「ビジネス」にも「ハイエナ」にも見える弁護士像

     講談社のオンラインマガジン「現代ビジネス」にこんなタイトルの記事が出て、話題になっています。

     「原発事故の『賠償特需』」を『ポスト過払い金返還』と期待する弁護士業界」(伊藤博敏「ニュースの深層」、4月21日付)

     詳細は中身をご覧になっていただければと思いますが、言ってみればみるまでもない、タイトル通りの、多分何が書かれているかは、容易に想像できる話です。

     福島第1原発の損害賠償。現在、恭順の姿勢を示している東電も、膨大な報償額に「顧問弁護士が居丈高」に乗り出しての削減に乗り出してくる、個人として闘えはしない。そこで成功報酬で代理人を務める弁護士が登場、5万世帯分の賠償請求に加え、風評被害を含む農業、漁業、避難指示で操業不能の事業所、観光への影響を考えた損害賠償請求額は10兆円を上回る――こうした今後の予想が書かれています。

     もちろん、この記事が一番伝えたいことは、ある意味、この現実ではないといっていいかもしれません。

     「仲間の間では、『次は原発』というのが常識になっている。具体的な作業を始めている人もいるし、ウチもそろそろ準備しないと・・・」

     多重債務者の過払い金返還請求で名を売り、報酬も得た弁護士が語っている現実の方です。「特需」というくくりでも分かるように、前記状況が生む利に弁護士が目をつけているという話です。

    「交渉を重ねれば、東電の要求も手の内もわかってくるし、そうなると、対応もマニュアル化できると思う。消費者金融に対する過払い金返還請求ほどラクではないが、そちらが先細りとなっていただけに、いい稼ぎ場が確保できた」

     弁護士増員、若手弁護士の困窮、過払い返還請求。そうした今弁護士界で起こっていることを説明したうえで、「原発事故」の登場を、弁護士の期待感にあふれるコメントとともに描き出しています。もちろん、これは描き方として、災害の救済に臨む弁護士をイメージするものではありません。「原発事故」を「過払い金返還」と同様の、弁護士においしい、むしろ弁護士を救済するもののように描いています。

    もちろん、弁護士のブログをみると、ここで描かれている「あさましき弁護士」の姿にため息をつかれている方も沢山いるようです。弁護士全体が、こういう集団に見られてしまう恐れを意識しながらも、こうした現実を受け止める感想もあります。

    ただ、この記事を弁護士に対する「悪意」とみるのは、違うかもしれません。むしろ、ビジネスとして割り切られていく弁護士像とは、まさにこういうことではないか、と思うからです。筆者もそれを当然の前提として、これを単に「利」に鋭いアンテナを立てているビジネスマンの話として書いているようにも見えます。逆にいえば、ビジネス化というのは、救済をもビジネスとして換算する弁護士と社会のこうした共通認識を伴う未来のように思えるのです。

     しかし、その共通認識は、あるいはビジネスマンたちには肯定的なものであっても、大衆にとってはそうではありません。ネット掲示板の書き込みでは、この記事に登場する弁護士たちの姿に、「ハイエナ」「賢いクズの集団」などの言葉が浴びせられています。この記事の向こうには、そうした共通認識の社会が待っていることも忘れるわけにはいきません。

     「社会の隅々に法の支配が行き届くってことは、まさにこういうことなんでしょうから」

     この記事が伝える現実、確実に従来の弁護士像が崩れてきていることに嘆く弁護士のブログの中に、こんな言葉もありました。「法の支配」という言葉の誤用がたどりつく社会には、この記事のような弁護士が登場してくることも予定されているのかもしれません。

     これまでだって、弁護士にもいろいろな人がいました。ただ、これからの弁護士の未来は、サービス化、ビジネス化と引き換えに、決定的に弁護士に対する社会の目線が変わることの向こうにある、とみるべきではないでしょうか。「改革」というものが、そこまでを意図していたか、いなかったかについては見解が分かれるところだと思いますが、多くの弁護士は、その未来図をまだリアルに描き切れていないようにも思えます。

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    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
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