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    弁護士会請求退会者数増加という現実

     弁護士登録者数の動向をウオッチしている白浜徹朗弁護士が、こんなショッキングなタイトルの記事を自身のブログに掲載し、話題なっています。「弁護士は年間で400人近くが自主廃業することが定着した」。それによると、日弁連の機関誌「自由と正義」に掲載された請求退会者について整理してみたところ、今年は382人と、昨年の358人から24人増加し、同弁護士の統計では過去最多。うち270人が弁護士登録3万番台以上で、若い弁護士の廃業が増えているということが示された、というのです。

     弁護士登録番号3万倍台以上というのは、ほぼ司法修習56期以降、弁護士登録15年目よりも弁護士歴の若い会員で、2017年版の「弁護士白書」によれば、昨年3月時点で、既に全会員の約57%を占めています。白浜弁護士は、2014年以降、請求退会者はは若干減少傾向にあったが、今年は増加に転じたとしています。前記「白書」と同弁護士のブログの数値とは、統計基準点の違いからか若干異なりますが、「白書」のデータでも2014年以降請求退会者数は頭打ちのようにとれます。同データによれば、2007年から2016年の間に、請求退会者はほぼ倍増、一方、この間に会員数も1.6倍に増えています。

     同弁護士は、弁護士急増政策開始前には、せいぜい年間50人に満たない人数しか退会していなかったことから考えると、年間400人近い弁護士のが自主退会は、弁護士の供給過剰を裏づけ、2015年から2017年まで弁護士の総人口が増えているなから退会者の減少傾向があったことは、司法試験合格者数を減らしたことが影響しているとみて、「司法試験合格者数は更なる減員が求められている」と結論付けています。

     確かに、こうした見方はできます。ただ、弁護士のなかには合格者減の必要論を導き出したこととの関係で違う見方もあります。それは、この請求退会は、企業などの組織内弁護士が「法曹有資格者」で足りる、という判断のもとに選択したものが含まれている、という推測を前提にするものです。高い会費を弁護士会に支払う意味がもはやない、と判断したものということもできます。

     そうだとすれば、弁護士登録を外したとはいえ、「自主廃業」というイメージとは大分異なってきますし、これをもって直ちに司法試験合格者減員が必要という結論にはつなげられない、という見方も出てきそうです。いうまでもなく、請求退会は単に弁護士資格に止まらないということしか意味せず、「弁護士」という資格にこだわらなければ、「法曹有資格者」というニーズは存在することになるからです。

     しかし、そうだとしても、問題は残ります。端的にいって、増員政策によっても、弁護士のニーズが顕在化しないことが決定的になった段階で、新法曹養成をめぐる議論で浮上してきた「法曹有資格者」という捉え方に対して、「改革」と弁護士会の姿勢が依然、ぼやけているということです(「『法曹有資格者』への変化」)。弁護士職務基本規程など弁護士を拘束するルールから外れる「有資格者」が、「企業内弁護士」に変わって企業利益獲得にまい進する事態、弁護士登録不要という弁護士会離れがもたらす弁護士自治・強制加入への影響、さらには今後の弁護士そのものの増員の是非、あるいは「改革」の弁護士増員政策はなんだったのかという問題――。

     日弁連・弁護士会が増員政策の向こうに、いまや弁護士活躍の最も期待すべき地平のこどく強調する、「組織内弁護士」の領域で、既に弁護士資格を離れる「法曹有資格者」が登場している事態を、弁護士会は依然直視しようとしていないのではないでしょうか。

     日本組織内弁護士協会の調査によれば、今年6月現在で、企業内弁護士は2千人を超え、全国の弁護士の5.4%に当たる2161人と、その数は過去11年間の間に10倍以上に膨れていますが、全体の約76.5%が、ほぼ弁護士経験10年以内の修習60期以降の若手です。組織を目指した若手弁護士が、弁護士資格の必要性を見出せなくなり、次々と弁護士会に見切りをつける事態を、依然、増員基調の「改革」を容認している弁護士会主導層は、果たしてどこまでこの先の未来に描き込んでいるのでしょうか。

     もっとも、弁護士請求者数からいわれていることは、いずれも、あくまで推測でしかなく、詳細な退会者の追跡調査の結果をもとにしたものではありません。なぜ、日弁連・弁護士会はそれをやろうとしないのか。事態をそれほど深刻に見ていないことからの、やる気のなさによるものなのか、それとも、やってしまうと、認めたくない不都合な現実を見ることになるからなのか――。そんな深読みもしたくなります。


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    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事

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    No title

    他の士業との比較をしてみないと何とも言えませんな。個人的には、消費者の選択肢が増えていいと思いますが。

    No title

    弁護士を増やせば増やすほど需要が掘り起こされるのだ、と言い張ってた奴ら、どうしてます?
    そんなもん、普通に試験やってたらいつまでも受からない・見込みがあってもいつ受かるかわからないコネ野郎を何が何でも合格させて企業法務とかいう儲かる事務を未来永劫自分たちのお仲間だけで独占し続けるのだ! という卑しい利権根性を正当化したい一心でデマカセ並べてるだけ、ってことぐらい、よほどの馬鹿でなけりゃ察しがつくだろと思いますが、なんでそいつらのお仲間でもない新聞社雑誌社にいたるまで、いつまでも迎合をやめないんでしょうかね?

    司法試験に受からない法務博士に法律事務とやらをやらせたいなら、簡単でしょ。そいつらが事件性必要説を認めればいいだけ。法廷沙汰どころか法的紛争でもない、訴訟法どころか民法も知らんで務まるのに語学力だけ必要な仕事にばかり需要があるんでしょ? じゃあ弁護士資格がどうして必要なの。まして、訴訟法も民法も身についてない人間に法的紛争処理の独占資格たる弁護士資格を寄越せなんて、子供でも「そんなのおかしい。本末転倒だ」ってわかるだろうに。どうせ手術も診察もしないからという理屈で、人体構造すら理解してない人間に医師免許認めろという病院長がいますか? 詐欺師がデタラメ並べるのはまだわかりますが、なんでお仲間でもない人がどいつもこいつも迎合をやめないのか。私にはどうしても理解できません。

    No title

    詳しくは、弁護士白書2018年版を見ような
    https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/statistics/reform/fundamental_statistics.html

    このうちの
    https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2018/1-1-5_tokei_2018.pdf
    にも
    >. 登録取消請求の理由については、高齢、健康上の理由、任期付公務員としての就業、留学、出産・育児等が挙げられる(ただし、詳細な申告は義務付けていない)。
    とあるわけだ。

    No title

    ツイッター議論の受け売りになるが
    寧ろ弁護士登録を抹消したほうが、前前前前の記事
    http://kounomaki.blog84.fc2.com/blog-entry-1113.html
    のように、懲戒・会務・会費のリスクとは無縁に活躍できる
    と考える世代もいるわけで

    No title

    ①留学・進学
    ②法務部などに就職
    ③出産など個々の家庭の事情によるもの(理由も記載のこと)
    ④廃業(理由も記載のこと)
    ⑤(自然)し
    ⑥入院・病気療養(病名も記載のこと)
    ⑦その他(じ○)
    ここまでアンケートを詳しくとらなきゃならないだろうし、そんなことを言ったら全員「④廃業(弁護士会費が高額のため)」って書くに決まってるだろ。無意味なアンケートに弁護士会の貴重な人件費を割くものではない。

    登録番号が保持できるのだから、一度退会して他の道を歩いてみるのも良し。
    幸い今は、弁護士会の登録にも「保証人数人必要」という時代ではなくなっている。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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