弁護士を「商品」にできる関係

     弁護士の増員を契機に、弁護士自身の意識にも変化が生まれつつあります。多くの弁護士の口から、ここまで将来的な業務維持への不安を聞くことが、かつてあったのだろうか、とも思ってしまいます。

     競争への覚悟、いわばビジネスとして、割り切る覚悟が、意識として広がっている観もあります。もちろん、これまでもそうしたスタンスで仕事をし、ビジネスローヤーという括り方をされることにも、何ら抵抗がなかった方からすれば、「何をいまさら、弁護士はもともとサービス業ではないか」と、その自覚の遅さをいう話にもなります。

     以前にも書きましたが、かつては、「弁護士を雇う」と表現しただけでも、「雇うとは何事か」とめくじらを立てる弁護士もいたほどです。そうした姿勢は、独立ということへの強いこだわりであり、ブライドであったとしても、半面、威張る弁護士の姿勢が、えんえんとその敷居を高くしてきた一因であることも否定できない事実です(「威張る弁護士」)。

     一般のサービス業としてみると同時に、ビジネスとしても割り切っていく方向は、それを健全なものとみようと思えば、前記したようなこれまでの弁護士の心得違いがつくってしまった「敷居の高さ」への反省として、理解し、また理解されるのかもしれません。

     ところで、弁護士がビジネスである、という自覚は、自らが提供するサービスを「商品」ととらえ、それを売り込むという行為も伴います。しかし、それなりの覚悟ができている人でも、自分自身が「商品」とまで考えている方は、まだそれほどいないのではないでしょうか。

     しかし、企業法務の方から聞こえてくる話をみると、まさに弁護士そのものが「商品」とみられていると感じることがあります。

     昨年、経済雑誌の弁護士特集で、大手企業の企業法務担当者による興味深い覆面座談会が掲載されました(「週刊エコノミスト」臨時増刊2010年12月20日号)。

     「法務担当者のホンネ炸裂 こんな弁護士は使えない」と題された、この座談会では法務経験30年から4年の法務経験者6人が参加しているのですが、要するにここから見えてくるのは、弁護士の使い勝手にごたわった、法的サービスのツールとして見る、「弁護士商品」への目線といってもいいものです。

     既に従来からのトップが使い続けてきた大先生事務所を「スキルが上がっていない」から現場では「そろそろ縁を切ってもいい」という話になっていること、チャージの問題が一番大きく、「事務所で何時間仕事をしました」という時給換算の請求が、効率作業をチェックできないので問題であること、リターンに見合うコストを理解し、うまくやってくれる弁護士だと継続的に付き合えること、事務所のブランドで選ぶと大失敗。口コミに次ぐ口コミで優秀な弁護士を探し当てること――などなど。

     これ自体は、使う側使われる側の関係では、ビジネスと割り切られるなかで、ある意味、当然のことであり、大した問題ではないのかもしれません。

     ただ、見落とせないと思ったのは、一番長い法務経験30年の人が語った次の言葉です。

     「長く法務をやっていると、知り合った弁護士の数も相当な人数になる。それなりに目が肥えた部分はあると思うので、この弁護士に頼んで失敗、ということは近年ではあまりなくなっている」
     「弁護士は口コミで紹介してもらったり、訴訟の相手方の弁護士だったけど優秀だと思ったから、その案件が終わったあと付き合い始めた人もいる」

     法務経験30年にして、弁護士に当り外れがなくなってきた彼の話。いわば、これが陳列されて、売り込まれてくる「商品・弁護士」を、リスクなく選べる大企業の環境なのではないのか、と思えるのです。恒常的な弁護士との付き合いのなかで、選ぶ側が主体となり、よりよい能力とサービスを比較する機会を使い、だめなものは切り捨て、よいものを残し、そうしたなかで選ぶ側の目が肥えていく、あるいは肥えた目にこたえようとする弁護士が現れはじめ、競争を展開し、また売り込んでくる。

     おそらく今、弁護士増員とともに語れる、あるべき弁護士の「競争」の形とは、おそらくこうしたものなのだろうと思います。だとすれば、この法務マンの言をみても、そのイメージが一般的な大衆と弁護士の関係に、いかにあてはめられないか、逆にいえば、それがどういう限られた層のニーズから逆算されたイメージかが、はっきり分かるように思えるのです。

     前記したような、弁護士たちの覚悟が、果たしてこの点をどういう風に理解したものなのか、あるいは理解していないものなのか、その辺が、気になるところです。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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