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    法科大学院の数と制度「失敗」の本質

     法科大学院制度の失敗の主因を、当初の74校の乱立とみる見方は、以前も書いたように、現在まで制度擁護派が口をそろえ、公式見解のごとく指摘するところですが(「制度存続が自己目的化した『現実論』」)、主因というよりも、消極的な意味でこの見方をとらえている人は、制度に批判的な人たちにも多く見かけます。要するに参入する法科大学院の数を初めから2、30校に絞っていたならば、少なくともここまで制度がこの時点で「失敗」の烙印が押されていなかったはず、ということです。

     ただ、結論からいえば、それはそれで厄介なことだったというべきかもしれません。なぜならば、この制度がはらんだ、あるいは背負ったはずの本質的な問題はほかにあるはずだからです。半数の撤退という現実は、確かに制度設計の失敗を象徴するものとして、マスコミも含めて注目せざるを得ない状況を作りましたが、逆にそれでもそこは口実化されている。撤退という事実がなければ、もっと制度の問題は注目されず、少なくともさらに制度が延命する方向になっただけと思うからです。

     制度は本質的な問題として何を背負っていたのか――。例えば、資格試験への公平・平等な機会保障、あるいは多様性の確保の問題。なにも手を打たなければ、明らかに旧司法試験体制よりも後退する、法曹志望者への経済的時間的負担を伴った新プロセスは、そこを未修コースの存在を強調することで乗り越えようとして失敗し、いまや負担軽減のため、「学部との連携」が模索されています。その旧試体制と比較で、まず制度の敗北の現実があります。

     新制度が担ったという意味では、司法修習との関係もあります。法科大学院が司法修習の一部を担うという建て前は、増員政策に伴う物理的なキャパの問題を背景に、法曹界側を制度導入に踏み切らした現実的な要素でもありますが、制度を担う側の姿勢は、つとに不明瞭です(「Schulze BLOG」)。

     それは、研究者教員が主導する体制が、専門職を養成する機関として適切かという問題にもつながります。未だにこの新制度が、司法試験に合格していない、合格体験がない指導者が中心的に関わっているという事実には、法曹界外の人間に驚かれることがあります。「理論と実務の架け橋」という理念が、どこまで社会に対して、説得力を持つかも制度は背負っています。

     司法試験年3000人合格目標の増員政策の旗が既に下ろされ、前記司法修習の物理的なキャパとして当初いわれていた1500人のラインが、新法曹養成下で現実なものとなっているなかで、ここは経験のある実務家たちが、司法試験合格後に、志望者にとっても、合格を意識しないなかで、実務教育に集中できる体制、あるいはその充実化との比較で、やはり現制度の勝敗は語られていいはずです。

     制度は、法曹養成の中核という地位を背負いました。それは、いうまでもなく、きちっとした資格者を輩出する責任も、中心的に担う存在とての覚悟も求められていたというべきです。だから、司法試験合格率の問題で志望者が来ないとか、それと関係して司法試験の内容が法科大学院の現実に即していないから変えるべきとか、予備試験は「抜け道」だから制限すべきとか、まして取りあえず合格させても競争・淘汰させるのだから問題ないといった切り口の話は、制度が実績を上げられない「泣き言」というのが言い過ぎとしても、どこにその責任への重い自覚を読み取ればいいのか分かりません。

     資格制度を支えるということ、しかもそれを旧試体制よりも適切に、より結果を出す形で実現するというのが、この制度が「改革」という名のもとに背負ったものです。法曹養成の中核でありながら、あるべき資格制度から逆算しない、優先順位は別というようにとれる姿勢が、もし、大学運営という現実があるからだとすれば、彼らの無責任を責める以上に、そういうところに中核の地位を与え、法曹養成の運命を委ねた「改革」の責任を問わなければならないといわなければなりません。

     2、30校でスタートした制度が、どのような形で当時、期待された量産体制を構想したのか、そして、どちらにしても弁護士の需要の問題として、量産計画が壁にぶつかった後の志望者動向のなかで、この制度がどういう実績のもと、どう評価されていたのかは、想像しきれません。しかし、制度が根本的に背負ったものを考えれば、結果的に同じことになっていくことも十分に想像できなくありません。

     少なくとも、もう一つの道を進んだ現在の結果として、制度存続が自己目的化しているような、制度を支える側の姿を見て、その本性を知ってしまうと、やはり当初の法科大学院の数の問題が制度失敗の主因であるとも、また、その如何によって、現在よりもではなく、かつてよりも良い法曹養成が今頃、現実化していたとも、そのいずれも思うことができない、というのが偽らざる現実なのです。


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    テーマ : 資格試験
    ジャンル : 就職・お仕事

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    No title

    法科大学院に関しては,研究者教員が悪で実務家教員が善などという単純な二元論は成り立たない。二弁主導で作られた大宮ローは真っ先に潰れたし,地方の下位ローには自力では教授陣を揃えられないので地元弁護士会の支援を求め,その結果として実務家教員が多くなったところもあるが,司法試験の合格実績は上がらず,どんどん潰れていった。
    司法試験合格者を多く輩出している有名大学の上位ローはどこも研究者主導であり,司法試験の合格実績はむしろ研究者主導のローの方が高いとも言える。実態は,単に大学のブランド名で優秀な学生を集められたローが勝ち組になっているだけであり,結論としてはどっちもどっちである。
    また,旧試験制度と新試験制度の差も絶対的なものではない。旧試験末期の合格者数1500人時代には,合格者の質も相当に落ちており,最終的な司法試験合格者数が同数であれば,旧司法試験でも法科大学院制度でも合格者の質はあまり変わらなかったのではないかという気もする。
    法科大学院の授業内容は,8~9割くらいが司法試験の出題範囲をなぞるものに過ぎず,しかも受講生を司法試験合格レベルまで鍛えるにはコマ数が圧倒的に不足していた。そう決まった時点で法科大学院教育が実質無意味になるのは分かり切っていたことであり,誰が教鞭を取ろうが結果は大差なかった。予備校講師経験者の弁護士が教鞭をとったローでも,大勢は変わらなかった。

    No title

    更に記事は「実務家教員」にも触れていない。
    弁護士側が実務家教員まで送り込んだのに制度を変えることができなかった理由はどこにあるのか、実際どこまで各弁護士会や総本山の体制は法科大学院制度に力を入れ、一体何ができなかったのか、そこに触れないから毎回同じ論調だとしか思えない。
    そもそも総本山執行部などは任期がたった1年で入れ替わるのだからそこに責任とやらを求めても不毛であろう。責めるほうは楽ではあるが。

    No title

    >研究者教員が主導する体制が、専門職を養成する機関として適切かという問題にもつながります。未だにこの新制度が、司法試験に合格していない、合格体験がない指導者が中心的に関わっているという事実には、法曹界外の人間に驚かれることがあります。

    馬鹿馬鹿しい。そんなことを言えば進学校の教員がすべからく旧帝大に合格しているわけでもあるまい。
    塾講師もすべからく東大合格というわけでもあるまい。
    しかも、弁護士会側も法科大学院応援PT/委員会のようなものもあった。全く弁護士会側が法科大学院に今までかかわってこなかったかのようなミスリードは止めていただきたいものである。
    かかわってきたうえで今がある。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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