「歓迎」地方会コメントの真実

    日弁連新聞の4月号の「日弁連委員会めぐり」というコーナーに「小規模弁護士会協議会」が紹介されています。

     前にも書きましたが、弁護士会は、東京に3つ、北海道に4つ以外各府県に1つずつ計52ありますが、弁護士は典型的な都市集中型分布のため、弁護士会の人数にもかなりの隔たりがあります。日弁連によれば、4月1日現在、最大の東京弁護士会6443人、最小の函館弁護士会39人といった具合です。

     記事によると、この協議会の「小規模弁護士会」というのは、定義があって、「会員数が日弁連の会員総数の0.5%以下の弁護士会」で、現在、メンバーは30弁護士会だそうです。全体の約6割の会が、0.5%以下という数値は、改めて弁護士会規模格差の現実を示しています。

    協議会は、もともと任意で「小規模単位協議会」として活動してきたものが、2007年に日弁連の正式機関として設置されたものだそうで、小規模の弁護士会が抱える共通の問題を協議する組織のようです。

     議長は釧路弁護士会会員、副議長は長崎県弁護士会会員ですが、彼らに日弁連の広報室の嘱託が取材している記事でした。

     今、弁護士会のなかで大きな問題となっている増員をめぐり、地方の会には、需要に対して実質的に弁護士は既に飽和状態という見方があるのに対し、正反対の「まだまだ弁護士が必要」という増員路線を後押しする見方もあります。これは地域格差の問題とみるべきなのかどうかを含めて、この点を増員の影響という、まさしく共通の問題として、同協議会がなにを話し合っているのか――という目線で、この記事を見たのですが、なかなかそんな話が出てきません。

     悩みは、人数が少なく、高額な会費負担で、会員がみんな「多重会務者」だとか、日弁連に小規模単位会の経済助成を促す提案を行ったとかの、会務の話。「日弁連は過疎を数の面でなくしてきたが今後は質」として、大規模会と同じような活動や法的サービスの提供を行えるような弁護士会としてのシステム・拠点づくりという、どうもこれも無償のサービスの話。さらには人口増で会館が手狭とか、会員相互の関係が希薄になることによるОJТや研修の問題などなど。

     肝心の多数の弁護士が生活できる需要があるかどうかの話がないまま、なんと議長は「大変なことはあるはいろいろあるが、小規模会は大小多くの事件がある。若い人には、ぜひ地方にきてほしい」という締めくくりのコメント。微笑む正副議長のお写真の絵解きには、「弁護士は事件により鍛えられる。力を伸ばそうというのであれば、地方へ」と語る、といった具合です。

     さすがに、この記事については、黙っていない弁護士もいるのではと思っていたらば、既にブログで、しっかりと突っ込みをいれている方たちがいらっしゃいましたので、詳しい突っ込みどころは、そちらをご覧になって頂きたいと思います(坂野真一弁護士のブログ「弁護士猪野亨のブログ」)。結論は、もちろん「来てほしい」という以上、釧路と長崎については、受け皿になってくれるのでしょう、まさか「就職難」とは言わないでしょうね、修習生は釧路・長崎を狙え、ということです。

     突っ込みの重複は避けたいと思いますが、一つだけ嫌な感じがするのを付け加えると、どうもこの話になると、最後に判を押したようにこうした結論、「まだまだ必要」「ぜひおいで下さい」にもってくる観があるところです。

     これは何というべきでしょうか。機関誌「自由と正義」の企画でも、以前そんなムードがあり、そこをやはり会員に突っ込まれていましたが、これは多分に執行部方針を意識した見解を出す会員の協力姿勢というべきか、それとも日弁連機関紙・誌の編集の力というべきか、はたまた、どちらにしても統制的というべきか。

     百歩譲って、日弁連執行部にも、登場される方々にも、そんな意図がないのであったとしたならば、少なくとも読者にそうとられず、会員の当然の突っ込みを想定したものを会員に発表された方がいいと思います。もちろん対立的会内世論の現実を知る会員が、あるはずの異論が登場しない紙・誌面に疑問を持つのは当然のことですから。

     およそ統制的なものからは、実態を読み取ることはできません。紙・誌面からにじみ出るこのムードが、今の日弁連の世論状況の何を反映しているのか、そんなことも考えてしまいます。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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