弁護士は「用心棒」か

     「先生、お願いします」。悪そうなやくざの親分にそう促されると、後ろに控えていた腕の立ちそうな「用心棒」が、ぬっと前に出てくる――かつてテレビの時代劇では、よく見かけるシーンでした。

     今ではありきたりに感じるこんな設定でも、かつては「手強そうなのが出てきたな」という、その場の緊張感を高める演出効果はありました。40歳代以上の多くの人が、「用心棒」という言葉で連想するのは、おそらくこのシーンではないでしょうか。

     これまでも大衆の中の弁護士のイメージは、実はこの「用心棒」ではないか、と思う時が度々ありました。

     もちろん、これはクリーンなイメージとは言えません。いざというとき、頼りになる存在を通り越して、カネで雇われたらどちら側にもつき、さらに雇い主のために黒を白と強弁してしまう存在、ということになってしまうかもしれません。

     捜査側から描かれている刑事物のドラマで登場する弁護士が、犯人側に雇われて捜査を邪魔しているような存在であったり、企業の顧問弁護士にしても、どちらかといえば企業の不正に悪知恵を貸しているような描かれ方をしている方が多いのも、ともすれば前記「用心棒」イメージとかぶる要因になってきたのかもしれません。

     六年前のライブドア対フジテレビの対決などもそうでしたが、ときどきマスコミは、対立する両者の弁護士にスポットを当てた扱いをしますが、これまた描き方が「用心棒」イメージにつながってしまいそうです。両者についている弁護士の能力と、これまでの辣腕ぶりを弁護士コメンテーターに語らせるなどして、メディアは司法に持ち込まれた事件が、いかにも弁護士の能力で拮抗するように伝え、社会の関心を向けさせようとしているように見えるときがあります。

     これはどこかあの「用心棒」登場による緊張感の演出を思わせます。弁護士の資質が裁判のなりゆきに影響しないとはいいませんが、少なくともこうとってしまう人はいるでしょう。

     「司法の正義は、おカネをかけて強い弁護士を付けた方のものだ」

     弁護士は誤解されやすい職業です。正当な権利の実現のために法律家に求められる能力が、まるで黒を白に変えてくれる魔術師や、大きな利益を出現させてくれる錬金術師のように、見えてしまう時があります。この誤解は司法が実現する正義への誤解につながります。

     前にも書きましたが、弁護士は依頼者との関係において、自由・独立の立場を保持しなければならない職業です。その立場を守ってもらわねば、結果的に社会はおかしくなってきます。依頼者の言うなりではなく、独立した立場の指南は、結果的に依頼者のためにもなる、と考えるべきです。

     ただし、この立場はともかく、刑事弁護人については、依頼者の希望と社会的利益が相反するような場合の対応について、弁護士の中で意見が分かれています。これについては、回を改めますが、刑事弁護の場合、私人である被疑者・被告人が、国家の刑罰権の発動に対し、非力であり、そもそも対等でない、という事情もあります。

     いずれにしても、社会からの期待のされ方についても、弁護士は常に注釈をつけていかなければならないのかもしれません。

     少なくとも、弁護士は、あの時代劇のなかの「用心棒」であってはいけません。あの手の「用心棒」は、ラストシーンで必ず正義の剣によって倒れることになっていますし。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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