伝えないマスコミ論調の壁

     大マスコミの報道のスタンスは、時として、ありのままの現実を伝えることよりも、ある種の意図を優先させます。もちろん、紙面づくりにしても番組にづくりにしても、見方によっては、すべで意図的という評価の仕方はもちろんできるのですが、伝えない意図、伝える意図をたどっていくと、どうしてもありのままの現実を国民に伝えるということとは、別の目的があるように考えられることがあるのです。

     この震災と原発事故以前の、大マスコミの菅民主党政権への論調は、「朝日」を筆頭に、総じて「甘い」と思っていました。さすがに最近は違ってきましたが、明らかに指向性があったと思います。民主党政権を擁護したいのか、はたまた菅直人を守りたいのか。

     なぜという疑問について、先日、政界に詳しいジャーナリストと話をしましたが、彼いわく、そこにはやはり「小沢」というキーワードが、はっきり関係している、とのことです。「小沢一郎」の登場を真剣に避けたいマスコミの本音を聞きました。

     小沢報道から、もちろん逆算できることとはいえ、大マスコミの意図をそこまでのものと見ない方もまた沢山います。すべての「陰謀」も「不都合な真実」も、大衆の「まさか」に逃げ込めることもまた真実なのです。

     過去の「小泉人気」や「郵政選挙」だって、そういう見方ができます。

     裁判員制度や法曹人口増員など、およそ司法改革をめぐるマスコミ論調についても、明らかに指向性を持っています。もちろん、「改革」を推進するという論調なのですが、その意図を見てしまうと、果たして「国民のため」と括りきれるのか疑問に思ってしまうのです。なぜなら、伝えるべきことの方が「国民のため」になると思えることを、伝えていないように見えることが沢山あるからです。

     裁判員制度は、なぜ「強制」されなければならないのか、なぜ「強制」が許されるのか。こうした形での「強制」導入の前例は、問題にならないのか。国民の同意は、この場合、後付けということで構わないのか。「裁きたくない」という思想・信条は、なぜ、犠牲にされていいのか。国民は、本当は誰に裁かれたいのか。「統治客体意識」という描き方は、伝えられているか、などなど。

     それこそ、およそ「民主主義」ということでいえば、当然、投げかけられていいことが投げかけられていない現実は、これに大衆の予想されるリアクションが、あるいは「改革」推進にとって、「不都合な真実」をはらんでいるからです。

     弁護士の増員にしても、その描き方は、増えれば便利になる、「国民のため」論で描かれますが、その先について「不都合な真実」は伝えられているでしょうか。まだまだあるニーズの話も、競争で現実的にこれからどういう弁護士が増えるかも、弁護士増員の利を求めているのが、本当はこの社会のどういう層かも、大衆はそんなに司法におカネを投入する余裕がないことも、「二割司法」という描き方の極端さも、増やさなければいけない裁判官の話も――。

     国民は馬鹿ではない。馬鹿でないからこそ、推進者にとって、「世論」はなんとしても取り込まなければならないものです。国民にフェアな材料を与えることは、時に推進の足を引っ張る「世論」形成につながる、それを恐れればこその話です。やぶへびな報道は、存在しないのです。

     もちろん、「世論」を偽装することだってできます。取捨された街の声も、識者のコメントも、もちろん意図のもとに組み立てられ、伝えられることもあります。公平をイメージするような、巧みさを伴って。

     逆にいえば、フェアな世論形成の前に、大マスコミが立ちはだかるという構図があるということです。

     しかし、インターネットを通して状況は変わりつつあります。別の見方、別の意見に大衆が、その気になれば、アクセスすることができます。もちろん、その玉石混交の情報のなかで、それを国民が取捨することは、容易ではありませんし、そこがまた別の意図を持つ人達の世論形成の場になることも、目の当たりにしています。今後どういう状況をこの環境が生み出していくのかは、不透明ではありますが、記者クラブ制度に風穴をあける動きとともに、少なくともマスコミと大衆の関係を変えていく可能性があります。

     第二次司法改革の話が出ていますが、フェアな判断材料が国民に提示されるかどうかという意味で、このことは今後も、重要なポイントになるだろうと思います。

    投稿サイト「司法ウオッチ」では皆様の意見を募集しています。是非、ご参加下さい。
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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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