宇都宮日弁連会長への「失望」の行方

     宇都宮健児・日弁連会長への失望感を漏らす声が、弁護士会内から聞こえてきます。昨年、司法改革のこれまでの路線を踏襲する旧主流派候補と激しい選挙戦を展開し、日弁連会長選挙史上、初の再投票にまでもつれ込んで当選した彼には、それだけ会員の期待が大きかったということかもしれません。

     彼への期待とは何だったのか、また、それが今、失望に変わりつつあるのはなぜなのでしょうか。いろいろな評価の仕方はありますし、一つには括りにくいのですが、もっともはっきりしている問題をあえて挙げれば、一つはやはり弁護士増員問題への対応ということがある、と思います。

     昨年の選挙直前、私が週刊法律新聞で行った宇都宮氏と対立する山本剛嗣候補に対するアンケート(1月29日付、1838号)で、宇都宮氏はこう語っています。

     「基盤整備や法的需要の状況、地方会の意見、前期修習の復活や就職先確保の現実的容量に照らし、当面は年間1500人へ合格者数を減らすのが妥当と思います」

     この時、山本候補も合格者3000人の見直しの必要性を挙げながら、「具体的な数を掲げて大幅かつ急激な削減を性急に主張することは、法科大学院制度や未だ途上の司法改革の実践に大きな影響を与える恐れがあるので慎重であるべき」として、具体的な合格者数に言及しませんでした。

     実は、このことが勝敗に大きく影響した、という見方がありました。より合格者減へ踏み込んだ姿勢が、会員の期待を集めたのだと。会員の中には、地方会の声を聞くといった宇都宮氏が「1500~1000人」の線で政策を進めるという解釈をしていた方もいたようです。

     ところが、その1500人の話が消えてしまった、と。今年3月の「法曹人口政策に関する緊急提言」http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/110327.htmlにも、それは掲げられていません。

     さらに、気になるのは、宇都宮会長個人のご発言でも、既にご紹介した6月14日付け「朝日新聞」のオピニオン面の記事で、1500人を掲げていないばかりか、「増員のペースダウンを唱えた私が会長に選ばれた」「減らせと言っているのではありません」としていることです。増員のペースダウンは、旧主流派の会長だった日弁連の前執行部が打ち出していたことですし、対立していた山本候補もペースダウン論です。そこは、対立点ではなく、この点に関しての勝因は、あくまで彼の具体的な減員主張です。それがなんとなくいつのまにか、彼もペースダウン論になってしまった、そこがどうも失望感につながっているようです。

     さらにいえば、彼の執行部が掲げた前記提言に、会員の声が反映されておらず、むしろ既存路線の意見が反映される形になっているとの見方もあります。それがまた、会内民主主義をもっと重視してくれると思っていたとする見方、旧主流派の巻き返しに抗せなかったとする見方、さらには「いざ会長になるとなかなか」的な冷めた見方など、いずれにしても、敗北的評価につながっているようにとれます。

     2年目の宇都宮執行部への期待について聞いた、「司法ウオッチ」の「司法ご意見板」には、次のような厳しい書き込みもありました。

     「民主党のようにおいしそうな公約で当選したが、できないのであるから、もっと多数の意見があることに注意をしてもらいたい。また、若手支援といっても実際には何もしていないようである。自分は仕事がなくて新しい分野をきりひらいたのだから頑張れ、では若手は拍子抜けだろう。選挙向けの発言が駄目なのだから、そこは率直に詫びるべきだ」(弁護士)。

     さて、来年は日弁連会長選挙がありますが、今回の宇都宮会長への「敗北的評価」が、その行方に大きく影響しそうです。「改革」の賛否をめぐっては修正論の中間層を取り込んだといわれる宇都宮氏でしたが、来年の会長選挙は、どうも情勢は、再び昨年以前の対立構造に戻り、旧主流派対「改革」反対の戦いに仕切り直されそうな情勢です。

     宇都宮執行部の任期は、まだ8ヶ月もありますから、現段階で評価を下すのは早計との見方は当然できますが、ただ、「改革」の路線変更には、相当強力な「反対論」で立ち向かわなければ、舵は切れない、という評価につながるのか、それとも、現実的には誰がなっても「舵はきれない」ということが明らかになったという評価につながるのか、そのことが、次の会長選の会員の投票行動に大きく影響することにはなりそうです。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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