弁護士会会長への距離感

     以前は、東京の弁護士同士が会合で顔を合わせると、こんなやりとりを目にすることがありました。

     「先生も、そろそろ会長に立候補されたらいかがですか(笑)」
     「いやあ、うちの派閥じゃだめだよ。会長になりたいんだったら、とっくに田舎に帰ってなってるよ(笑)」

     さて、この会話から推察できる弁護士会事情を三つ示しなさい。

     答えは簡単です。一つはある年齢に達した弁護士同士に「会長に立候補しては」という、社交辞令的な会話が存在する(存在していた)こと、二つは東京の弁護士にとって会長になるためには派閥の力が必要であるのが常識であること、そして三つは地方小弁護士会には事実上持ち回り的に会長職が回ってくるという、東京の会長より格段に就任しやすい状況があることと、それがゆえに東京の弁護士のなかには地方会の会長なら俺にもなれると考えている方がいらっしゃること。まあ、こんなところになりますか。

     「ちっ」という、地方弁護士会会員の舌打ちが聞こえてきそうです。地方会と一口にいっても、東京の弁護士が言ったような状況ばかりでは、もちろんありません。いかにも順繰りにだれでも番が回ってくるような言い方は、いささかなめた言い方にも聞こえます。

     ただ、以前にも書きましたように弁護士会の規模には大きな格差があります。数千人の会員を擁する会の会長と、数十人の会の会長は、違うとみる会員がいることも事実です。

     一方で、地方会には会務を少ない会員で負担しなければならない現実もあり、「多重会務者」などという言い方まであります。会長職を含め、会運営を全会員で担わなければならない実情もあり、この点も大弁護士会会員には実感できない点です。

     同じ弁護士会の会員であっても、大都市会と地方会では会長職のみならず、会務あるいは弁護士会との距離感が全く違うといっていいのです。

     もう一つ、地方会会員にとっての距離感をいうのであれば、それは日弁連会長についてです。会員の直接選挙で2年に1回選ばれる日弁連会長ですが、過去1例を除き、すべて東京三会と大阪の会員から選ばれています。

     それ以外の会からは候補にすら立てません。立てないというのは制度的に立てないということではなく、勝ち目がないという意味で政治的に立てないということです。例外の1例も神戸弁護士会(現兵庫県弁護士会)で、大阪が立たず近畿が一丸で大阪の代わりにこの神戸弁会員にまとまり、かつ東京の大派閥が、候補を一本化できず割れたという事情があったのでした。

     ネット上の質問掲示板「Yahoo!知恵袋」で、日弁連会長になる方法について聞く質問に対し、以下の二つの回答がなされていました。

     「東京の三会か大阪弁護士会に入って、主流派の派閥に所属して、派閥の執行部や弁護士会、日弁連の役員を経験しながら地位を上げていき、十分政治力が付いた段階で派閥(相乗り)の推薦を受けて日弁連会長選挙に立候補する。大まかに言うと、こんな感じでしょうか(現会長は例外ですが)」

     「会長になる方法は,弁護士が会長選挙に立候補して当選することです。選挙ですから多くの票を集めなければいけません。とくに弁護士は一家言持っている人が多いので,票を集めるには政策が重要となると思います。ただ単に長い間弁護士をやってるからなれるものではありませんが,長い経験に裏打ちされた理論・政策を持つ人には人をひきつける力があると思いますから,当選しやすくはなります」

     これを書いたのは、やはり弁護士でしょうか。ある意味、この両方が現実を語っていると思います。裏と表から見た、現実といえます。

     東京、大阪の会員は、ここでも会員数の多さと、背負う会内世論の大きさをいうかもしれません。また当選するためには、後者の回答のような点や、地方会を無視できないような制度になっていると強弁するかもしれません。

     しかし、もしその言い分に理があるとするならば、なおさらのこと、全く事情が違う地方の声をどう汲み上げるのかに、選挙時ではなく、就任後に、日弁連会長と大都市弁護士会は相当な配慮し、またそれを課題としなければなりません。

     そうでなければ、日弁連会長は派閥との近い距離を保ちながら、地方から遠い存在であり続けることになってしまいます。

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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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