「モンスター」とともに現れる弁護士たち

     「モンスター・ペアレント」という言葉も、かなり一般的に使われるようになりました。この言葉の本格的な登場は、それこそ、この3、4年という感じですが、いうまでもなく「モンスター」はずっと昔から存在していました。

     この言葉が、無理難題を教育現場に持ち込む親のことを指すと知ったとき、真っ先に思い出したのは、高校時代に学校にどなりこんできて、校内で話題になった、一級上の女子生徒の父親のことでした。

     「何でうちの娘の担任が彼女なんだ」

     大学教授であるその父親は、自分の娘の担任が、若い女性教諭であることクレームをつけ、変えるように要求してきたのでした。その女性教諭に、もちろん問題があったわけではありません。まだ、経験が浅くても、真面目に一生懸命生徒に向き合っているという印象の先生でした。

     要するに気位の高い父親が、若いというだけで難くせをつけているとしか、生徒には思えず、当時、職員室で泣いていたその女性教諭と、そんなことを学校に言ってくる父親の娘に深く同情したのを覚えています。

     ここ数年の「モンスター・ペアレント」の話を聞いて、当時、学校の珍事として話題になった、あの父親のような「モンスター」が、実は、あれからずっとこの社会で存在し、少しずつ増殖していたかのような、そんな連想をしてしまいました。

     「運動会の組み体操のピラネッドで自分の子が一番上でないのはおかしい」
     「子供にかすり傷一つつけないよう誓約書を書いてほしい」
     「部活動のユニホームは学校で洗ってほしい」
     「料金を日割りで負担して」

     過保護といえるものから、給食費滞納の現実ともつながるような経済的な困窮を背景にしているととれるものまで、マスコミで伝えられるモンスターの主張は、いまやバラエティに飛んでいます。

     しかし、そのこともさることながら、さらに事態は、嫌な方向に進んでいます。弁護士の登場です。その「モンスター」は、学校に弁護士を同道してくる、というのです。

     つい最近も、知人の小学校教師が嘆いていました。自分が担任しているクラスの、ある女の子の母親が校長にどなりこんできた、と。「娘がいじめにあっている」として、弁護士をつけると息巻いているらしいのですが、実は、その子がいじめの張本人で、これまで問題を起こしていた、という話。

     これまで子供同士の間で話しあって解決してきて母親は事情を知らず、なぜか娘が一方的いじめられていると思い込んでいる。しかも、スパルタ教育のその母親にも少々問題があるということで、本当のことを知ったならば、逆上して、娘にどうあたるか分からないという話まで。そこに弁護士が介入してきたら、もっと話が厄介なことになると、頭を痛めているのでした。

     プロにはプロ、という話もあるようです。モンスター側で弁護士が乗り出してくることに対抗して、自治体では苦情処理マニュアルの作成とともに、学校側に弁護士がつく方向になっています。さらに、その方向は、逆に学校側が苦情を一般的に「モンスター」扱いして取り上げない傾向が出始めているという指摘もあり、さらに問題を複雑化させているようです。

     この状況は、確かに弁護士の出番を作る方向で進んでいるように見えます。「モンスター」につく弁護士、「モンスター」の攻撃に対抗する弁護士、「モンスター」扱いされる、あるいは「モンスター」ではない親につく弁護士。

     ただ、「プロ」ということを「モンスター」の主張から、逆算すれば、「言い掛かりのプロ」とみられてもしようがない現実があります。そのいわば、対症療法として、学校側に弁護士がつき、そうしてこうした状況が生む、過剰防衛が、新たに弁護士を必要とする。

     やはり、これは考えさせられます。権利の主張と自己中心主義が区別されないまま、弁護士の出番が増える社会のこれが縮図ではないでしょうか。これは弁護士自身も自覚しなければいけないと思います。弁護士の出番が増えることを良く描くばかりでは、見えてこない現実です。もちろん、国民はそれを求めているとは思えません。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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