「時代の流れ」と割り切られる結果

     弁護士の報酬の分かりにくさは、昔から言われ、今も言われています。

     かつて弁護士の報酬基準規程がありましたが、2004年4月1日から廃止され、弁護士が自由に料金を定めることになりました。理由は、公正取引委員会から独占禁止法違反の指摘を受けたことと、規制緩和の流れということになっています。

     当時の弁護士のなかには、これには首をかしげる人がかなりいたように思います。ただでも分かりにくさで市民から定評がある弁護士報酬について、こともあろうに高いといわれる「敷居」を低くしようという時に、基準廃止はどうなんだ、というわけです。費用を請求される依頼者が、尺度になるものがなければ、混乱することは目に見えています。

     さすがに日弁連もなんとかしなくては、と思ったのか、ある意味、苦肉の策として、全国の弁護士に弁護士報酬についてのアンケートを取り、それを一つの目安として提供し、今日に至っています。
     
     さて、広告解禁と並び、報酬自由化も、いまや弁護士の規制緩和の具体的な成果として、振り返る見方を目にします。

     表向きの弁護士の反応は、広告解禁でわれもわれもと乗り出したわけではなかったのと同様、報酬自由化後も、多くの弁護士は、新しい料金を定めたわけではなく、なくなった旧基準に基づく方針を打ち出しました。

     ただ、一方で、自由化の理解の仕方としては、おそらく大部分の人が、ある意味「時代の流れ」として納得すると同時に、競争時代の到来を否応なく意識させられるものだったと思います。広告と同様、競争のために積極的にそれを必要と感じていたのは、少数ながら、多くの弁護士が割りきった形で受け入れようとした観があります。

     しかし、既に、この流れのツケが回ってきたというべきかもしれません。既に書いたように、日弁連は2月に開いた臨時総会で、日本弁護士連合会は、過払い金返還請求などの債務整理で、一部、弁護士と依頼者との間でトラブルが起きていることを受けて、弁護士報酬に上限を設けるなどの規程案を可決、広告についても報酬の基準を表示する努力義務を課しました。日弁連としては、個別業務を強力に規制する異例の方策です。

     これはとりも直さず、過払い金の着服や巨額のテレビCМを繰り出す利益至上主義の新興事務所の登場など、「昔サラ金、今法律事務所」とまでいわれる弁護士の姿の大きな変貌があってのことです。

     宇都宮健児・日弁連会長は、昨年の就任当初から、この10年間の広告解禁や弁護士報酬規程廃止の再規制の検討を視野に入れていることを発言していました。方策に至る危機意識を既に強く持っていたようです。

     一方で、これはある意味、ビジネスと割り切られる先に待っている、当然の結果とみることもできます。弁護士のなかには、もちろん、こうした方向に眉をしかめる人もいます。ただ、これがビジネス化であるというとらえ方は、弁護士界の外にもあります。この前記日弁連の方策自体にも、「サービス」を掲げて反発する弁護士もいます。

     さて、これからの話です。弁護士界を眺めてみると、「ビジネス」ということで、最先兵になる意向を既に固めている方は、実はまだ少数派。あとはビジネス化に以前抵抗を感じている方と、そしておそらく最も多いのは、これまで同様「時代の流れ」として、なんとか受け止めなければならないと考えている方ではないでしょうか。

     意外な弁護士の時流適応とも、諦めの良さ、あるいは社会的な孤立感への恐怖感とも思えてしまいます。いずれにしても、弁護士としては、ここは、これまでを振り返り、健全に発展する未来ばかりを想像せずに、この流れについて慎重に立ち止まって考えるべき時のように思います。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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