「失策」という認識からのスタート

     昨年の給費制廃止・貸与制移行の急ブレーキは、どうも「ルール違反」だったという後ろめたさが、日弁連の関係者にもあるようです。

     5月に開かれた「法曹の養成に関するフォーラム」第1回の会議は、この問題に関して、日弁連側オブザーバーの、このことに関するお詫びの言葉から始まり、財務副大臣の「本当にあの時は迷惑したよ」といった調子のご発言までありました。

     この間の事情が分からない出席者に、別の方が、6年前に給費制を5年後になくすということが法律で決まり、昨年秋、貸与制に変わるはずだったのに、日弁連の維持しろという運動で、予算措置する間もなく、一気に国会で延期が決まり、議論もないまま、採決したような状態――といったご説明もありました。

     だが、ここでの日弁連の詫びは、あくまでこうした昨年の「ルール違反」への後ろめたさからくる、会議冒頭の「大人の対応」に見えますが、本当に反省するならば、そこではないように思います。むしろ、この方針を事実上、いったんは受け入れたということの方のではないでしょうか。

     「それが誤りというのであれば、当時の日弁連の執行部は、誤りを認め明確に謝罪すべきでしょう」(東弁)

     「司法ウオッチ」の「司法ご意見板」には、こんな書き込みがありました。

     当時は、司法改革前の恵まれた弁護士を見て、弁護士は当然に儲かるという先入観があり、そのため法曹志望者に負担のかかる法曹養成制度ができた、つまり、弁護士になれば、月々数万円程度の返済は苦にならないはずだということだったのが、司法改革そのものが就職難や即独、ノキ弁といった、収入の著しく低い若手弁護士を産み、さらに増殖されることが明確になり、貸与制の負担が無視できなくなった――これが、この投稿者の給費制問題再燃理由の分析です。

     完全な読みの誤りが、結局、今回の緊急避難的な廃止延期になったというわけです。だとすれば、根本にすえられなければならないのは、「改革」への方策そのものへの反省のはずです。

     だけども、どうも日弁連執行部からそういうスタンスの意見は、聞こえてきません。日弁連の場合、どうも2年ごとに会長が変わり、仕切り直されることで、「前執行部の方針は前執行部の方針」というとらえ方がなされます。しかし、業務の継続性はいうまでもなく、対外的には、とても通用しないとらえ方のように思います。

     旧主流派を破り、当選した宇都宮・現会長が、正面からこれまでの執行部になり変り、その失策を詫びる図があっても本当はおかしくありません。そのことは、対外的にも、また会員の受け止め方としても、それなりに説得力を持って伝わるようにも思えるのです。もちろん、それをしない現職の方が、内心、そこまで旧執行部の方針に批判的でないからか、自分には関係ないとみているからか、はたまた「大人の事情」からなのかは、外からは分からないという話になりますが。

     さて、前記投稿者は、説得力という意味では、さらに決定的なことを指摘しています。本当に問題があるのは、法科大学院制度と無責任な潜在的需要論であるということです。

     「これに触れずに給費制の維持を主張したところで、大方の支持を得ることは困難でしょう(私の周りの弁護士も醒めた見方をしています)。厳しい言い方かもしれませんが、むしろ、給費制の維持『のみ』の主張が、法科大学院と無責任な潜在的需要論の破綻をごまかし、法曹養成に関する司法改革の失敗から目を反らすために主張されていると受け取られても仕方がないと思います」

     日弁連の姿勢として、なぜ、こういうことになっているかを考えれば、やはり、ここにはより大きな「反省」の必要があるからとみることができます。その根底にある「反省」から逃れる発想が、結局、この方策にしがみつかせている観も否定できません。

     「改革」に対する、しっかりした「失敗」と「反省」の立場に立てるか立てないか、端的にいって、その度合いが、今後の司法の運命を左右するといっても過言ではありません。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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