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    「改革」が変えた日弁連会長選挙

     日弁連会長選挙には、かつてはっきりとした二つの特徴がありました。一つは長老支配や大都市弁護士会の会派(派閥)の力を背景とした、いわば「上から」の選挙が行われること。大票田である大都市の弁護士会では派閥が票を固め、地方にあっては長老弁護士の、いわばネットワークで票が束ねられていた。結果、ある意味、かっちりと東京三弁護士会と大阪弁護士会出身の、会長経験者らのほぼ持ち回り体制が、それらによって支えられていた。

     今の司法改革が論議され始めた30年くらい前までには、既に以前のような長老支配は姿を消していたようにみえましたが、会派はその後も、選挙や弁護士会の議決に際し、それなりの影響力を維持してきたといえます。

     そして、もう一つは、今思えば、およそ政策的な論争が行われるような選挙ではなかった、ということです。候補者の掲げる政策は、まるで会務報告を見ているように、網羅的かつ総花的で、明らかにいかに日弁連の現状の活動に目配りしているのか、これまでの活動を踏襲しているかをアピールするもの。要はその目配りによって、支持者を集める形だけで、楽に勝ち切れる選挙でもあったということです。

     よく選挙公報の候補者の主張を見比べ、それこそ網羅的・総花的な意味での「完成度」を見ただけで、次の当選者は予想がつくなどということが言われていたりもしました。その結果として、候補者が普段会内のイメージとしてあまり積極的な活動していないような分野への発言が、選挙対策として行われることにもなります。さらに弁護士会の選挙にあっては、人権派や革新系の陣営の票を押さえなければ苦戦する、という事情もあって、そのため前記のような選挙対策的発言によって、「にわか人権派」と陰で揶揄されるような、候補者の姿を見ることもありました。

     日弁連・弁護士会の選挙は、かつては政治家をして「永田町よりギラギラしている」と言わしめるような、知的職能集団のイメージではない一面をのぞかせるものとされていました。しかし、逆に前記してきたような形で勝ち負けになってしまうということだけをとれば、およそ「民主的」といえるかは疑問ながら、今にしてみれば、のどかな「村選挙」をやってきたように思えます。

     それを基本的にぐらつかせることになった一つの要因が、司法改革の結果であったというのは、その旗振りを積極的に行い、それを踏襲する形となった「主流」派とその系譜の弁護士たちにとっては、ある意味、皮肉な結果だったかもしれません。司法改革路線は、これまでの弁護士会にはなかったような、会を割る争点と、野党勢力のような反「改革」派の系譜を生み出しました。

     それまでのように対立候補の勢力が選挙ごとに基本的に姿を消していくのではなく、次の選挙にも「改革」路線の是非は争点として引き継がれ、また対立候補が現れる。会派が集票マシンとして機能し、結果的に「主流」派を勝利に導いても、前記争点そのものは消えず、延々とその対立が選挙で闘われるという形は、それまでの日弁連が経験したことがないことでした。

     2000年から2年ごと5期連続で、反「改革」派として日弁連会長選挙に立候補した高山俊吉弁護士は、当選こそできなかったものの、「主流」派候補獲得票の半数に及ぶ固定票を毎回獲得し、2008年の選挙では、全候補者獲得票の4割以上を占めるまでに至りました。そして、その次の2010年の選挙で、遂に宇都宮健児弁護士が、「主流」派候補を破り当選、2年間会長の座につきました。しかし、2年後の2012年に「主流」派候補に奪還され、現在に至ります。

     「改革」がもたらした弁護士激増による、大都市会での会派非所属会員の増加は、会派の集票力、拘束力に陰りをもたらすとともに、経済的な激変によって、個々の会員にあっては、より業務への関心が強まった。その結果、強制加入団体を「規制」ととらえる見方とともに、会運営に厳しい目が向けられ始めます。増員政策、法科大学院制度、給費制打ち切り、法テラスの低報酬といった、既に出ている「改革」の結果への評価や処方箋が、前記反「改革」路線派の系譜以外からも問われることにもなっています。

     今月14日に立候補が締め切られた、次期日弁連会長選挙には、同選挙史上初の5人が立候補し、大混戦も予想されています。系譜的には「主流」派3人、反「主流」派2人で、それぞれに票の割れ方が注目されています(「令和2年度同3年度日弁連会長選挙選挙公報」)。候補者中最多得票と、全国弁護士会の3分の1会(52会中13会)超で最多票獲得という、当選条件との関係で、2010年、2012年選挙のような再投票や再選挙にもつれ込む可能性も言われています。

     とりわけ、5人中東京以外の地方会から3人が出馬、さらに東京の「主流」派は1候補ながら同派が一本化されていないことは、「改革」路線継承のスタンスだけではない、政策の違いで勝負しようとする流れが生まれてきたともいえなくはありません。

     しかし、それが会員に伝わるか、投票行動につながるのかは別問題です。前記反「主流」派が善戦し、宇都宮弁護士が当選した2010年の日弁連会長選挙(再投票)で63.2%あった投票率はほぼ下がり続け、前回2018年選挙では同会長選の通常選挙では最低の40.8%にまで落ち込んでいます(「会長選最低投票率更新が示す日弁連の現実」)。日弁連会長にも、もはや日弁連にも「期待しない」という層が確実に広がっている。これもまた、「改革」の先に生まれてきたものといわなければなりません。

     総花的な政策も、反「改革」だけでも響かない、その層に今、何が響くのか――。それが問われている難しい選挙になります。


    カルロス・ゴーン被告人の国外逃亡と日本の刑事司法について、自由なご意見をお聞かせ下さい。司法ウオッチ「ニュースご意見板」http://shihouwatch.com/archives/8373

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    No title

    迷う方へと思ったら余計分かりにくくなった
    https://twitter.com/mayukotaniguchi/status/1225751405102649344

    No title

    及川氏、頑張っていたのにナァ。
    http://www.veritas-law.jp/newslist.cgi

    No title

    ハッシュタグ 日弁連会長選挙
    より
    再投票!

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    >その層に今、何が響くのか

    シンプルに、金
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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