弁護士の数が国の人権レベル?

     弁護士の数を増やすべきか否か。かつてこのテーマで取材した、大物のある弁護士は胸をはってこう言いました。

     「弁護士の数が、その国の人権のレベルを決めるのだ」

     その頃は、まだ弁護士会の弁護士増員議論は今ほどは激しくありませんでしたが、この人は弁護士は増員すべきという立場でこうおっしゃったのでした。

     えー?と思われる方もおいでと思います。ぴんとこない話で、なんとなく、ものすごく偉そうに聞こえるかもしれません。

     だけども、この自負心は、当時、多くの弁護士の中にあり、実は今も多くの人の根底にあるのではないか、と思っています。とりわけ、「人権派」といわれる弁護士のなかで、増員賛成派に回った人の考え方、言い分は、異口同音にこうしたものでした。

     この言い方は、ある意味正しいと思います。想像してみてください。あなたが紛争の当事者になり、家族も友人も含め、社会全体があなたの言い分に耳をかさなくなったとしたら。その時、最後の最後まであなたに付き添って、あなたの権利の主張をしてくれるのは弁護士です。つまり、弁護士は人権の最後の砦なのです。
     
     前記した言い方は、要するにいくつもの最後の砦が機能することで、この国の人権がちゃんと守られ、確立していく、ということです。

     私は前の新聞社で、各国の人権NGOが送られてくる人権侵害の救済を求めるレポートを、世界に配信している国際組織からの情報を要約して、毎週、日本の法律家に向けて流していました。詳しくは回を改めますが、その内容はすさまじいものでした。信じられないことかもしれませんが、諸外国をみれば、国家権力を含む強大な権力が個人の人権侵害をあからさまに侵害しているケースはいくらもあり、そういう国では弁護士が命がけで人権ために戦っているのです。

     前記した言い方に、ぴんとこないのは、まだこの国の市民がそこまでの人権の危機感を感じずに済んでいるとも言えなくありません。これを言った弁護士を含め、これに賛同する人権派の方からすれば、「弁護士がいればいるほど、市民を人権侵害から救済できる」ということになるのです。

     この国では今、弁護士が大増員の真っただ中にあります。「それじゃ、人権のために結構なことじゃないか」と思われるかもしれません。まあ、そうかもしれません。ただし、弁護士がつぶれてしまわなければですが。

     今の増員議論では、「ニーズ」という言葉が飛び交います。社会で弁護士が必要とされることが沢山あるのだという考え方が弁護士の増員を後押ししています。これもまた詳しくは回を改めますが、端的にいえば、弁護士を経済的に支える有償のニーズと、ボランティアでも立ち上がらなくてはならない無償の二―ズの話がごちゃごちゃなのです。

     企業の弁護を含めあらゆる紛争は人権問題だ、なんていう人もいますが、基本的に人権問題はお金になるわけではありません。このまま弁護士が増え、弁護士が経済的に追い詰められれば追い詰められるほど、言い方は語弊がありますが、お金儲けにたけた弁護士だけが生き残り、お金儲け抜きで手弁当で弱者のために立ち上がる弁護士が、この国から消えていくということになりかねません。

     前記の崇高な自負心からすれば、人権派の心理として、増やす「ニーズ」論に反対しにくい面もあるかもしれませんし、総体が増えれば比率として人権派が増えるという考えかもしれません。しかし、人権派の中にも、それ以前の問題として、前記したような危機感から反対している人が沢山います。

     まず今、起こっていることが、もっともっと多くの市民に伝えられなければならないと思います。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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