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    法科大学院制度擁護派の分裂と旧試「欠陥論」

     法科大学院制度の導入は、旧司法試験体制「欠陥論」の危うさや矛盾を、ある意味、力づくで越えた観があります。「点からプロセス」と強調されながら、旧試体制でも司法試験と司法修習、さらにその先のOJTというプロセスの実績が存在していたこと。さかんに批判された「予備校依存」にしても、その現実的な影響については不透明なところがあったこと。そして、何よりもこの制度を導入しようとした時点で、それを推進しようとする者を含めて、現役法曹が「欠陥」養成過程出身となってしまうこと――。

     結論からいえば、以前も書いたように、無理と自己矛盾を抱えかねない、この「欠陥論」を、「改革」主導者は、新プロセス必要論と法科大学院待望論につなげようとしました。その結果として、ある種の、潔さとして受けとめられるかもしれない、自らもそこから生まれてきたことを脇に置いた同業者の質批判。一発試験、修習、その先の法律事務所での修養では得られない「実務教育」を、法科大学院で実現できるというような期待感への誘導。現実に司法試験が残ることを知っていながら言われた脱試験の効用や法曹の「閉鎖性」の強調が行われたのでした(「旧試法曹『欠陥』論からのハードル」)。

     しかし、一方で現実的には、法曹界や大学関係者のなかにも、受けとめ方の温度差がありました。完全にその気になっている人、この部分はあいまいのまま、「現状をより良くする」くらいに読み変えて支持する人、懐疑的ながら沈黙する人――。そして、結局、法科大学院制度は、どこかこの自己矛盾を抱えたままの、導入したい側の論理と、それを取り巻く状況を、今日まで引きずってきたようにみえるのです。

     いま、法科大学院制度擁護論が分裂的な状況に立ち至っています。志望者減という深刻な状況を前に、司法試験受験と資格取得への「時短化」による時間的負担軽減で、事態打開を図ろうとする政府の制度変更の方向に対して、制度擁護派のなかから、法科大学院を法曹養成の中核として、いわば必須プロセスとしてきた趣旨への背理を指摘する反発が出ているのです。日弁連は、早々に条件付きで政府の方向で賛成に回り、会内擁護派の分裂を極力回避したい意向をうかがわせています(「法科大学院在学中受験『容認』という末期症状」 「『条件付き賛成』という日弁連の選択」)。

     こうしたなか、制度変更反対派が11月26日に行った記者会見の模様が報じられています(弁護士ドットコムNEWS)。そして、その中で、会見を開いた側の大学関係者の一人が、政府の制度変更の方向に関して、次のように述べたことが伝えられています。

     「どういう法曹を育てるかということ考えず、司法試験合格で法律家になれるという歪んだ考え方ではじまっている」

     この記事からだけでは、前後の文脈が分かりませんが、この発言の引用が正しければ、ここに前記「欠陥論」を当てはめるのは容易です。彼のなかで、司法試験と司法修習の旧プロセスは、まさに今でも「どういう法曹を育てるか」を考えず、「歪んだ考え方」で成り立っていたもの(あるいは、そうとしなければならないもの)であり、制度変更の方向は、それへの回帰であると。

     しかし、そう考えると、制度変更の方向の現実性は、「欠陥論」の敗北を意味しているようにもとれます。必須プロセスを経ない例外への妥協は、旧試「欠陥論」が裏打ちしたはずの、新プロセス必要論の根拠を弱めるとともに、「欠陥論」も根本的に弱めてしまう。「それでも別にいいじゃないか、人を集めるためだし、制度を支えるためなのだから」と言った瞬間に、制度導入のためにかざした旧制度「欠陥論」は何だったんだという話になって当然のはずです。

     その意味では、何があっても「理念は正しい」と強弁してきた側が、「欠陥論」にしがみついて、前記のような強い、露骨な表現をすること自体は、理解できる話ではあります。

     しかし、彼らは自覚しなければなりません。法科大学院から離れて行く、あるいは離れていった志望者たちは、とっくにこの「欠陥論」など信じていないということを。これまでのような「欠陥法曹」にならないためには、法科大学院に行かなければならないとは誰も考えていない。逆に言えば、それこそが、制度が「欠陥論」の正しさとともに、社会に証明できなかった新プロセスの「価値」であるということを。

     制度変更反対論者は、政府の方向を、「制度の趣旨をかなぐり捨てている」かのように批判しますが、「欠陥論」にしがみつく、その姿は、「どういう法曹を育てるかということ」を考えていない、と相手を批判しながら、彼らもまた、制度維持のために、もはやあるべき法曹養成という発想を「かなぐり捨てている」ように見えてしまいます。


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    >「どういう法曹を育てるかということ考えず、司法試験合格で法律家になれるという歪んだ考え方ではじまっている」

    大事な考え方ですね。
    司法試験合格で(楽して稼げて、世間からエリートとして真実認められる)法律家になれるというのは歪んだ考えでしょう。
    「採算度外視で弱者のために己を削ることに喜びを覚えることこそ本来の弁護士のあり方である」というなら、そんな弁護士を育てる教育というのは仏門に入らなければそれこそできないでしょうが。利権で頭がいっぱいの方々には教えられる境地ではありませんぞ。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
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    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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