弁護士が離職する日--ある弁護士の廃業宣言
弁護士のブログをご覧になっている方ならば、既にご存知のこととは思いますが、昨年、ある弁護士のブログ上での衝撃的な廃業宣言が一時期話題となりました。ある日のブログで彼は、こう切り出しました。
「突然ですが、弁護士を辞めることにしました」
彼のブログは、法律関係の判例時報、判例タイムズなどの記事の紹介をメーンに、そのほか事務所運営に関することや、日弁連はじめ弁護士界内の動きに関する論評などを内容とするもので、弁護士の間でもよく読まれていました。
実は私が昨年7月末まで編集長を務めていた「週刊法律新聞」も毎号取り上げて、特に注目する記事を紹介してくれていたので、感謝しつついつも読んでいたブログだったのです。私が新聞社を退社した直後に、彼のブログも消えることになったのにも、奇妙な縁を感じます。
このブログ氏は匿名です。司法修習50期代ということだけ、公表していました。内容からして関西方面の方だろうと思います。匿名ですので、弁護士であると100%は断定できないのですが、内容からしておそらく弁護士であることは、私を含め、他の読者弁護士の大方の共通した感想であり、そうした認識であってこそ、少なからぬ弁護士に衝撃を与えることになったのだと思います。
この廃業宣言の何が衝撃的だったかといえば、突然の廃業もさることながら、なんといっても公開された廃業理由にありました。
「・・・理由ですか? もちろん,この業界のお先が『真っ暗』だからですよ。案件は減るわ,合格者はバカスカ増えるわ,執行部はアフォだわ,司法書士は幅をきかせるわで,もう業界全体が沈みかけの船みたいな状態です。こんな船からは一刻も早く逃げ出さなければならない,そう思ったからです。優秀で嗅覚の鋭い方は,もうとっくに逃げてますよ」
「このエントリーを読んでいる貴方にひとこと、このまま弁護士を続けていて、本当に大丈夫ですか?」
弁護士界のことをご存知ない方のために、あえてご説明すれば、ここで彼が言っているのは、弁護士が扱う事件数が減っているのに、司法試験の合格者が増え、弁護士大量増員路線が進み、それに対して、日弁連執行部は基本的に増員路線の旗を降ろさず、有効な対策もとれず、そんな中、司法書士は簡易裁判所での代理権を取得して勢いづき、弁護士の業務範囲に進出することをうかがっている、と。
要するに「沈みかけの船」のような弁護士界の将来を悲観して、いち早く脱出を決意した、というわけです。
こう書かれても、一般の方には理解できないかもしれません。相当勉強して難関の試験にパスし、折角得た資格で、社会的な地位も高く、生涯、高給が保証されているような仕事をなぜ、自分から辞めるんだ、と思われる方もおいででしょう。あるいは、この人は、弁護士のなかでも、相当特殊な人なんじゃないかと。
だけど、そうではないのです。この廃業宣言に対する多くの弁護士ブロガーの反応はこの理由への共感でした。あるブログにはこうありました。
「その決断については、賛否があって当然である。だが肝心なことは、氏が直面した危機感は、多かれ少なかれ、(少なくとも若手から中堅までの)すべての弁護士に共有されていることだと思う。『このまま弁護士業を続けて、本当に大丈夫ですか?』と聞かれて『大丈夫です(キリッ)」と言える弁護士はどれほどいるのだろう」。(花水木法律事務所のブログ)
現在の法曹養成や弁護士増員政策の向こうにあるのは、法曹界への離反と弁護士の廃業という破滅的な業界の未来像ではないのか、この廃業はすくなからぬ弁護士ブロガーに、そう受け止められたように思えます。そういう意味では、この廃業宣言は、この弁護士のダイイング・メッセージのようでもあります。そして、それはこの危機的状況を全く共有できていないといってもいい一般大衆にも伝えられるべきもののように思うのです。
「・・・今後ですか?何もアテはありません。継げるような家業もないので、せいぜい会社員になるか、工事現場で交通整理でもやるか、そんなところでしょう。社会の歯車となって、細々とやっていきますよ」
彼はそんな風にも言っていましたが、今はどうしているのでしょう。彼がまだ、こうしたブログをのぞいてくれていることを期待して、彼に一言。
「いつもブログで、法律新聞の記事や私のコラムを取り上げてくれてどうもありがとう。励みになりました。あなたの宣言は、最後の一発として意味深く、そしてカッコよかったよ。でも、今後の身のふり方の下りはちょっとブルース過ぎます」。

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彼のブログは、法律関係の判例時報、判例タイムズなどの記事の紹介をメーンに、そのほか事務所運営に関することや、日弁連はじめ弁護士界内の動きに関する論評などを内容とするもので、弁護士の間でもよく読まれていました。
実は私が昨年7月末まで編集長を務めていた「週刊法律新聞」も毎号取り上げて、特に注目する記事を紹介してくれていたので、感謝しつついつも読んでいたブログだったのです。私が新聞社を退社した直後に、彼のブログも消えることになったのにも、奇妙な縁を感じます。
このブログ氏は匿名です。司法修習50期代ということだけ、公表していました。内容からして関西方面の方だろうと思います。匿名ですので、弁護士であると100%は断定できないのですが、内容からしておそらく弁護士であることは、私を含め、他の読者弁護士の大方の共通した感想であり、そうした認識であってこそ、少なからぬ弁護士に衝撃を与えることになったのだと思います。
この廃業宣言の何が衝撃的だったかといえば、突然の廃業もさることながら、なんといっても公開された廃業理由にありました。
「・・・理由ですか? もちろん,この業界のお先が『真っ暗』だからですよ。案件は減るわ,合格者はバカスカ増えるわ,執行部はアフォだわ,司法書士は幅をきかせるわで,もう業界全体が沈みかけの船みたいな状態です。こんな船からは一刻も早く逃げ出さなければならない,そう思ったからです。優秀で嗅覚の鋭い方は,もうとっくに逃げてますよ」
「このエントリーを読んでいる貴方にひとこと、このまま弁護士を続けていて、本当に大丈夫ですか?」
弁護士界のことをご存知ない方のために、あえてご説明すれば、ここで彼が言っているのは、弁護士が扱う事件数が減っているのに、司法試験の合格者が増え、弁護士大量増員路線が進み、それに対して、日弁連執行部は基本的に増員路線の旗を降ろさず、有効な対策もとれず、そんな中、司法書士は簡易裁判所での代理権を取得して勢いづき、弁護士の業務範囲に進出することをうかがっている、と。
要するに「沈みかけの船」のような弁護士界の将来を悲観して、いち早く脱出を決意した、というわけです。
こう書かれても、一般の方には理解できないかもしれません。相当勉強して難関の試験にパスし、折角得た資格で、社会的な地位も高く、生涯、高給が保証されているような仕事をなぜ、自分から辞めるんだ、と思われる方もおいででしょう。あるいは、この人は、弁護士のなかでも、相当特殊な人なんじゃないかと。
だけど、そうではないのです。この廃業宣言に対する多くの弁護士ブロガーの反応はこの理由への共感でした。あるブログにはこうありました。
「その決断については、賛否があって当然である。だが肝心なことは、氏が直面した危機感は、多かれ少なかれ、(少なくとも若手から中堅までの)すべての弁護士に共有されていることだと思う。『このまま弁護士業を続けて、本当に大丈夫ですか?』と聞かれて『大丈夫です(キリッ)」と言える弁護士はどれほどいるのだろう」。(花水木法律事務所のブログ)
現在の法曹養成や弁護士増員政策の向こうにあるのは、法曹界への離反と弁護士の廃業という破滅的な業界の未来像ではないのか、この廃業はすくなからぬ弁護士ブロガーに、そう受け止められたように思えます。そういう意味では、この廃業宣言は、この弁護士のダイイング・メッセージのようでもあります。そして、それはこの危機的状況を全く共有できていないといってもいい一般大衆にも伝えられるべきもののように思うのです。
「・・・今後ですか?何もアテはありません。継げるような家業もないので、せいぜい会社員になるか、工事現場で交通整理でもやるか、そんなところでしょう。社会の歯車となって、細々とやっていきますよ」
彼はそんな風にも言っていましたが、今はどうしているのでしょう。彼がまだ、こうしたブログをのぞいてくれていることを期待して、彼に一言。
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