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    濫用的懲戒請求への弁護士会姿勢から見えるもの

     東京弁護士会が2016年に発表した「朝鮮学校への適正な補助金交付を求める会長声明」への「賛同」などを理由とした、会員への濫用的懲戒請求について、同会の篠塚力会長は11月19日、弁護士会の立場を明確に表明した声明を発表しました。

     「当会のみならず各弁護士会が発した意見書や会長声明をめぐって、個々の会員が懲戒請求されることは、筋違いと言わざるを得ない。私たちが、各種意見書や会長声明を発するのは、弁護士が人権の擁護と社会正義の実現を使命としていることから、多数決原理の中で決まった立法政策であっても少数者の人権保障の観点から問題があると考える場合である。そのことが懲戒の理由になることはあり得ない」
     「自らの依頼者の人権擁護活動に粉骨砕身尽力している会員が、その活動によって攻撃を受けることは由々しき事態である。弁護士の人権擁護活動が攻撃にさらされれば、人権侵害の救済を自ら求めることができない市民の人権を弁護士が守ることが困難になりかねない」
     「懲戒制度は弁護士自治の根幹をなすものであることを踏まえ、『何人でも』請求できるものとされているが、当然ながら請求者にはその責任が伴う。懲戒請求者の氏名は懲戒請求を受けた会員に反論の機会を与えるために対象会員に開示されるが、当会としては、濫用的懲戒請求の大量発生を踏まえ、必要に応じて本人確認書類の提出を求めるなどの懲戒制度の正常化へ向けた運用の改善を行う予定である」

     同様の弁護士会の声明をめぐり、2017年にブログでの呼びかけに応じたとみられる約13万件に及ぶ大量の懲戒請求が起こされた問題で、各地で対象弁護士が起こした損害賠償請求の中、同会会員の一人が起こした訴訟が10月29日に最高裁の原被告双方上告棄却で終了。懲戒請求者に損害賠償を命じた二審判決が確定したことを受けたものです。

     大量懲戒請求に対して、個々の対象弁護士からの法的手続きによる反撃という形が出でくるなかで、弁護士自治への攻撃ということに着目するのであれば、会員の利益擁護の観点からも、個々の会員の対抗手段に委ねるのではなく、会がもっと前面に出て、会員の盾になるべきではないか、ということを以前書きました(「大量懲戒請求が投げかけた課題」)。

     その意味で今回の声明は、、個々の会員の活動を擁護するという立場から、具体的な運用改善への姿勢を会が示している点で、評価できる内容だと思います。ただ、今回の会長声明は、会の声明や意見書をめぐる、個々の会員についての懲戒請求を「筋違い」としながら、その理由を弁護士会の使命と結び付けた、それら会のアクションの意義を挙げるにとどめています。したがって、会として使命にのっとった正当な活動である以上、それへの「賛同」を会が懲戒対象として取り上げるわけがない、といっているようにとれます。

     しかし、会活動をめぐる個々の会員に対する懲戒請求の「筋違い」をいうのであれば、既に司法判断でも示されているように、そもそも会活動と会員の思想・信条は全く別のものとして、切り離して考えるべきことをここで改めて確認してもよかったのではないか、という気もします。あくまで会の意思としての行動は、必ずしも全会員の思想・信条は背景としていない。したがって、賛同しようが、反対しようが、会活動との関係で見る限り、個々の会員は懲戒対象になり得ない、と(「弁護士会が『政治的』であるということ」)。

     声明は、懲戒制度を自治の根幹であるとして、その濫用、あるいは不正常な運用による影響を懸念する立場にとれます。それはもちろん正論なのですが、一方で、そのこと自体は不当な請求に対する弁護士会の毅然とした姿勢によって、なんとでも克服できることのようにも思えるのです。あえていえば、今、不当懲戒請求よりも、弁護士自治を脅かしているのは、それを現実的に支えている会費問題を含めた、会員コンセンサスの方ではないでしょうか。

     そうだとすれば、今、弁護自治の意義を社会に訴え、その理解を求めることもさることながら、むしろ弁護士自治・強制加入制度の自覚のもとに、内向きに会が会員に対して、何をやっているのか、どういう筋を通して、その活動に賛意あるいは了承を得ているのか、ということが、その存続にとって重要になってきているのではないでしょうか。それは、ある意味、「正当に」、組織として機関決定を経ているかどうかの問題に止まらないというべきなのです。

     声明は、「少数者の人権保障の最後の砦である司法の一翼を担う弁護士として、懲戒制度を正しく運用し、弁護士法の定める使命を全うしていく所存」として、これを締め括っています。会そのものが、かつてのような会員の拠点意識と、それへの暗黙の了承で成り立っていたような時代ではなくなりつつある今、こうしたメッセージだけで、弁護士の意識が束ねられ、異論なく自治が支えられることもない、という自覚もまた、弁護士会主導層には求められているように思えてなりません。


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    No title

    逆にこういうこともありますからね(音声あり)
    説明怠り不適切な返信…78歳男性弁護士が9回目の懲戒処分 現役弁護士で全国最多 香川
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191205-00010007-ksbv-l37

    No title

    しかし主流派以外の路線なぞ、今まで存在したでしょうか?
    (某宇○○氏ですらあの体たらく)

    今回の総本山選挙は誰に一票入れれば良いのやら。

    入れても当選できなければ意味がない。

    No title

    吉田先生が誤解されているわけではありません。吉田先生のコメントはすっとばして、無関心層と呼ばれるが実際には弁護士会が危ない集団なので合理的に考えて関わらない人たちは、弁護士会が不要だと思っています。

    弁護士会の負の側面を直視できる人たちは、正負を比較考量します。知性も資力もある人たちが相次いで請求退会している。そんな弁護士会に未来はありません。

    No title

    筋違いのコメントが横行しています。

    私は日弁連を批判しているのではなく、日弁連主流派の路線を批判しています。

    弁護士会や日弁連をつぶした方が良いというような意見、弁護士会の強制加入廃止の意見には、はっきり反対です。

    No title

    率直に言って弁護士会の思考停止ぶりと恐怖統治はカルト教団そのもので、北朝鮮とは親和性があるのでしょう。こんな団体に高額な会費を払い続けることが弁護士で有り続ける為の条件であるというのは、本当に不合理です。

    No title

    日弁連の会長声明に対し、個々の会員に対する懲戒請求で対抗するのはもちろん違法行為ですが、日弁連がそのような声明を出すことの当否について、「弁護士自治」の一言だけで思考停止し、無限定に正当化する姿勢は相変わらずですね。
    朝鮮学校については、あからさまに金正恩を翼賛するような洗脳が、そもそも教育と呼べるかという問題がありますし、教育のために交付された補助金が北朝鮮の軍事費に流用されている疑いもあるため、「人権」の一言だけでその当否を判断することは困難です。弁護士会として朝鮮学校の問題に口出しすべきかどうかは、会員内にも賛否両論があるはずです。
    一般の会員からも国民からも「おかしな人たち」とそっぽを向かれながら、「私たちは正義のために戦っている」と、独り自己満足に浸っている日弁連。もはや業界外部の人間となった私から見れば、このような日弁連の態度には失笑するしかありません。

    No title

    こんな時に、
    【独自】弁護士の後見不正相次ぐ、日弁連が弁済制度…3千万円まで補償
    https://www.yomiuri.co.jp/national/20191120-OYT1T50071/

    ますます弁護士に負担をかけることをするんですからねェ。

    No title

    これも枝葉末節だけを捉えても、何も解決にならないと思います。

    日弁連は、「弁護士自治を守るため」と称して、国民、市民に迎合する政策を展開してきました。司法審路線は、それに拍車を掛けました。これが濫用的懲戒請求現象の淵源です。

    かつて司法反動と言われた1970年代に、日弁連では何が起きていたか。そこからたどる必要があります。その問題の理解には、竹中労他編著「法を裁く」を一読することが有益だと思います。

    要は、弁護士を守るべき弁護士自治に主流派は穴を開け続けてきたということです。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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