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    5氏出馬の日弁連会長選から見えたもの

     史上最多の5氏出馬で注目された日弁連会長選挙は、2月7日の投開票の結果、大方の予想通り、いずれの候補者も当選要件(総得票数が最多で、かつ3分の1の18会以上で最多得票)を満たさず、上位2候補による3月11日の再投票にもつれ込むこととなりました。開票結果仮集計によれば、8724票で最多得票となった第二東京弁護士会の山岸良太氏は、最多得票会が14弁護士会にとどまり、次点で6939票を獲得し、28会で最多得票だった仙台弁護士会の荒中氏との間で再度争われることとになったということです。他3候補の結果は、愛知県弁護士会の川上明彦氏2333票、最多得票会6会、千葉県弁護士会の及川智志氏1889票、同3会、東京弁護士会の武内更一氏が898票、同0会。

     投票率は49.9%で、史上最低だった前回2018年の選挙から9.1ポイント上昇し、過去4回の選挙のなかでは最も高い数値。投票率が50%を超えた会も前回の16会から41会に増えましたが、その一方で、大票田である東京三会、大阪、神奈川県、福岡県の各弁護士会で軒並み50%を下回った結果、全体としては投票率で、依然低いレベルの選挙が続いている印象です。

     いわゆる「主流派」候補から3氏、かつ、会長席の持ち回りが慣例化している東京・大阪以外の地方会から3氏が出馬したことでも異例となった選挙で、会内では早くから「主流派」票の割れ方や、地方会票の流れ方も注目されました。東京と地方の「主流派」2候補の再投票という結果たけをみれば、そのまま大都市会対地方という構図にはなっているといえます(「『改革』が変えた日弁連会長選挙」)。

     数字の上でみれば、両候補にとって、片や最多得票会の4会の上乗せ、片や1800票余りの票差の逆転が、再投票での当選へのハードルになっている格好です。2800票余りの及川・武内両「反主流派」候補の票は、法曹人口減員など、「改革」路線に対する明確な反対への支持を背景としているとみられるだけに、「主流派」2候補の再投票結果を大きく左右するものになるかは微妙。その一方で、所属会の地盤ともいえる中部弁連の6会できっちり最多票を獲得し、1470票を固めた「主流派」の川上氏の支持票の流れが注目される形になっています。

     こうした構図になると、とかく政策そのものの違いよりも、結局、東京の大派閥票をどちらがどう取るか、はたまた次回選挙に向けた恩の「売り買い」が取り沙汰されるのが弁護士会の選挙でもあります。実際にそういう水面下の動きがないとはいえませんが、東京の会派(派閥)関係者のなかでは、「2年後の約束なんて空手形になりかねない」、つまりは当てにはならないということが、ずっと言われています。2年後の選挙の誰が立つか、その時どういう情勢になるかが分からないのは当たり前であり、かつての今よりも派閥や長老主導の持ち回り選挙がかっちりしていた時代でさえ、現にそうであったことを考えれば、いまやどうなんだろうか、という感じはします。

     ただ、それはそれとしても、やはり前記当選へのハードルをなんとか越えなければ再投票での勝利がない両陣営としては、やれることはそれほど多くないだけに、組織的にまとまった票、あるいは、まとまった最多得票会の獲得というところは注目せざるを得ないところのはずです。

     肝心の政策はどうか。各候補が取り上げている若手対策や、会員間で関心が高い職務基本規程改定、非弁対策へのスタンスなどが、選挙期間中話題となり、各候補の違いもネットなどで取り沙汰されました。大都市会対地方会という構図通りの選挙結果のなか、「主流派」内での対決となった選挙だけに、前記構図とは別に、現執行部との政策的な距離、つまりはどちらが現状を継承するか(維持するのか)という観点が、各政策についての現状肯定・否定双方の会員の投票行動に影響する面もあり、特に再投票ではそこも焦点になる可能性があります。

     ただ、その意味でも、今回の選挙結果でどうしても指摘しておかなければならないのは、反「改革」という、「主流派」との決定的で、はっきりとした政策の違いを示しているはずの、「反主流派」候補の、予想以上の苦戦、低調です。

     全候補の獲得票に占める各候補票の割合でみた場合、トップの山岸氏42.0%、荒氏33.4%、川上氏11.2%、及川氏9.1%、武内氏4.3%。「主流派」対「反主流派」の構図でみれば、86.6%対13.4%ということになります。「主流派」から2候補、「反主流派」2候補の4人で争われ、最終的に両派2候補の間で再投票、再選挙にもつれ込んだ2012年選挙(最終的に「反主流派」で初めて前回当選した前会長の宇都宮健児候補が敗北し、「主流派」に会長席を奪還された)時の、最初の投票の結果でみると、獲得票の占有率は、「主流派」57.3%に対し「反主流派」42.7%。両派同一候補一騎打ちの再選挙では、52.7%対47.3%でした。

     弁護士激増政策への賛否、あるいは司法試験合格年1500人と「更なる減員」の検証か、1000人以下への減員か、といった両派で最も先鋭的に対立するはずの政策を、前記票差に重ね合わせてみると、日弁連への「改革」へのスタンスの違いというテーマが、以前のように会長選への会員の投票行動に反映しずらくなっている可能性がうかがえます。もちろん、候補者が違う以上、キャリヤや人柄を投票行動に反映させていることもあります。ただ、武内候補についてみれば、今回は過去3回の出馬で最も票を獲得できず、「反主流派」も2候補に割れたとはいえ、前回2年前から約2200人の有権者会員が増えるなかで、今回、ほぼ2000票を失っており、「反主流派」票として括ってみても、同派は今回60票減らした格好になっています。

     2年前の前回の結果でも、「日弁連会長選挙での『改革』路線を挟んだ会員票の流れの潮目が、決定的に変わった」と書きましたが、さらにその印象は強くなり、選挙結果を見る限り、この対立軸が、少なくとも会長選の勝ち負けにつながる形から、現実はさらに遠のいたようにとれます(「会長選最低投票率更新が示す日弁連の現実」)。

      しかし、この「改革」の失敗、そしてそれを引きずっていることこそが、今の弁護士会と個々の会員の活動に、もっとも影響を及ぼし、足を引っ張っているテーマであることは、動かし難い事実です。

      「(再投票に臨む)日弁連会長候補2人はいずれも弁護士人口増加を業務拡大で吸収するという政策。でも年1500人合格だと、弁護士は年1000人ずつ増加。1人当りの売上が1000万円だとしても、この弁護士増加を吸収するには毎年100億円ずつの業務拡大が必要になるはず。2候補にうかがいたい。ほんとうにそんなことできるの?」

     及川氏は選挙後、自身のツイッターで、こうつぶやきました。この問いかけは、全く正しいと思います。しかし、なぜ、投票行動に及ぶ会員がこういう視点で、ストレートに現実を見れなくなっているのか、そしほぼ半数の会員が、こうした問題意識で投票行動に及ばないのか――。そのことを、まず考えなければいけないところに来ている日弁連の現実があるように思えてなりません。


    カルロス・ゴーン被告人の国外逃亡と日本の刑事司法について、自由なご意見をお聞かせ下さい。司法ウオッチ「ニュースご意見板」http://shihouwatch.com/archives/8373

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    法テラス地方事務所所長・副所長等のポスト利権を持っている人達やそのしもべたちは、「人権・弁護士自治を守れ」といい、その本懐は「俺様の利権を守れ。」で、どんどん契約弁護士の待遇は下がっていくばかり(予算は切りさがっても、弁護士会と法テラスが組んだ利権ポストの報酬は下がらない)。

    反主流派が主流派を倒さなくとも、経済情勢が主流派を倒す。強制加入か任意加入かという議論も、退会者が続出することで組織が立ち行かなくなり、きれいに解決する。

    物事はあるべきところに落ち着く。

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    >この弁護士増加を吸収するには毎年100億円ずつの業務拡大が必要になるはず。2候補にうかがいたい。ほんとうにそんなことできるの?

    ①増加した会員からの会費徴収
    ②適切な会務の選別と徹底した会務のリストラ
    ③××××との徹底抗戦と価格決定権をとりもろす
    ④早期ハッピーリ……
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
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    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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