法曹養成論議「反省」の行方

     4月14日の参院法務委員会で、民主党の前川清成議員(弁護士)が法科大学院の問題で、江田五月法務大臣の見解を質しています(法務委員会会議録)。

     この日の前川議員の指摘で注目できることが、2点ありました。ひとつは法科大学院の教員が、実務家は概ね2割以上という現状の基準はおかしいのではないか、ということ。8割は学者でもかまないし、2割も司法修習を経て法曹になった実務家とは限らず、実務経験があればいいことになっている。つまり、何が言いたいかと言えば、修了者7、8割が司法試験に合格するという法科大学院がそれでいいのか、ということです。

     もうひとつは、法科大学院の学費の問題。「給費制」よりむしろここが問題だろうと。大学を卒業して、国立大学であればおよそ年間80万円、私立大学であればおよそ130万円、原則3年間、この授業料を払うことができる家庭の子供でないと、そもそも司法試験を受験することさえ認めない仕組みは間違いではないかということです。

     そして、この質疑で決定的に重要ななことは、次の言い方に凝縮されていると思います。

     「この法科大学院を卒業しないと司法試験を受けさせない仕組みだとか、あるいは法科大学院の教員の8割は学者であっても構わないとか、ちょっと余りにもその法曹養成が大学教員の側の既得権益を擁護する形で、ねじ曲げられてしまったのではないか」

     さて、注目の江田法相の答弁ですが、その切り出しは、なんと偶然にも、先日のこのブログでも触れた読売ホールでのパネルディスカッションの話でした(「『改革』への期待感という幻影」)。

     まあ、江田法相の答弁自体は、読んで頂いた方が早いとは思いますが、結論からいうと、前川議員の指摘に対して、どういう考えなのか、はっきり分かりません、というか分からないような答弁をした、ということだろうと思います。

     要するに、前記集会の盛況ぶりは、当時の司法に対する国民の不満の現れ、そうしたなかで、司法制度改革審議会はプロセスの法曹養成ということで法科大学院を中心に据えた。これは揺るがせないが、7,8割合格、合格3000人達成が困難になってきた現実を見据え、制度設計を見直しなどをやらなきゃならない、ということで今後、政府で作る法曹養成のフォーラムで議論させて頂きたい――。

     この説明ですと、果たして前川議員の指摘の点は、なんらかの対応がなされると解釈できるのでしょうか。そのまま、受けとれば、肩すかしのようにも取れます。

     この日、自民党の古川俊治議員(弁護士)も質問に立ち、年間3000人合格の目標未達成を受け、今後について、江田法相の見解を質しています。

     江田法相は未達成をとても残念がり、司法審の目標だったことを確認したうえで、「何が何でも3000というわけではなくて、やはりそこはいろんな工夫をしながら、しかし法曹人口を増やしていく、日本の法的サービスというのをもっと層の厚いものにしていくという努力はしていかなきゃいかぬ」と。

     3000人はともかく、増員方針は増員でということか。と思った矢先に次のようなことをおっしゃいました。

     「合格者数というのはいろんな状況の中で変動していくものでありまして、現段階で合格者数について言及することはできないものでございます」

     はやばやと2010年ころ年間3000人という目標を掲げた司法審はなんだったんだ、と突っ込みたくなります。「いろいろな状況の中で変動していく」合格者数に言及した司法審はどういうことになりましょうか。司法審の失敗の反省に立ってということでしょうか。その割には、目標未達成に残念がることしきりなのですが。

     さてさて、これからどういうことになるのでしょう。以前にも書きましだ、現在の法科大学院の問題は、法曹養成を大学運営という別の思惑の絡むところにゆだねることに、あまりにも慎重な議論がなかったことにも一因があるように思います。合格者数にしても、現実から逆算した実現可能性が本当に測られた方針だったのか疑問です。

     これからの議論は、果たしてこうした「改革」の反省に立って進むのでしょうか。それとも、依然と変わらない「期待感」がつながっていくのでしょうか。


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    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


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