「きれいな法律事務所」という判断材料

     良い法律事務所の見分け方を紹介している本やサイトで、結構、見かけるようになったのは、「きれいな事務所を選びなさい」というアドバイスです。

     これでなにを測るかといえば、「お客様」への姿勢のようです。つまり、きれいな事務所というのは、それだけ「お客様」を迎え入れる態勢を整えているということ、つまりは、それでその事務所の弁護士の姿勢が分かるというわけです。

     ある弁護士が書いた本では、こんなポイントを指摘していました。

     ①事務員の対応(明るい声の応対が親切かつ明瞭であること)
     ②ロケーションと外観(路地裏は不安になる、依頼人への気持ちの現れ)
     ③事務所内の調度品・事務用品(整然としているかどうか)

     ちなみに彼は、男性弁護士の服装の汚れ、女性弁護士の厚化粧や派手な服装もポイントとして挙げています。要はどれも、弁護士の「お客様」への姿勢と、人柄を読み取る手掛かりとして強調しているものです。

     私の感覚はやはり古いのか、こうしたくくり方には、正直やや抵抗があります。とにかく、これまでお会いして、本当に心から尊敬できる弁護士の方々の事務所のなかには、そりゃすごい状態のものが沢山ありましたから。

     事務所の部屋は書類で埋め尽くされ、いまにあちらこちらが崩れてきそう。よくこのなかで、なにがどこにあるのか、把握していると関心してしまうような状況です。そんな弁護士の部屋に置かれた、小さな応接セットで、打ち合わせが始まったものです。それこそ、なりふり構わず、仕事に没頭している弁護士のスタイルとして、確かにこんなパターンもあったことは事実です。

     汚いよりも、きれいな方がいいに決まっていますが、それを見てきてしまうと、きれいから逆算して「良い事務所」「良い弁護士」を導き出せるのか、とつい思ってしまうのです。

     ただ、やはり弁護士側の自覚としても、今はそれでよし、という感じではありません。すこしでも依頼者・市民との話し合いに適した場を提供しようとする努力は、いまや当たり前のことと受け止められています。

     特に、こうした方向を強めているのは、やはり弁護士の「サービス業」としての自覚だとはとれます。サイトの中には、古い法律事務所や病院は、依頼者・患者を見下す傾向があったが、今は「お客様」が浸透していると指摘しています(「弁護士の善し悪しの見分け方」)。逆にいえば、依然としてそうした対応ができないところは、依頼者を見下している、かつての悪い慣習を踏襲しているところと見ていい、といっているわけです。当然に、こうした目線を今の弁護士が意識してもおかしくありません。

     もちろん、「競争」という状況のなかでは、「こんなことは当たり前」という弁護士も、少なくはないと思います。

     しかし、現状からみて、不安な点もあります。こうした法律事務所の体制整備には、それなりのお金がかかります。固定費を出来るだけ削りたい事務所運営なかで、心得としてはやりたくても、やれない弁護士も生まれてきているからです。

     さらに、格差が生まれているなかでは、そうした対応が十分できるところほど、お金儲けをしている事務所ということにも一般的にはなりますが、広告の問題と同じで、その立派さをすべて「善し悪し」の判断材料にするのは危険ではないのかという話にもなります。

     もちろん一般の感覚からすれば、「繁盛しているところはいいところ」という見方もあれば、「余裕があるところかないところかといわれれば、あるところを選ぶのは当たり前」という感覚もないわけではありませんが、こと「善し悪し」ということになれば、そこは必ずしもそれがいい結果を生まないのが弁護士という仕事、いわば他の「サービス業」との違いに、落とし穴があるといってもいい仕事のようにも思います。

     心がけとして、「お客様」を大事にすることは、もちろん、それだけ依頼者の立場を考える弁護士の仕事につながっているとは思いますし、それこそ見下すような弁護士は問題外です。

     ただ、それでも依頼者・市民は、「巧言令色、鮮し仁」といったことを弁護士自身に向かう時も、法律事務所にも向かう時も、少し頭の隅に置いといてもいいようには思います。路地裏の汚いビルの一室で、市民のために頑張っている弁護士もいますから。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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