「採算率が低い」業務と「余裕」の関係

     ある弁護士のブログに、福岡県内の即独(事務所勤務を経ないで独立)して3年弱たった私立法科大学院出身弁護士のことが紹介されています(「福岡若手弁護士のblog」)。弁護士会の月報に即独したご本人が投稿したものに基づいています。

     実は、このブログの今回のエントリーと、それに対し書き込まれたコメントは、現在の若手弁護士の置かれている状況について考えるうえで、貴重な情報を提供しています。

     即独の彼が伝える仕事の現状は、仕事は少なく民事は先輩にもらいながら、平日と土曜日は午後10時まで、休日は午後9時過ぎまで仕事をし、主な収入源は国選弁護と被疑者弁護援助、という話です。

     ブログ氏は、こう疑問を投げかけます。

     「一体、LS(ロースクール)制度を前提とする法曹人口拡大というのは、彼のような採算率の低い業務を中心に従事する(しかも法テラス勤務でもないので日々の経費は自分持ち)弁護士が増える事態が当たり前になることを目的としていたのでしょうか」

     さて、これはどう考えるべきでしょうか。採算率の低い業務は一般的に敬遠される仕事と考えれば、こういう形でニーズにこたえることができているではないか、という見方が出てきそうです。現に、このブログへのコメントでも、この形を肯定的に見て、「司法改革の目的を達成できている」というものがありました。

     ここだけを切り抜いて、マスコミがお得意の「改革」推進派論調の中で伝えた場合、あるいは、それなりに納得してしまう大衆もいるような気がします。

     ただ、果たしてそう見れるのかどうかです。別の見方をすれば、採算性という意味では、彼ら即独にはっきりとしたしわ寄せがきているともとれます。既存の弁護士が、採算性の低い仕事に手を出すことを嫌ってのことというよりも、どんどん手を出せなくなっている現実があります。「余裕」がなくなれば、結局、切り捨てられるのは、そういう仕事です。競争はよりそういう状況への傾斜を加速化させるでしょう。

     それを若手が、こういう形で担うことは、「改革」の想定内なのでしょうか。ブログ氏は「現状に変化がなければ、弁護士の業務につきものの精神的労苦に見合わない、経済的に厳しい生活を一生に強いられかねない」としていますし、また、別の弁護士は、国選・当番・被疑者弁護といった「採算率の低い業務」も総量があり、いずれは飽和するという見通しを示しています。つまり、これはどちらにしても無理な形、将来的な展望が開ける形ではない、という見方です。

     こう見てくると、これを「改革の達成」というのは、いかにも後付けの、やはり無理な見方のように思えるのです。

     「最近は国選とかはやらなくなりました。『採算率の低い』という理由ではなく、『単発で終わり、ほぼ次の仕事(顧客)につながらない』からです」

     こんな書き込みもありました。もはや「採算率」云々でなく、次につながらない仕事をやる「余裕」がない、逆にいえば、やはり「余裕」がなければやりたくてもやれない、ということだと思います。

     なんとなく弁護士の「余裕」は、「改革」をいう側からは、「特権」として目の敵にされているような感じを受けますが、彼らの「競争」を促しつつ、「余裕」を奪うことが、果たして「採算率の低い」問題を抱える、この国の大衆にとって、有り難いことなのかを、ここで考える必要があるということではないでしょうか。

    「国選等がなくなれば廃業」という書き込みもありました。しかし、弁護士増員は、その時点で止まるのでしょうか。そこで、飽和と見て、増員をやめるわけではなく、「競争」は続きます。そこから先は、どういう想定がなされているのか、もっと正直に、最悪の事態も想定して、「仮定の話」をしてもらう必要もあります。


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    ありがとうございました

    ろぼっと軽ジK さん、こちらこそ、いつもありがとうございます。

    また、引用させていただきました、当方としましても、ご指摘のようなお断りを入れて頂いたことに感謝いたします。

    今後ともよろしくお願いします。

    ご紹介ありがとうございました

    急にランキングがアップしていてびっくりしましたが、河野さんのお蔭ですね。
     あの記事は一部引用ですし、民事の中身がどんなものなのか、皆目抽象的なので、作成したLS出身者の真意が伝わっていないかもしれないことはここで弁明しておきます。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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