正しく認知してもらう「開拓」

     弁護士の「未開拓分野」というのが、よく聞かれます。弁護士が取り組むべき分野で、まだまだ進出の余地がある分野という意味でいわれることがほとんどです。

     いろいろな見方があるようですが、交通事故や遺言・相続、さらには中小企業の法律問題などが挙げられています。

     とりわけ、交通事故については、実は「未開拓」というより、「失地回復分野」なのだという弁護士もいます。昭和40年代までは、交通事故事件は、実は弁護士業務のドル箱たったのが、「示談代行付き任意保険」発売で、弁護士業務としての交通事故事件が激減。加害者側の示談代行担当保険会社社員が、被害者側の相談、実質的な仲介行為を行い、多くの被害者が弁護士に相談することなく、保険会社ペースで示談に応じている形になったといいます。(弁護士 小松亀一法律事務所)

     弁護士に頼むと高くつくというイメージが当事者側に出来上がっていたり、一方で、弁護士側も交通事故を定型処理事案とみて、積極的に取りまれなくなったという分析もなされています。しかし、現実的には、弁護士に依頼すれば、損害賠償で十分メリットがあるという見方があり、注目している弁護士がいるのです。

     ただ、基本的なことですが、弁護士の未開拓分野とは、別の見方をすれば、弁護士を使う効用がアピールしきれていない分野ということもできます。弁護士がやるかやらないかは、そこに弁護士依頼のメリットを感じている市民がいるかどうかにかかっています。前記弁護士業務としての交通事故案件が減退したのも、まさにそう見ることができます。

     したがって、開拓、失地回復は、まず、弁護士依頼のメリットを社会に伝えること、あるいは、それ以前に、弁護士がそうした業務を行うこと自体を知らない人に、それを知らせることが、当然、必要になります。

     そうなると、広報もしくは広告・宣伝ということが、当然の課題となります。

     一つ皮肉な見方があります。下火になってきたとされる多重債務問題・過払い金請求。これを弁護士の業務として、社会に認知させた最大の功績はだれにあるのかといえば、弁護士界のなかでまゆをしかめる人が多い、例の過払い・新興事務所ではないか、という見方です。同事務所がうった大量のテレビCМが、この分野の弁護士業務の認知に貢献したのではないかというのです。

     一部弁護士会でも、CМをうったそうですが、やはりアピール度で完全に劣っていたようです(「薬院駅前の弁護士のblog」)。金銭的な表現では、弁護士会広報に限界がある、という見方もあります。

     これまでも書いてきましたように、弁護士の意識がかなり変わってきたとはいえ、広告に対する弁護士の感覚はさまざまで、依然、消極的なとらえ方も少なくありません。拝金的と噂される事務所が広告を出していると、途端に「一緒に見られたくない」という敬遠意識が働きます。

     また、一方で、資金力がある事務所が広告をうつ「競争」の形が、果たして大衆にとってリスクがないのかという見方も根強くあります。しかし、間違いなく過払い・新興事務所は、前記、功績に胸を張るでしょう。現実的な救済の道をつけているではないか、と。

     さて、どうするという話です。こうした話になると、弁護士会内では、会広報に期待する声が依然強く出されます。ただ、それには限界があり、やはり、弁護士はどうしても個人で発信することを、考えていかなければならないと思います。強制加入団体であるがゆえに、個人の業務にかかわることは、必ず公平性の問題もつきまといます。

     もちろん、誰もがCМを打てるわけではありません。CМの威力に太刀打ちできるか、という意見もありますが、やはりインターネットを活用して、できるだけ個人として発信することが必要ではないでしょうか。また、弁護士会は、それをバックアップするような広報をなんとか模索するしかないように思います。

     弁護士の存在と、弁護士の仕事を認知してもらう方法は、「競争」とは別に、考えていかなくてはなりません。

    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
    http://www.shihouwatch.com/

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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