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    再投票結果から見る日弁連会長選の現在地

     史上最多の5氏出馬から、上位2氏による再投票にもつれ込んだ日弁連会長選挙の投開票が3月11日に行われ、仙台弁護士会の荒中氏が、第二東京弁護士会の山岸良太氏を破り、当選を果たしました(再投票開票結果仮集計)。1回目の選挙で票差で1800票余り上回り得票でトップながら、最多票獲得会が14会に止まり、当選条件の18会以上での最多票を獲得したい山岸陣営と、28会での最多票を獲得しながら、前記票差を追い上げたい荒陣営。再投票で、票で逆に荒氏が600票余上回り、最多票会で山岸氏は上乗せすることができず、逆に2会を失い12会に止まる形(前回勝利の6会を失い、新たな4会獲得)になりました(「5氏出馬の日弁連会長選から見えたもの」)。

     1回目の他3候補の支持票の流れについて、全体的には明確な形として表れたとまではいえないものの、落選した川上明彦氏が1100票を獲得したお膝元の愛知県弁護士会で、今回、荒氏は700票近い票を獲得し、山岸氏に470票余りの差をつけて勝利。最多票で川上氏が6会を制した中部弁連で、今回荒氏が5会を制しています。全体の獲得票では、荒氏が3200票余を上乗せしたのに対し、山岸氏は800票余増に止まっています。

     投票率は1回目から2.7ポイント下がり、47.2%と低く、50%を超えた会も3会減り38会で、依然多くの会員が再投票に強い関心を示さず、投票行動に及んでいないことを伺わせます。

     一方、こうした結果の中で、荒氏が1986年選挙で当選した神戸弁護士会(現・兵庫県弁護士会)の北山六郎氏以来、二人目の地方会(正確には東京、大阪以外の会)出身で日弁連会長の座についた点が注目され、新聞報道もそこに言及しています。大都市会の長年の会長持ち回りの慣行を破った、あたかも地方会の勝利のように伝えられている面もあります(「日弁連会長選の『慣行』を支えてきた精神」)。

     しかし、日弁連会長選の歴史的評価として、ここは若干疑問点を提示しておく必要があるように思います。一つは、そもそも今回の選挙が、果たして前記結果がイメージさせるような「地方会対大都市会」の構図だけでみれるのかという点です。確かに前記開票結果が示す両氏の対決は、1回目の選挙から地方会最多票で優位に立った荒氏が、2回目でも地方会票の強固な支持を維持したことによる勝利にもとれます。

     しかし、1回目の選挙から最大票田である東京では、山岸氏のお膝元の二弁以外で両氏の獲得票には大きな開きがなく、さらに象徴的なのは再投票で三会のうち、東弁、一弁で同氏が最多票を荒氏に逆転して奪われているということです。また、大阪についても、同氏に対して400票余り差をつけていた山岸氏が、再投票でも辛くも上回ったものの、荒氏に40票差にまで迫られている現実です。

     これは、一面、大都市会での会派による集票能力が、かつてのように機能していない(機能しなかった)結果ととる向きもあるかもしれません。しかし、逆にいうと今回の獲得票でも勝利要因が、会派の支持を含めた大都市会の票固めに依然として、依存している面も伺えます。有り体に言えば、たまたま会派票を含めた大都市会の票が大きく割れる事情が当選者側に味方した。逆にそれがなくして地方会会員が勝利できる土壌が、弁護士会選挙に生まれているとまでは、依然言えないのではないか、ということです。

     その意味では、当時とは事情が変わっているとはいえ、以前書いたように、当選直後には「地方会の勝利」といわれ、未だこれまでの唯一の地方会からの会長当選例として挙げられている、前記1986年選挙の北山氏勝利のときの大都市会派閥事情(東京の対立候補が会派支持をまとめきれなかった)と繋がるものが、依然として存在しているようにもとれるのです(前出「日弁連会長選の『慣行』を支えてきた精神」)。

     最多票獲得という、いわゆる「三分の一ルール」が選挙において、より存在感を示し、大都市会での集票と影響力だけで勝ち切れない選挙になってきている現実は確かにあります。ただ、勝因としてみた場合、今回の会長選挙が「地方会対大都市会」の構図のなかで、地方会が勝利した選挙と単純に括ることにはいささか抵抗があります。

     それに加えて、もう一つ指摘しておかなければならないのは、再投票の両氏の政策的なスタンスという点です。これも以前書いたように、今回の選挙の特徴は、いわゆる「主流派」が割れた選挙である、ということです。「荒氏は実は主流派ど真ん中」という評価を選挙期間中、地方会会員を含めて会内で異口同音に耳にしました。反「主流派」候補が予想外に苦戦し、姿を消した、「主流派」2氏による今回の選挙は、職務基本規程や非弁対策への対応の違いが一部取り沙汰されたものの、法曹人口問題などでかつてのように「改革」路線を挟んだ政策の違いが鮮明とならず、また、地方会会員にとって圧倒的な違いとなって表れる政策が一方から示されていたというわけでもない。

     その意味で、政策的な意味でも地方会勝利としての要因を結び付け難い。有り体にいってしまえば、前記大都市会の事情を重ね合わせても、荒氏は地方会会員としての政策的スタンスが評価されたというよりも、むしろ「主流派」候補として勝利したのではないか、ということです。もちろん、地方会会員のなかには、荒氏が地方会会員である点に期待して1票を投じた人もいると思います。さらにいえば、選挙中話題となった一弁有志による呼びかけで示されたような大都市会「中心主義」への危機感(山岸氏のスタンスや意思とはズレていたとしても)が、荒氏への投票行動につながった面もあるかもしれません。

     しかし、弁護士会内にあって、「主流派」が束ねる力はやはり存在し、そこに大都市会の主導層=会派が厳然と影響力を持っている。決してその意思に反して地方会の勝利があったわけではない。そして、なお半数以上の弁護士は、選挙を通した意思表示には参加していない。「主流派」が乗っかってきた、日弁連会長選挙の慣行を変えるものという意味合いを、果たして今回の選挙結果に見つけることはできるのでしょうか。

     あの時の選挙が、やはりその後の日弁連の選挙を変えた、地方会の勝利だった――。そんな評価が加えられるときが本当に来るのか。少なくとも、その答えが見えてくるのは、もう少し先のことになるように思います。


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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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