「内向きのロジック」がもたらしたもの

     弁護士会内の議論を見ていると、時々、妙な気持になります。

     今、弁護士会内外で話題になっている弁護士の増員ですが、かつて増員が必要とする理由として、以前にも書いた「法曹一元」の実現が掲げられたことがありました。弁護士から裁判官をとる制度の実現、つまり、その給源のために沢山の弁護士が必要という話です。

     しかし、いまや「法曹一元」の実現なんて、言う人もいません。増員へ日弁連が舵を切る過程では、これも以前書いたように、「丙案」という合格枠制の回避が掲げられたこともありましたが、その後、「丙案」は導入され、いまはもちろん影も形もありません。

     陪審制度を求めていた日弁連の中では、「国民参加」ということで共通しながらも、異質の「裁判員制度」が登場しましたが、「国民参加」の意義が強調され、まるでその制度導入の向こうに陪審制度があるように、「一里塚」などという表現もなされました。でも、将来的に陪審制度導入などという話はどこにもありません。

     つまり、何が言いたいというと、ここで掲げられたのは、実は会内に向けられた、内向きのロジックだったのではないか、ということです。逆に言うと、弁護士会というところが、ある方針に向かって、会内世論を束ねるためには、常にこうした会内を納得させるためのロジックが必要だったということではないか、ということです。

     もちろん、会内民主主義ということを考えれば、こうした手法自体を否定することはできません。

     ただ、妙な感じがあるといったのは、一つには、そのロジックがいつのまにか消えて、問題だけが残るということが現実化していること、もう一つは、こういう手法が会内世論をまとめることに効果的に働いた、逆にいえば、こうした手法に弁護士が弱いのではないか、と思えることです。

     司法改革を見渡すと、どうもそんなものばかりが目につく感じがします。

     増員には、裁判官の増員もいわれていました。「二割司法」は、この国の大衆の大量の泣寝入りと、眠れる大鉱脈ともいえる弁護士ニーズを連想させました。「敷居が高い」といわれれば、「身近にする」ために数も必要と言う話になり、広告や報酬の規制緩和だって、よしとしようという話で理解した人は沢山います。「点からプロセス」の養成の意義で、おカネがかかり、どう見ても平等な受験機会という意味では、旧司法試験より劣る法科大学院中心主義を選択しました。年間合格者3000人でも大丈夫といった日弁連幹部がいましたが、結果は、ご存知の通り。裁判員制度、過疎対策にも増員政策は必要と言っていたはずが、いまや日弁連も、「今の増員ペースによらなくても対応可能」としています。

     やはり、これは考えると妙なことです。理論的な職能集団である弁護士・会が、詳密な考察なしに、スローガンのようなものに賛成したり、本当の効果や結果を想定しないで突き進むなど、およそ一般的にイメージしずらいと思えるからです。

     弁護士は真剣に真面目に議論をします。ここで挙げた一つ一つにも、別の言い分も、とらえ方もあり、ただ、内向きのロジックにのったわけではなく、その時、最もよいと思われる選択をした、または、今もよい選択として有効だと強弁する人もいると思います。

     しかし、別の見方をする弁護士もいます。「改革」のスローガンに弱く、現実が顧みられない「あるべき論」「精神論」が先行しがちだと。また、サイレント・マジョリティも存在し、右へならえの方針選択もないわけではないと。

     ある弁護士たちは、今回の「改革」の方針や宣言・決議がなされる議場のムードについて、「翼賛」という表現すら使っていました。日弁連の総会の議決の有り様に対し、これに近いものを感じる会員も少なくないようです。

     これは過去の話ではなく、現在進行形の話というべきかもしれません。

     第二次の司法改革がいわれていますが、意見統一して事に当ることを主眼とした内向きのロジックに対して、弁護士は、もっと慎重に、そして弁護士らしく臨むべきであるように思えます。

    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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