「マスコミ世論」という認識と橋頭堡

     3月11日以降の大新聞の紙面は、文字通り東日本大震災と福島原発事故関連の記事で、連日、埋め尽くされている観があります。未曾有の大災害だけあって、これだけ長期に紙面が、同一の関連記事で埋まるのを大衆が目にすることも、これまてなかったことだと思います。

     そのことは、もちろん分かったうえで、それでもふと頭をよぎることがあります。もし、この大災害がなかったとしたら、ここには何が掲載されていたのだろう、と。つまり、この間、掲載されるはずだった膨大なニュースのことです。

     もちろん、新聞というものは、その日その日の事象に対するニュースバリューの、いわば格付けで取捨し、扱いも変える情報発表の場です。大きなニュースが入れば、大きく扱われるはずだった記事が小さくなることも、また、押し出されるようにボツになることも日常的に起きています。

     今回の未曾有の災害とそれにかかわる情報のバリューを最大限に重くとらえる以上、彼らからすれば、あるいは大衆の期待感としても、こうした紙面展開になることは当然であり、また妥当な結果ということにはなると思います。

     逆にそれを新聞の限界とみるならば、話はそこで終わります。ただ、このことは世論形成ということで考える時、実は大マスコミがそれを左右することも、その「限界」のなかで見るべきではないのか、と思うのです。

     マスコミの取捨によって流された情報によって、形成される世論というものが、果たして本当に国民の求める声と一致すのか、ということです。削られた情報が提供されていれば、国民の判断の前提は変わり、裁定も違ってくるはずだからです。要するに大マスコミといっても、報じるものは、基本的には社会事象のほんの一部の切り取りでしかないのです。

     このことは、運動ということを考えるときに、つとに言われてきたことでもありました。実際にマスコミを利用できるのは、この国の極限られた人間たちであり、社会に訴える手段をもたない、それ以外の人間たちは、いかにすべきなのか、と。

     その意味では、インターネットの登場は、この状況に対して、一つの可能性を秘めています。いうまでもなく、だれもが、マスコミの頭越しに、社会に情報を発信することができるからです。

     いうまでもなく、インターネットにも課題はあります。最大の課題は、情報の正確性です。マスコミ側の最大の攻撃点はここです。なんのフィルターもかからない情報がながされることは、匿名性も手伝い、大きな無責任の空間を作っているということです。逆にネット空間の玉石混交を強調するほどに、マスコミのフィルターの意義も強調されます。

     一方で、大マスコミにも、確実に危機感があります。とりわけ新聞は紙媒体の将来性を勘案して、ネット空間とどう付き合うのか、その関係構築のあり方を模索している段階といってもいいと思います。

     「マスコミを味方につける」

     こうした考え方が、弁護士会内の議論でも、これまで度々聞かれました。一部にマスコミを敵にまわす脅威としても語られていました。「市民運動」「国民運動」というとらえ方を、制度の改正、あるいはその阻止に掲げてきた弁護士会が、そうした意味でマスコミとの関係を重視せざるを得なかったことはある意味、当然のことでした。

     しかし、司法改革と、今日、弁護士・弁護士会の置かれている状況を考える時、ある局面では、現状既に大マスコミは味方ではありません。正確にいえば、味方ではない論調を作る材料を社会に提供している存在です。

     誤解されないために、あえていえば、弁護士会の味方をしないのが問題だというのではありません。繰り返しこのブログでいってきたように、フェアな判断材料が与えられていないことが問題だと思うのです。国民がフェアな材料で判断した裁定ならばともかく、マスコミの偏った情報に基づいた裁定の結果も、結局は国民の「自己責任」扱いされることになりかねないからです。

     したがって、直接世論に訴え、あるいはマスコミもそれを無視できなくさせる、という険しい道だけが残されているということです。

     橋頭堡という言葉があります。最近あまり使われる言葉ではありませんが、橋を守るために前方に作られた砦、軍事戦略上は敵地などの不利な地理的条件での作戦を有利に運ぶための前進拠点を指します。

     マスコミによって形成された不利な世論状況のなかで、世論に訴えることを余儀なくされている弁護士・会にとって今、必要なのは、あるいはネット空間のなかに、いくつもの橋頭堡を作ることなのではないか、また、そのことがこの「改革」の実害を止めることにもなるのではないか――。

     不遜ととられるかもしれませんが、この度の司法関連投稿サイト「司法ウオッチ」の立ち上げにも、少なからずそんな思いがあります。

    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
    http://www.shihouwatch.com/

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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