弁護士の経歴をどう見るのか

     一般の市民の方が弁護士を選ぶ場合、当然、その弁護士の経歴が気になります。弁護士選びに関する問い合わせでは、必ずこの点を聞かれます。広告も解禁され、インターネットも活用されて、弁護士に関する情報はかなりオープンになってきましたが、それでもまだ、限られた情報から弁護士を選ばなければいけない市民にとっては、もちろん重要な要素になるでしょう。

     ただ、これは結構難しいことです。これを言っては、実も蓋もないとは思いますが、結論から言うと一概にはいえない部分もあるからです。なぜ、冒頭にこんなことをいうかといえば、弁護士が思っている以上に、弁護士の経歴をみた市民が、まず、最初に強烈な先入観をもってしまうケースが多いからです。

     「○○先生の経歴をみましたが、××をやられていた方なので、だめですよね」

    こう言い方をされる方が、少なからずいました。

     弁護士の経歴は大きく二つに分かれます。最初から弁護士をやっている根っからの人か、それ以外の職業を経た人です。後者の弁護士は、司法試験を合格し司法研修所を出る時点で、別の道を選んだ裁判官、検察官経由の人、司法試験合格前後にサラリーマンや経営者など別の仕事を経験している人、学者などです。ちなみに裁判官出身の弁護士を「ヤメ判」、検察官出身の弁護士を「ヤメ検」といったりしています。

     弁護士が書いた弁護士選びのコツなどを書いた入門本は、沢山出ています。もちろん、役立つ知識も載っているので、市民として何冊か手にとってみることをお勧めはしますが、一面残念なことに、そうした本の中の傾向分析を金科玉条のごとく、とらえてしまう市民の方もいます。

     確かに出身による傾向はありますが、ものごとすべてそうなように例外はありますし、とらえ方によっては逆のこともあります。

     弁護士が書いた本では、例えば、よくあるのは根っから弁護士の方が、弱者救済や権利意識に優れ、「相談しすい」はずだとか、ヤメ判は裁判官という判断者の立場が身についていて客観的立場になるので、根っから弁護士のように粘り腰がなく、早々に結論を出しがちだとか。あるいはソースは必ずしも入門本だけとはいえませんが、ヤメ検は刑事には強いが民事はちょっと?とか。学者出身は実務がダメ、サラリーマンなど法律外の経歴が長く、司法試験合格に時間がかかっている人は優秀でない、とか。

     うーん?と、うなってしまいます。確かにそういう面があるという弁護士もいらっしゃるかと思いますが、烙印を押された方を含め、「そんなこと一概にいえない」と猛反論される方もいると思います。

     例えば、これは結構重要なことですが、確かに根っからの弁護士の中には、弱者救済や権利意識に優れた方はいますし、依頼者に接し慣れているという点はありますが、いうまでもなく例外はあります。とりわけ、客観的判断ということについていえば、むしろ、それをしない、できない弁護士の方が問題のような気がします。

     黒を白にしたり、白を黒にしたりするのが弁護士ではありません。この点は端的に言って、市民に誤解されやすいポイントです。依頼者に耳ざわりのいいことばかりいって、期待感だけでつなぐ弁護士がいますが、決して良い弁護士ではありません。客観的な状況を早く市民に伝えられることも必要です。

     ヤメ検が刑事事件に詳しい傾向はいうまでもありませんが、検察官も民事の知識が必要な局面も多く、不動産などの財産紛争に関する事件に強い人もいます。また、学者出身者はもちろん理論武装に強かったり、サラリーマンだって人生経験の豊富さが依頼者の立場を理解するのに役立つことだってあります。

     じゃあ、どうすりゃいいんだよ、と言われそうです。傾向を全部、一概にいえないとしたら、指標がなくなるじゃないか、と。結局、この点についていえば、現状では傾向は傾向として押さえながら、間口をあらかじめ狭めず、弁護士にとにかく会って話をすることをお勧めします。特に、最初は、当たりをつけることも必要だろうと思いますが、たどりついた弁護士の経歴が前記したようなポイントにひっかかったとしても、そこは冷静に考えるべきです。実はあなたの案件を扱うのに適した人かもしれませんし、「『良い弁護士』って、どんな弁護士?(1)」でも書きましたが、あなたにとって究極の良い弁護士は、あなたの案件に真剣に一生懸命やる弁護士ですから。

     そして、この点の根本的な解決の道は、弁護士がさらに情報公開するということだと思います。弁護士に対する第三者評価というものが、存在しない面もありますが、通り一遍の経歴だけでなく、どういう事件をどんな風に扱ってきたか、これを市民はすごく知りたがっています。開示の仕方として難しい面はもちろんありますが、市民の先入観を取り除くことと、アクセス確保には、基本的には情報公開しかないと思います。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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