが、やはり、前記した中堅弁護士のような「本音」は、なんとか「必要」の方で、カウントされる形になることを望みます。


    ただいま、「給費制廃止」「法曹の養成に関するフォーラム」についてもご意見募集中!
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    http://www.shihouwatch.com/

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    「給費制がなかったら、弁護士になれてない」ってのは無いな。
    「LSがあったら、弁護士になれてない」の間違いでは?
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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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