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    問われる弁護士会主導層の現実感

     弁護士会活動や自治というテーマについての、会主導層の姿勢の中に、しばしば、ある共通した違和感を感じることがあります。それは、言ってみれば、会員に理解を求めるという一方的なアプローチばかりが目につき、その姿勢の中に、会員の現状を理解するとか、会員の声を踏まえるという発想が希薄なことへの違和感です。

     こう書けば、それは弁護士会の会内民主主義の問題とも括れそうですが、それもさることながら、それ以前に、彼らはまるで思い込みのように、常にある前提に立っている。つまり、会員は本質的に「理解する(している)」と。弁護士会活動や自治の重要性は、会員は分かっているはず。分かっていればこそ、他の要素を排しても、基本的に弁護士会の主張を、「理解する」道を選択し、支持するはずであると。

     時に、まるで「弁護士たるもの」という前置きを付けそうな断定調の、その前提を踏まえた切り口には、それが会員から、もはやよそよそしいものにとられる、あるいはとられている、という懸念が、全く感じられません。前記テーマについて弁護士会は、常に市民の理解あるいは信頼を生命線のように語ってきましたが、「自治」である以上、それを支える会員の理解もまた、生命線であっておかしくないはずです。

     当ブログのコメント欄でも一部紹介されていましたが、東京弁護士会の機関誌「LIBRA」7月号に掲載された、同弁護士会前年度会長である安井規雄弁護士のインタビュー記事が、一部ネット上でも話題になっています。このなかにも同弁護士個人の発想にとどまらない、まさに前記した違和感につながる、典型的な会主導層の発想ととれるものが登場してきます。

     「── 弁護士会の活動には無駄が多いと感じますが、いかがでしょうか。
      そういう指摘はあると思います。我々弁護士の使命からしますと、自分の事務所を経営できればいい、ということだけではないと思います。すなわち弁護士には、国民の基本的人権を守り、社会正義を実現するという使命があります。それがほかの団体との大きな違いでもあるのではないかと思います。 誇りを持って、我々はこの使命をもっと自覚する必要があると思います」
     「──現在,弁護士を取り巻く経済環境が厳しくなってる中で、いろいろな活動(たとえば、憲法改正反対運動など)に会費を使っていてもよいのかと疑問を感じる会員も少なくないのではないかと思いますが。
     たしかに、そういう指摘はあります。もっと我々の業務拡大のためにお金を使ってもらいたいという話に行きがちかもしれません。考えはいろいろあると思いますが、憲法改正が恒久平和主義や立憲主義に反する方向に向かった場合、国民の平和な生活はどうなるのか。国民の基本的人権を擁護し、社会正義を実現するとの弁護士の使命からして、国民に問題点を指摘していくという公的活動は大事だと思います」
     「──弁護士会の会務活動に無関心という会員も少なくないと思います。特に近時は、弁護士を取り巻く経済環境が厳しくなっておりますので、会務活動にエネルギーを割く余裕のない会員も少なくないと思います。今後ますます会務活動離れが進んで、いずれ弁護士自治が成り立たなくなる日が訪れるのではないかとも思いますが。
     そういう指摘はずっと昔からありますね。ただ、私が思うには、一日24時間あるわけですね。24時間でも使えるのは12時間ぐらいかもしれません。それを100%としますと、7割もしくは8割ぐらいは自分の仕事やプライベートな時間にあてて、残りの2割、3割ぐらいを弁護士会の活動にシェアしてもよいのではないかと思います。 弁護士は、国民の基本的人権を守り、社会正義を実現するんだという崇高なミッション(使命)を負っており、このことから、弁護士自治を与えられているわけです。そういうことから考えると、会務活動に時間を費やすことは大事なことと思います」

     この質問者は、ある種の問題意識を持って質問している印象を持ちます。しかし、それに対して前年度会長の口から繰り返し出てくるのは、「使命」ということです。質問で振られている、会員の現実的な問題について、それは弁護士の本来的な「使命」への自覚によって乗り越えよ、と。逆にいえば、前年度会長の立場からすれば、それで会員が理解する、あるいは「なんとかなる」という前提に立っているととれてしまいます。

     これが会員側の無理解を前提とした、メッセージであるとすれば、それ自体が会員の現実を理解していない、ということになるかもしれません。いうまでもなく、観念的には多くの会員は、「使命」も弁護士自治も、その重要性は理解していると思うからです。そうではなく、それらのコストやメリットについて、会員がそれこそ真剣に、深刻に考えなければならなくなっている。その前提が、この回答にはないのです。仕事とプライベートを差し引いた残りの2割、3割とか、「崇高なミッション」だからとか、どれも「やろうと思えばできるはずじゃないか」といっているようにとれてしまいます。質問者のいう危機感とその現実要認識の前提とは全くかみ合わず、それらはもはや有効な回答になっていないといわざるを得ません。

     前年度会長個人の見識を問うたり、その発言の揚げ足を取りたいのではありません。繰り返しますが、ここに私がみてきたた弁護士会主導層に共通する姿勢が見て取れるということを言いたいのです。

     なぜ、彼らは、ある意味、平然と、こういうスタンスをとれるのでしょうか。やはり決定的に彼らが無視しているのは、「改革」の影響といわなければなりません。増員政策の失敗による弁護士の経済環境の激変。それが実は弁護士と弁護士会の関係も変えている現実です。コストとメリットを一切考えず、弁護士会活動と自治を認める、余裕も寛容さも、多くの弁護士の「改革」のもたらした状況のなかでは失われている(「弁護士会費『納得の仕方』から見えてくるもの」)。

     かつてのように、「使命」を掲げるだけで、たとえ積極的に会活動に参加しなかったり、必ずしもそれに賛同しない人も含めて、会員が許容し、承認した関係。主導層はあくまでそのころの発想で、「なんとかなる」と言っているようにみえますが、それはとりもなおさず、「改革」の失敗を直視せず、依然、かつてのような発想が成り立つ弁護士の状況を、この先に描こうとしていることを意味します。

     「改革」路線に反対し、すぐさまこの弁護士の供給過剰状態を解消すべきとする会員に対しても、また、そうではなく、「改革」がもたらした競争状況のなかで、それを前提として、もはや会の存在意義を正面から問うべきだとする会員に対しても、前記したような会主導層の姿勢は、よそよそしいものになりつつあるのではないでしょうか。いずれにしても、会員の利益に、もっと向き合わない限り、弁護士の使命達成も、志望者の回復もなく、自治の維持もますます困難になる、ところに弁護士会は来ている。その認識に立てるかどうかが問われているのです。(「『弁護士自治』会員不満への向き合い方」 「『新弁護士会設立構想』ツイッターが意味するもの」)。  

     「現状を理解しているかどうかの問題ではなく、理解するつもりがあるかどうかの問題ではないか」。弁護士会主導層の現実について、こう語った人がいました。前記インタビューにもあるように、「指摘」は重々分かっている。分かったうえで言っているというのであれば、少なくとも引用した最後の質問者の未来予想図は、より現実的なものとしてとらえなければならないはずです。


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    テーマ : 弁護士の仕事
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    No title

    >日本国内の大手事務所、乱れてませんか?

    大手事務所に限ったことではありませんよ。
    問題はばれるよう…………おっと誰か来たようだ。

    No title

    自由と正義。また岩倉先生がやってくれた(元・西村あさひ、現・TMI。投稿者の知る限りで3回目。)。かと思えば、2009年登録弁護士が親族宅に侵入して逮捕(実名報道。現・西村あさひ)。不倫による損害賠償請求なども騒がれた。日本国内の大手事務所、乱れてませんか?

    No title

    記事内で引用されている『新弁護士会設立構想』のツイッターも、結局はだらだらツイートしただけで今は中断中。
    しょせんそんなものさ……単なる総本山か何かの選挙対策のための釣りアカか。

    No title

    https://twitter.com/TAS6284/status/1150454206421094400
    >ツイッターで法テラスの悪口が広まった結果、ここ数年で新人弁護士が法テラスと契約をしなくなっているんです。そういったストライキ的な形の抗議の方が政治的な活動より効果的と考えている弁護士が多数いるんです。ツイッターだけでなく、実際に法テラスと契約するなと行動してる弁護士も多いのです。

    No title

    全体の約半数を占める低所得・赤字弁護士は、法テラスを請け負っている。だから、転職スキルはつかない→転職できない→ここにとどまる限り、一生搾取される。

    まるで、外国人実習生。

    逃げて。一刻も早く、逃げて。

    No title

    弁護士会がやらなくても、会員がどんどん新しい事業を考えている。
    例えば
    https://twitter.com/noooooooorth/status/1149965475960373248

    会は変わらなくとも人材は変わっていく。良い方に。

    No title

    立候補にも選挙活動にも、ひどく金がかかる。
    お金と組織をバックに持たない無党派が勝つのは、無理。

    「金持ち勝つ」
    弁護士会の選挙の現実。
    だから弁護士会は、有閑倶楽部の政治ごっこになる。

    このインタビューにもある通り、彼らは二言目には、
    「強制加入絶対守れ、弁護士自治がどうなってもいいのか!?」
    と言う。じゃぁ、司法制度改革推進派が目指すアメリカは、何?
    ABAは任意加入。NY州もね。
    結局、ヒマ人が集まって、政治ごっこを、他人のしかも貧乏人から取り上げた金で、やりたいだけでしょ。

    No title

    文句はともかく役員を正当な選挙で選んでいるのはほかでもない会員。制度や人材を変える気もないなら自業自得としか。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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