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    言うべきことを言えていない法科大学院制度擁護論

     予備試験組の合格率が過去最高の89.4%となり、法科大学院修了組の32.7%を大きく上回り、その格差がさらに広がった2020年の司法試験結果を伝えた大新聞の報道は、相変わらず、この状況下の予備試験を「抜け道」と表現しています(1月21日付け朝日新聞朝刊)。法科大学院本道主義をどうしても死守しようとする側は、あくまで「本来の」制度趣旨論を持ち出して、この状況を、あたかも志望者の不当な心得違いが生み出しているものと印象付けようとしているように見えます。

     そもそも「本来の」趣旨を掲げた「抜け道」論には問題があります。「経済的な事情」という利用条件を挙げながら、学費や時間の負担を軽減する選択した志望者の不当性をいうことの無理です。しかも、一方で制度側もそうした志望者の意を汲んで、資格取得までの「時短化」で、いわば予備試験と同じ土俵で勝負する制度見直しにも打って出ているのですから(「予備試験『抜け道』論者の心底」 「法曹資格取得『時短化』法成立が意味するもの」)。

     しかし、そのこともさることながら、本当に法科大学院本道主義にこだわるのであれば、率直に言って、制度擁護派はもっと他に言わなければならないことがあるはず、というより、一番言わなければいけないことを言ってない、言えていません。それは、「一発試験」の実害の話です。予備試験出身法曹には、いかなる問題性(あるいは欠陥、不足面)があるのか、少なくとも彼らに対する、法科大学院出身法曹の優位性が、制度擁護派の口からそろそろ現実的に制度の実績として強調されて然るべきなのではないでしょうか。

     いうまでもないことですが、それは法科大学院制度、とりわけ修了の受験要件化の存在意義、あるいはこの「改革」の正当性にかかわります。あれほど強調された「点からプロセス」という制度改革の効用。実際には司法修習と一体の実績ある養成プロセスがありながら、旧司法試験体制を「点」と位置付け、予備校依存、受験技術偏重という言葉を並べて批判して、新制度の意義を強調した、そのことの正当性にかかわるのです。

     司法試験合格率で上回り、志望者はより難関であるルートを旧試同様選択し、かつ、経済的時間的回避の意向は新制度側も一定の理解を示している予備試験をめぐる状況にあって、なおかつ、「プロセス」を経ても経なくても、法曹の資質に大きな違いは現れないとなると、それこそそれは新制度にとって致命的であり、「改革」そのものの評価に直結するものになるはずです(現状は既に志望者がそれを見切った結果ともいえるかもしれませんが)。

     実際に旧試組の中には、今回の「改革」によって「欠陥品扱いされた」と捉えた人もいました。当時の「改革」を進めている現役法曹まで「欠陥」枠にならざるを得ない、こうした扱いには当初から、論法としての「無理」もいわれていました。しかし、それでも新制度によって法曹養成が「より良くなるかもしれない」という期待、あるいは「お手並み拝見」的な理解、さらに「改革」の勢いによって、この新制度を持ち上げようとするあまり、強調されたような論法と扱いのおかしさに、多くの法曹関係者は目をつぶったのが現実であったといわなければなりません(「法科大学院導入を支えた『欠陥』批判」

     もっとも、これは本来、それこそ「点」か「プロセス」かの二者択一によって、現在の法科大学院そのものの、存在をすべて消し去り、更地にするという話につながるものとはいえません。これまでも書いてきたように、それこそ「より良い」を目指し、当初の制度「理念」に従い、法科大学院が理想の教育を目指すというのであれば、それも構わないと思います。ただ、現状前記した「正当性」が強調できないのであれば、当然、強制化の論理を伴った修了の受験要件化は手放し、そのルートの意義は、自由に志望者が選択できるようにすべきです。

     そして、さらにいってしまえば、これも「改革」のなかで不問とされた点といっていいところですが、「プロセス」の役割を強調できる(する)のであれば、「理論と実務の架橋」となる理想の教育機関の位置取りは、「点」の選抜の前後どちらが、それこそ理想的なのかをもう一度検討すべきであるように思えます。現司法修習との関係が、再び論点となりますが、基礎的素養の選抜後の方が、志望者にとっても、国費が投入される教育機関の在り方としても、より理想的かつ現実的ではないか、ということも、もはや検討されていいのではないでしょうか。

     しかし、ここまで書くと、改めて現実との距離感の方を感じてしまいます。冒頭書いた通り、予備試験は依然として、ある意味、堂々と「抜け道」扱いされ、なんとかしなければならないのは、予備試験の在り方と、法科大学院の現状に合わせない司法試験の方である、という論調、そしてさらに受験要件化を手放した時、法科大学院は終わるという捉え方が、制度擁護派の中には、いまだ根強く存在しているからです。新法曹養成の視界は、まだ開けそうにはありません。


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    テーマ : 資格試験
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    ところで、大学卒業後すぐ法科大学院に入る人って、学部在学中に予備試験を受けた経験者ばっかりなんでしょうね。法科大学院に入れたのに、その身分で予備試験を受ける人も多いんだから。それで、もし予備試験に受かったらすぐ中退して、「法科大学院修了」の経歴を断固拒絶するような人ばかり。もし、大学生は予備試験受験禁止にしたら、大量の大学生が法曹界とやらに関心を持つこともなくなって、今度こそ学部新卒者の法科大学院進学者は壊滅する。それを恐れてるんでしょうかね。コネ野郎を蹴落とす優秀者がいなくなれば、かわいいかわいいコネ野郎どもはみんな安泰になるはずですが、それがそんなに嫌なんでしょうかね。私にはわからない。

    そもそも、なんで予備試験ってできたんでしょうね?
    医師国家試験に予備試験なんかないでしょ?
    予備試験を作るにしても、受験年齢に下限を定めて、法科大学院卒業者より若く突破できないようにしておけば、つまり大学在学中の受験を事実上不可能にしておけば、こんなことにはならなかったでしょうに、どうしてそうしなかったんでしょうね?
    教養試験と称して、センター試験レベルの、だがやたら広範囲なものを残した、つまりセンター試験でやたら広範囲の分野を覚え込まされてから日が浅い東大生や京大生が有利になるような得点源をわざわざ作っていることから考えて、予備試験は東大法学部の現役学生を優遇して取り立てるための仕組みでしょ? 実際の合格者もそういうところが多い。司法書士とか行政書士とか法律事務所事務員とかそういう人を取り立てる仕組みにはなってない(そもそもそういう人を弁護士にしたいなら、前職不問で平等に採点してた旧試験で何も問題ない。逆に、有名大学の新卒者だという理由で恣意的に優遇されるつまりそれ以外が恣意的に排除される仕組みなど、絶対に認めてはいけなかった)。

    予備試験にガアガア文句を言いながら、じゃあ廃止しろとか、受験年齢に下限を作れとか、その程度のことも言えないのは、予備試験こそ東大法学部の優秀者を新卒でつまり若くして確保する最後の手段になっちゃってるからでしょ。予備試験廃止・法科大学院ルート一本化なんてしたら、もう東大生は弁護士どころか司法官すら見向きもしなくなる。声を掛けたら東大法科大学院に入ってくれるのは、他のエリートコースに乗れなかった落ちこぼれだけ。あるいはそんなのすら絶え果てる。それを恐れてるんでしょ。

    弁護士AIってのが開発されてて、すでに実用レベルだ、判例検索どころか訴状だって書ける、まして法律相談レベルなんてとっくに超えてる、という噂を聞いたことがあります。さっさと普及するといいですね。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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