「修習専念義務」の微妙な取り扱い

     昨年12月に司法修習を終了した新63期の就職状況をジュリナビが掲載しています。それによると、5月20日現在、弁護士登録者は1730人、うち事務所登録者は1618人、組織内弁護士は58人で、残り54人が事務所に勤務しないでいきなり独立する「即独推定者」だそうです。このほかに、55人が弁護士未登録者となっています。

     この即独推定者と未登録者の数をどうみるか、については評価が分かれるところだと思います。弁護士の中には、就職難がいわれながらも、最終的にはかなり事務所におさまってきていると、やや楽観的な見方をする人もいます。

     ジュリナビの見方も、「ここ2~3年の状況からは、新人弁護士の就職は、旧司法試験時代のような売り手市場的なマーケットではありませんが、新卒大学生のような悲鳴が上がるほどの就職氷河期とは言えません」としている。

     ただ、その一方で、期待されているほど組織内弁護士数は増えておらず、「注意すべきは、法曹の増員時代に合う新しい法曹の働き方や弁護士事務所の採用方法など、関係者において新しい方向性が見えてこないことです。これでは、早晩、市場が飽和してしまうでしょう」との見通しも示しています。

     「即独」が劇的に増えていないことに、救いを見出す方もいらっしゃるようですが、実は、これだけが問題ではありません。とりあえず事務所勤務が決まった弁護士が、どんな状態に置かれているかという問題があります。「売り手市場」ではないこの状況を、安く使えるチャンスとみる事務所もあり、また、過払い問題終息後の状況から、かなり不安定な雇用状況になることを予想する声も聞こえてきます。

     そうした新人弁護士の経済状況に大きくかわる「給費制」廃止の問題が、これから大きな山場を迎えます。とりあえず今年10月末まで廃止延期が決まりましたが、弁護士会内に強い存続への声があるものの、その後については不透明で、政府の「法曹の養成に関するフォーラム」が8月末までにまとめる予定の第一次報告書の内容が注目されています。

     そうしたなか、給費制から貸与制に移行されるのであれば、修習専念義務を外すべき、という意見が、弁護士界内にも出ています。修習専念義務というのは、司法修習生は要するにアルバイトなど働くことは禁止、この期間は修習に専念しなさい、ということです。それが、給与が支払われなくなり、貸与制になったあとも存続させるのは、酷ではないか、という話です。

     給与もでない、バイトもできず、貸与制でとなると、現実はお金持ちの家の人間以外は、借金ということになります。
     
     そもそも給費制と修習専念義務は一体とする主張があります。従って、給費制をやめる以上、専念義務もやめるべき、という考え方です。前記ジュリナビもこの問題ついても言及し、支払いがないのなら、拘束すべきではなく、就職先からの経済的サポートを認めるべきだとしています。

     一方、最高裁は、これを一体とする見方には立っていないようです。修習専念義務は給費制・貸与制それぞれに検討していく必要があり、そもそも同義務は法曹養成で臨床課程を踏むべきとする考えからくるもので、給費制から同義務が生じてくるわけではない、としています。(2004年2月6日第21回法曹養成検討会)。

     これに対して、弁護士のなかには、現状では、司法修習の終了は、法曹としての就職を保障するものではなく、単なる資格の付与に過ぎないのが実情で、専念義務によって収入を得ることを制限する見返りが著しく軽いものになってしまっていることを指摘する見方もあります( 「白浜の思いつき」)。

     ただ、それでは修習専念義務の廃止を引き換えに、給費制廃止を認めてもいいのでしょうか。バイトにあけくれたりすれば、それこそ二回試験(司法修習生考試。研修所の卒業試験)合格レベルにまで達しなくなるという見方もありますが、それよりもなによりも、今度こそ「質」の問題として、市民に実害を及ぼす可能性はないのか、ということです。

     給費制存続よりも、修習専念義務廃止は、「バイトくらい許してあげればいいじゃない」といった調子で、格段に大衆に受け入れられやすいものをもっているだけに、結局、「給費制」廃止のしわ寄せがくる可能性も主張されていいと思います。


    ただいま、「『給費制』廃止問題」についてもご意見募集中!
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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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