FC2ブログ

    「条件付き賛成」という日弁連の選択

     業界内で既に話題になっていた、政府が検討する、法科大学院の在学中に司法試験の受験を認める方向(「法科大学院在学中受験『容認』という末期症状」)について、早くも日弁連は10月24日の理事会で、これに条件付きで賛成することを決定しました(反対9、棄権6、賛成多数)。会員向けのFAXニュースに掲載された、その条件となる「基本的確認事項」なるものの全文が、弁護士ブログで公開されています(「Schulze BLOG」)。

     詳細はお読み頂ければと思いますが、日弁連はこのなかで、この制度変更が「法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成の理念を損なうものとならないように関係機関への配慮を求める」とともに、法曹養成制度改革全体について、「法曹志望者の多様性を確保するため、法学未修者、社会人及び地方に居住する法曹志望者への教育上の配慮」を求めたうえで、具体的条件として、概ね以下のような点を列挙しています。

     ① 法科大学院修了を司法試験受験資格とすることの原則維持と、在学中受験の例外的位置付け。
     ② 在学中受験をしない法科大学院修了者への現行受験可能期間の確保。
     ③ 在学中合格者の司法修習について、法科大学院修了の条件化。
     ④ 法科大学院教育の充実維持のための、司法試験実施時期についての配慮。
     ⑤ 在学中受験と受験までの法科大学院教育の整合性確保のための司法試験実施時期を含めた内容の検討。
     ⑥ 予備試験制度の目的と法科大学院の教育内容を踏まえた、予備試験の内容等の検討。

     この「基本的確認事項」は、制度変更を検討する政府に対し、日弁連が前記したような賛成をするための条件を突き付けているという形になっていますが、この内容は同時に、会内の法科大学院擁護派のなかの制度変更反対派に向けられていることを強く印象付けるものとなっています。有り体にいえば、法務省に要請文を提出した「Law未来の会」のような立場からの制度変更反対論を強く意識し、この前提的条件化で在学中受験容認賛成の方向で収めようとしているようにとれるのです。

     以前も書いたように、在学中受験許容という「時短化」策で志望者回復を期待する制度改正に向けられた、この制度擁護派内変更反対派の主張は、法科大学院教育修了を司法試験の受験要件にまでしてきた発想、同制度の「理念は正しい」と強弁してきた立場からすれば、ある意味、当然といっていい真っ当なものといえます。

     今回の日弁連の決定で分かることは、要は100%彼ら「理念」忠実派の意見に乗って、制度変更に反対する立場をとらず、条件付きながら、事実上制度変更の、前記「時短化」による志望者回復に期待する側に立ったということです。「基本的確認事項」は、司法試験の内容に手を付けるということを条件として挙げている点で、最も前記擁護派内反対派側の論調に配慮しているようにもとれますが、この方向を、「『ギャップターム問題の解消』に名を借りて、法科大学院制度を廃止に追い込もうとする『策謀』」といった危機感まで示した前記要請文の論調からすれば、この条件での賛成は相当に温度差があるようにとれます。

     しかし、最大の問題は、この条件の内容そのものにあるといわなければなりません。この内容から、現在の日弁連の配慮は、法科大学院本道主義者の異論には向けられていても、より現実を直視した、本質的な制度の失敗を指摘する声には、全く向けられていないととれるからです。

     そもそも今回の決定で、日弁連はまず、「法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成の理念」を掲げ、制度維持を一も二もなく前提としているわけですが、「法曹志望者の多様性」の確保が、この制度によって成功していないことを直視しておらず、あくまで制度の問題とは見ていません。「法科大学院修了を司法試験受験資格とすることの原則維持と、在学中受験の例外的位置付け」といっても、それを裏打ちするような実績が果たしてこの制度にあるのか、制度はそこまで胸を張れるのか、という視点も全く抜け落ちています。

     もちろん、いうまでもなく、法科大学院教育の現状を肯定し、「整合性確保」といった表現を持ち出して、司法試験や予備試験の方を、法科大学院教育の現状に合わせよ、というのは、盲目的といいたくなるような、存続が自己目的化した制度擁護論以外の何ものでもありません(「法科大学院制度に『肩入れ』する日弁連の見え方」)

     前記会員向けFAXニュースには、理事会での審議模様を伝える一文が掲載されていますが、その中に、日弁連執行部が今回の決定提案に当たり、「情勢を踏まえて、反対意見だけを表明することは日弁連として適切でないと考え、『十分な対応がされない限りは、容易に賛成できない』との取りまとめとしたい」という説明がなされたことが書かれています。執行部の発想のなかにある「反対意見だけを表明すること」が「適切でない」日弁連とは、どういう存在とみるべきでしょうか。提案型へのこだわる日弁連ということでしょうか。

     この「改革」で、日弁連が本質論でなく、情勢論に傾斜して選択した方針は、果たして良い結果につながったのか(「日弁連が『3000人』を受け入れた場面」)――。「改革」の教訓もまた、全く省みられていないという気持ちにさせられます。


    「予備試験」のあり方をめぐる議論についてご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「司法ご意見板」http://shihouwatch.com/archives/5852

    司法改革に疑問を持っている人々ための無料メールマガジン「どうなの司法改革通信」配信中!無料読者登録よろしくお願いします。http://www.mag2.com/m/0001296634.html

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ
    にほんブログ村

    にほんブログ村 その他生活ブログへ
    にほんブログ村



    人気ブログランキングへ

    スポンサーサイト

    テーマ : 資格試験
    ジャンル : 就職・お仕事

       スポンサーリンク



    コメントの投稿

    非公開コメント

    No title

    発言内容(建前)を真に受けるばかりでは・・・背後のファクトチェックが必要。

    例えば、今、ツイッターで、見栄を張ってでも公益活動をするのはいいことだ、とか発言して、炎上している弁護士がいる。これは、都市型公設事後処理問題から逃げ続け、瀕死の疎地事務所所長弁護士を鼓舞する立場にあり、また法テラスから利権を得ている事務所としては、当然の発言だと思う。

    うさんくさい問題に関しては、背景事情のファクトチェックなしの議論は不毛だし、水掛け論にしかならない。

    No title

    文科省・法科大学院とその周辺の関係者(最高裁、日弁連含む)がダメダメすぎるから、政府直轄になっちゃったという・・・

    No title

    別に日弁連がどうこうしなくても
    <政府>法科大学院定員を管理 負担軽減、5年コース新設へ
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181110-00000004-mai-soci
    >政府として入学総定員(今年度約2300人)の管理を行い、各大学院による定員変更を現行の届け出制から認可制に変更する。法学部進学者が学部3年、法科大学院2年の計5年で修了し司法試験を受験できる「法曹コース」創設と共に、法科大学院教育・司法試験連携法の改正案に盛り込む。遅くとも来年の通常国会に提出する。
    >連携法の改正で法科大学院が自由に定員を増やせないようにするほか、定員規模を決める際には、文科相が法曹需要などを的確に判断できるよう法相と協議する仕組みも規定する。

    ですって。
    これで「日弁連は悪くない!政府が悪い!」にできるよやったね!

    No title

    ワーキングプア弁護士さんのツイートが明言。

    >裁判所が不貞慰謝料を低く認定するのは司法の場ではなく私的制裁により解決しろというメッセージですね。あんな慰謝料じゃ誰も弁護士に依頼しないし、裁判にもしない。本人ならば職場に乗り込もうが、監禁しようが懲戒されないですからねー。刑事事件?そんなものは民事不介入と言えばいいのですよ。
    https://twitter.com/sokudokubengosi

    紛争は私的に解決しろ、面倒なんだよお前らの相手するのは、が、裁判所の本音なのかも。なら裁判所は要らない。

    No title

    法科大学院制度そのものが緩慢な死を迎えていることが客観的には明らかで、関心は薄れています。未だに騒いでいるのは、利権を掴んで離したくない醜悪な老人だけ。

    ついでに言えば、裁判の役割も縮小しています。アルゴリズムがルールにとってかわりつつあるという。フランスでベストセラーになった「ビッグデータという独裁者」マルク・デュガン、筑摩書房に、この辺の流れは詳しいです。

    最近の例で言えば、日本漫画村運営者特定問題は、裁判制度を使わず、IT企業と弁護士の間で解決されました。古いやり方だと各国の裁判を通してあれこれやるんでしょう。その時間もコストもばかにならない。ところが、国による制度の違いによって生じるコストは、削減されつつある。
    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37021530X21C18A0EA3000/

    日本の裁判のIT化もそうですが、日本の司法制度や多くの弁護士の考え方は、20年遅いんですよね。このスピード間の無さ、異常です。

    センスと能力のある弁護士に依頼できるかどうかで依頼人側のコストや成果も全然違ってくるので、裁判制度をいじるより、弁護士のスキルアップの方が大事ですね。

    No title

    旧司法試験組vs新司法試験組
    ブル弁世代vs若手世代
    給費組vs谷間世代(表現スマソ)vs復活給費世代
    +人数4万人
    ということが、一枚岩を不可能にしているから難しいんやね。
    こんだけ分断されれば無理っしょ。

    No title

    >「日弁連が『3000人』を受け入れた場面」

    あの時はN某氏のカリスマが原因。たった1人の言葉に全員その場でひれ伏した。
    今回は別にカリスマ系の先導者がいるわけでもない。民主主義が機能した場によって成立したもの。
    いいかげんに目を覚ませ。これが己の出した選択だと。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

    最新記事
    最新コメント
    最新トラックバック
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR