「身近な」偽弁護士の時代

    なかなか見ることができない貴重な映像を見ることになりました。読売テレビが流した、弁護士詐欺の瞬間です。弁護士による詐欺ではなく、弁護士を名乗った者による詐欺です。

     「私、○○○法律事務所の××と申します」

     そう言って名刺を差し出す男の姿を、カメラはしっかりと押さえています。彼のターゲットにされたのは、詐欺被害にあった高齢の女性。彼は「カネを取り返すため」と称して150万円を要求して、彼女に接近していますが、不信に思った彼女に依頼された本物の弁護士が、この一部始終を撮影していたというわけでした。

     彼の前に、本物の弁護士が登場します。そのやりとり。

     「あなた、弁護士資格持っているの?」
     「はい」
     「本当?」
     「はい」
     「登録番号は何番?」
     「登録番号はちょっと・・・」
     「知らんの?」

     なるほどね、と思いました。やはり、まず、ここを斬り込むのですね。登録番号とは弁護士全員に登録時に与えられている固有の番号です。それを尋ねられて、即座に答えられない、そらんじていない弁護士はまずいないでしょう。ここで、めちゃくちゃな番号をいっても、すぐに足がつくと思ったのか、予想外の質問だったのか、彼は口ごもってしまいます。

     その後、彼はそそくさと退散。本当の弁護士は、大阪府警に弁護士を名乗ってカネをだまし取ろうとした男がいることを通報しました。いうまでもなく、その後、男は弁護士登録されておらず、名刺に書かれた法律事務所にも所属していないことが確認されています。

     こう書いてしまうと、なんともお粗末な犯人の姿になりますが、そうとだけ見ることもできません。所属していないということは、実在する法律事務所を名刺に刷っていること、さらに、実は150万円を巻き上げるために、これまた実在しない、検察からいずれ返金されるようなシステムをでっちあけていたということ、です。

     これは、非常に危ない現実です。この読売テレビの取材でも、弁護士会はこうした手口で、詐欺被害者が再び騙される二次被害が増加しているとして、注意を呼び掛けていますが、今回の手口でも十分危険であることを考えなければなりません。

     詐欺の手口の巧妙さとは、騙しの「成功率」には影響しますが、実は危険度はそこからは測りきれません。おれおれ詐欺にしても、そうですが、100件に1件、1000件に1件に「成功」すれば、それで十分に仕掛けてくるのが詐欺師です。そこを考えておかなければなりません。

     ちなみに、現在は、もし、弁護士を名乗るあやしい人物がいた場合、日弁連のホームページにある弁護士情報検索で、名前を打ち込んでヒットするかどうか確かめる手もあります。登録番号からの検索もできますから、偽の登録番号を言っていたとしてもすぐに分かります。とりあえず、インターネットのおかげで、このシステムが使えるだけでかなり違うと思いますし、いまやこれがなかった時代の危うさは考えられません。

     もっとも、犯人側もこのシステムを活用し、実在の名前、登録番号を偽装している可能性もありますから、ヒットしたとしても、この検索システムで分かる、その実在の弁護士の連絡先・法律事務所に直接確認をとることが必要です。

     また、こういう事態になると、弁護士側の努力ということも考えなければなりません。情報公開という意味で、重要になってくるのは、顔写真です。いうまでもなく、決定的な本人特定の材料を大衆に提供するからです。最近では、ホームページ上で、自らの顔写真を公開している弁護士も増えましたが、依然として、弁護士の中には、顔写真の公開には消極的な方が沢山います。

     写真の公開が、裁判なので敵対している勢力などからの中傷ビラなどに使用されることにつながるケースも中にはあることから、そうしたことを回避したいがため、という事情もあるようですが、ここは、今後、公開という問題も考えていかなければならないようには思います。

     とりわけ、弁護士が増員され、推進派が描くような、社会のすみずみまで弁護士が乗り出す形で、日常に「身近な存在」になるという未来が、もし、この国に訪れるとすれば、そこはまた、「弁護士」の仮面をかぶった人間たちもまた、「身近な存在」として、乗り出してくる可能性があるとみるべきです。「身近」という環境が、彼らの目にもまた、魅力的に映るかもしれないのです。

     もちろん弁護士が本当に「身近」になれば、彼らの居場所もないというような描き方をする方も現れそうですが、これまた果たしてそういうきれいな絵が描けるのかどうか。玉石混交の淘汰の過程は、本当に彼らに「ビジネスチャンス」を与えないのかどうか。

     弁護士がありとあらゆるところに顔を出すという予想図を描くのならば、それなりの安全な環境が担保されていなければならない、ということを示すものではないでしょうか。ここは騙される側の自己責任で片付けるべきではありません。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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