弁護士「ネット評判」との付き合い方

      弁護士という仕事を考えるうえで、一つ悩ましい存在になりつつあるのが「口コミ」です。いまやネット上では、弁護士に対する口コミのコーナーがいくつも見られます。これは、今の段階でいえば、弁護士に関する口コミの実績というよりも、弁護士業を一つのサービス業として見た場合、他と同様に当然、有効であるとみての設置のようにとれます。

     確かにネット上での「口コミ」という評判の流通は、対象に初めてコンタクトを取ろうとする側に、頼りになる存在になっています。端的にいって、ネットがなければ、触れられない評判にアクセスできるからです。

     しかし、これまた当然のことですが、その正確性については問題も指摘されています。つまり、誰でも投稿できる環境は、誰でも評判をねつ造できる環境でもあるからです。

     弁護士よりも、口コミが先行して発達しているともとれる医師の世界から、いろいろな声が聞こえてきます。好意的なコメントを患者や医師、さらには業者に依頼するケースまであるといいます。弁護士については、全体的にコメント数が少ない傾向にはありますが、医師についても、全くコメントがない人と、好意的なコメントがいくつも載っているものが、極端に分かれている印象もあります。これを、そのまんま評判の善し悪しの判断材料にはできないのではないか、という人はいます。

     もちろんこの環境は、逆にネガティブ情報をねつ造できる環境でもあります。資格業についての実態は、いまだ良く分かりませんが、他の業種についていえば、同業者が利用者になりすました、事実には反する否定的な感想が流れているのは、いまや常識ともいわれています。

     弁護士について、この口コミを考えるうえで、二つのことが気になります。ひとつは、弁護士業自体に口コミが本質的になじむのかどうかという問題です。弁護士の提供するサービスは、現実的には個別案件によって異なるだけに、受け手の印象も違うものになります。同様の案件を同一の弁護士に担当してもらっても、人によって違う評判になることがよくある仕事です。

     最終的な結果から、弁護士がやるべきことを正当にやっていたとしても、印象が違うものになることもしばしばです。仮にどの弁護士が担当しても同じ結果になるような案件でも、それが意に反するものであれば、「この先生でなければ、違っていたかもしれない」ととられがちです。しかも、大事なポイントは、弁護士が大衆にとって一回性の仕事になっているので、次回、同様案件を他の弁護士に依頼し、なるほど前の弁護士はおかしかった、という機会そのものがない、つまり、そうした裏がとれないまま、「今回のはずれ」だけが情報として流れる危険度が高い仕事なのです。

     仮にねつ造云々を脇において、さらにそうした弁護士の仕事性格の部分を差し引いて、弁護士について口コミの有効性を見てしまうと、要は接客態度の部分、「感じがいい」「態度がよかった」「優しい」「分かりやすい」といった印象で、一応の目安になるような気もしますが、それも結果次第では、書き込まれないか、あるいは大幅減点評価もあり得ます。

     つまり、弁護士への口コミ評価は、たまたま結果がうまくいったケースの人の感謝を込めたものになる可能性があります。結果がうまくいった、というところ自体もプラス評価として、そのまま受け取りたくなっても、それは前記したように、案件次第です。

     さらにいえば、以前にも書きましたが、弁護士はある意味、恨みを買う仕事です。勝ち負けが生じる世界で、少なくとも半数の依頼者は、その結果から、弁護士に不満を持つ、といわれる世界です。逆恨みに近いものまでも含めて、口コミが受け皿になる可能性は高い仕事というべきです。

     しかし、それでも、という見方もできなくありません。つまり、大衆が弁護士にアクセスする手掛かり、判断材料は、いまだ決定的に不足しているからです。ネットの発達で、いまや自らのホームページや、他の弁護士を紹介するサイトで、積極的に自らの情報を開示する人は増えてきていますが、全体的にみたら、それはまだ少数派といってもいい状況にあります。材料が少なければ少ないほど、ネット上の口コミは客観性以前に、希少情報として扱われます。

     もともと弁護士は口コミに支えられてきた仕事という言い方できなくありません。これまで弁護士と市民の出会いは、紹介によるところが大きな比重を占めてきました。そこには、もちろん文字通り口から口への評判の伝達が、それを支えてきた面もあります。それが、ネットによって、その匿名性から口コミ自体の無責任さが増大してしまった観があります。

     一方で、今回の九州電力の「やらせメール」問題を見ても分かりますが、世論が偽装される背景には、他人の意見に左右される大衆意識があり、またそれが見込めるからこそ、偽装が繰り返されるという悪しき関係があることも感じます。

     本来の口コミが大事にされるべきという方もいらっしゃいますが、ネットの普及はとめられません。口コミに対する悪い口コミでも広がらない限り、弁護士も大衆も、いまよりももっと口コミと気をつけて付き合っていかなくてはならない時代になりそうです。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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