「弁護士選び」の困難な領域

     以前、他のエントリーでも取り上げました昨年5月22日の「週刊東洋経済」の特集「弁護士超活用法」のなかに、「よい弁護士を見分けるポイント」として、以下の、7つが挙げられています。

     ①時間に性格である。
     ②対応が丁寧。
     ③話をよく聞く。
     ④アドバイスが具体的。
     ⑤説明が分かりやすい。
     ⑥厳しい見通しも伝える。
     ⑦時間や費用の説明をする。

     このほか、「信頼できない」「自分とは合わない」と感じる弁護士は依頼しない方が無難。サービス業なのに、「先生」と呼ばれて「自分は優秀なのだ」と思って横柄な態度を弁護士も多々いるので、早い段階、できれば初回相談時に見極めましょう、というアドバイスもなされています。

     これまで、このブログでも書いてきたことと、表現は違っても、同趣旨の部分が相当程度含まれてはいます(「『良い弁護士』って、どんな弁護士?(1)」「同(2)」)。極一般化して、このテーマで書こうと思えば、およそこうしたポイントにはなるとは思います。

     しかし、こう列挙されたものを改めて見てみると、①~③は社会人としてのマナー、④⑤⑦はサービス業の常識とみることができてしまい、一見すると、法科大学院や司法研修所ではなく、前者はマナー教室、後者はビジネスマン養成講座で勉強した方がいいのではないか、という印象を持ってしまいます。

     また、ある意味、このような常識的なことを選ぶポイントとして挙げてしまうと、前記アドバイスと合わせて、それだけ現在の弁護士にサービス業としての自覚が足りないということなのではないか、という人もいるかもしれません。

     しかし、あえてこの列挙された7ポイントに沿わせて考えてみると、弁護士の能力として、非常に重要なものが含まれているのは、実は⑥の「厳しい見通しを伝える」ではないかと思います。つまり、これまでにも書いてきましたが、これは事案の性格を正しく認識し、見通しを立てられる能力が求められるとともに、時にその方向で説得するだけの能力が必要とされるからです。

     もし、間違った見通しを立てていたらばアウト、根拠もなく、依頼者を引きつけるために楽観的な見通しを立てるようならばアウト、厳しい見通しと分かっても、それを正直に言って、自分の依頼者を説得しきれなくてもアウト、ということになります。もちろん、三番目は能力があっても、だめなときはだめですが。

     最大の問題は、ここが最も依頼者からは、判断がしにくい、あるいは判断できない領域であるということです。これを除いた①~⑦は、一般市民の目線で、感じた通りに判断し、裁定を下せますが、この点の妥当性だけはそうはいかない。ある意味、肝心な点が、弁護士の手の内にあるようにも思えるのです。

     これはさらに嫌な想定もできます。この⑥について、能力ということでいえば、別の能力に長けた弁護士がいた場合、より問題は深刻になります。ほかの①から⑦をすべてクリアし、依頼者の利益を第一に考えず、自らの利益のために、巧妙に⑥で誘導、偽装できる弁護士がいたとしたならば、取り返しがつきません。

     いま、考えられる唯一の対策は、これも以前かきましたが、弁護士についても、セカンド・オピニオンを採用するということです(「弁護士のセカンド・オピニオン」)。実際に、自分の弁護士のアドバイスに疑問を持った依頼者が、思い切って他の弁護士に相談したところ、全く違う結論に驚くケースを度々耳にしました。

     ただ、一方で、それは現状では、簡単なことではありません。市民には、それなりの労力がかかりますし、実際は二人目に会って違うことをいわれても、前者が妥当でなかったとの判断ができるわけでもなく、いずれかが正しいという確信が持てるわけでもないからです。セカンド・オピニオンが成り立つ環境が作れるのかどうかから考える必要があります。

     結局、こう見てくると、まさに「質の確保」とは、こういう状況を考えた時に、市民・大衆にとって、より切実な問題であることが見えてくるように思います。一定の質が確保されていない弁護士が社会に放逐されるということは、それだけ依頼者・市民へのリスクと労力、さらに自己責任に重くのしかかってくることを意味するからです。弁護士増による「淘汰」の論理は、そこを決定的に軽視しているように思えてなりません。


    ただいま、「今、必要とされる弁護士」についてもご意見募集中!
    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
    http://www.shihouwatch.com/

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信開始!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





    コメントの投稿

    非公開コメント

    ありがとうございます

    某弁さん、貴重なご意見あがとうございます。

    弁護士のセカンド・オピニオンの課題、「法律相談」の限界として理解致しました。
    また、「法律相談」については、やはりこの辺の認識を、ともすれば過剰期待、不満に傾いてしまう市民と共有できるのかが、大きな課題だと改めて感じました。

     結局、この辺の対応があいまいなまま、弁護士が大増員されていく状況というのも、見方によっては市民が置き去りにされている観があります。

    今後とも、よろしくお願いします。

    No title

    いつも興味深く拝見させて頂いております。

    近現代裁判は、弁護士に要求される能力の一つに「早く見通しを見切る」という能力があります。
    現代の裁判では、裁判所はかなり早い審理を要求し、かつ和解処理を好む傾向にありますから、法律相談の段階からありうる争点を的確に見抜き、リスクを読んだ上で、依頼者の言いたいこと(本人は分かっていない場合も多い)を的確に整理して、さらに合理的利益に置き換え(合理的でない場合は説得を行う)、これを審理の中心にすえる処理(裁判、調停、交渉を含む)をすることが要求されます。

    そもそも、弁護士が知識不足の場合を除き、セカンドオピニオンはここまで深いところに入らないと余り意味がないと思います。
    例えば、離婚事由すら知らない弁護士の相談であればセカンドオピニオンは有効ですが、離婚をしたい理由(子供なのか、経済的なものなのか、性格の不一致なのか、両親はどう考えているのか、離婚後の生活の見通しは甘くないか等)の深いところに入らないと、有効な回答は得られません。

    はっきり行ってしまうと、市役所の相談などでは一般論なので深いところには入らないので(時間的に入れない)、本当の意味での私のキャラが出る相談にはなっていません。

    深いところの結びつき(前にも書きましたが)は時間を要しますし、経験も必要なことから、簡単ではないと思います。実際問題としても、私も深い結びつきになれるような事件・依頼者でないとそこまでは踏み込みません。クレームが来るのも嫌ですし、無償に近い形でそこまでやるのは経営的にも無理だからです(私は相談料はとらない主義なので)。

    なお、私個人は弁護士激増にも、司法改革路線にも懐疑的です。なぜなら、この路線をとると、ダンピング競争みたいになって、ダンピングして表面的に処理をする方が競争の勝者になるからです。えばっていた従来型の弁護士像もいかがなものかとは思いますが、このような弁護士増が望まれているとは到底思えません。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR