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    会長選最低投票率更新が示す日弁連の現実

     2月9日に行われた日弁連会長選挙の投票で、東京弁護士会所属の菊地裕太郎氏が、同会所属の武内更一氏を破り、次期会長に当選しました。同日現在の開票結果仮集計によれば、菊地氏の得票数は、武内氏に1万票以上差をつけた1万3005票で、過去最多での当選となりますが、会員数の増加で選挙人数そのものが増え、過去2回の選挙で当選者の得票は過去最多を更新しています。前回2016年選挙から選挙人数は約2400人増え、前回当選の中本和洋氏の得票数から菊地氏は700票上乗せしていますが、選挙人数に占める得票数の割合でみると、菊地氏は、中本氏の32.9%とほぼ同率の32.7%という結果です(2014年当選の村越進氏は33.6%)。

     際立っているのは、やはり40.8%という投票率の低さです。1981年の谷川八郎会長辞任に伴う補欠選挙を除く、通常の会長選挙では過去最低。前々回2014年の46.6%から最低を更新し、史上2番目に低かった前回2016年から6.4ポイント下げています。また、各単位会別にみると、前々回30会、前回28会あった投票率50%を超える会が、今回16会とほぼ半減。逆に30%未満の会は前回の3会から11会に増えています。今回、会員は会長選挙からさらに遠のいたととれます。

     選挙の構図そのものは、過去20年にわたり日弁連会長選挙で展開されてきた、「主流派」といわれる「改革」路線のうえの執行部方針を継承する陣営と、反「改革」路線の反執行部派の闘いとみることはできます。その構図でみれば、反「改革」派陣営から前々回2014年に継いで二度目の出馬となった武内氏は、同年から選挙人数が約5000人増えながら、得票数を1300票余り減らしました。

     2008年の選挙で7000票余り獲得して、当選した「主流派」候補に2300差に迫った反「改革」派の高山俊吉氏が、8年4期ぶりに出馬した前回2016年選挙では伸び悩み、4900票余りにとどまったことからみても、同派が従来の支持票を固め切れず、かつ、それを埋めるような新たな票の上乗せも出来ていない状況がみてとれます。最多得票会でみても、高山氏が前回、埼玉、千葉、栃木、岩手で最多を押さえたのに対して、今回武内氏は同氏が2014年の出馬で最多だった千葉でも勝ちきることができず、全会で菊地氏の最多票を許す形になっています。

     また、反「改革」スタンスでは、高山・武内陣営とは一致しないながら、反執行部の票を集め、前記過去20年の会長選で唯一、「主流派」候補を破った2010年選挙(再投票)での宇都宮健児氏の約9700票、破れたものの再投票・再選挙まで持ち込んだ同氏7600票余りの獲得票を見ても、日弁連会長選挙での「改革」路線を挟んだ会員票の流れの潮目が、決定的に変わったことがうかがえます。

     今回の選挙については、前記対立の構図とは、別の観点を押さえておく必要があります。この選挙で主張された、大きな政策の柱でみると、菊地氏は「憲法の根本規範を護る」「公正・公平な人権尊重の社会」「弁護士業務基盤を確かなものにする」「貸与制世代への対応」「災害対策・被災者支援」「刑事・民事の司法改革の推進」「法曹養成制度」「弁護士自治を堅持」、武内氏は「9条改憲反対・戦争阻止」「権力と対決のための弁護士自治堅持」「弁護士貧困化攻撃をはね返す」「刑事司法改悪に反対」「白紙委任状による総会支配阻止」。

     「9条改憲反対」を前面に出している点や、法曹養成制度にしても法科大学院制度を完全に破綻しているとみるかどうかなど、両氏の主張には際立った違いがあるものの、一方で弁護士の経済的な状況への対策や弁護士自治堅持は、中身は異なるとしても、弁護士・会が置かれた現状から、両氏とも避けて通れないテーマとしたととれます。

     今回の選挙について、陣営の関係者に聞くと、明確な対立構図を持っている両陣営でありながら、不思議なことに争点を明確に会員に伝え切れなかったというニュアンスの答えが返ってきます。一つの要素は、司法試験合格者数が取りあえず1500人台で落ち着いていること。今後の適正人数について、菊地氏側がやや柔軟ととれる姿勢をみせたこともあって、これまで「改革」路線をめぐる大きな焦点となってきた法曹人口問題の対立軸が、会員の投票行動につながる争点としては霞んだのではないか、という見方もあります。

     しかし、今、この選挙から推測すべき最も大きな要素は、そこではないように思います。それは、一言でいえば、現在の多くの会員の関心が、日弁連でも「改革」路線でもないところに、いよいよ傾いてきたということではないか、ということです。現在、会員弁護士が抱える不満の根源は、明らかに「改革」がもたらしたものです。しかし、以前のように「改革」路線を変えるための議論を求めていない。変えられる現実感がない。そして、一義的に日弁連に求めたいことは、会費減を含めた会員利益につながることであり、さらにそれにつながらないことをやめること――。そうした根本的な会内に充満する要求が、結局、従来の日弁連を堅持する候補へも、さらに強い新たな団結を求める候補へも投票することを回避させた、最低投票率の現実なのではないのか、ということです(「日弁連会長選挙結果から見える現実」)。

     選挙に臨んだ陣営関係者の口からも、そういうムードを感じとったという声が聞こえてきます。これまでの日弁連会長選挙でも、「投票にいっても同じ」という、候補の楽勝ムードから投票行動に及ばなかった会員も含め、消極層・無関心層が存在してきたことは事実ですが、今回、投票行動に及ばなかった6割の会員の中身はそれとは異なり、日弁連に対して、よりはっきりした別の意思を背景にしつつあるととることができそうなのです。言い過ぎかもしれませんが、弁護士自治を含めて、両陣営にとって共通の「敵」が会内に生まれているという見方をしなければならないところにきているのかもしれません。

     遠くない未来、日弁連会長選挙に「弁護士の生活が第一」とか「弁護士ファーストの会」といった名称、あるいはそういうスタンスを前面に掲げた勢力が推す候補が登場するかもしれない。そして、それは「改革」が生んだ、弁護士としては避けられない、極めて現実なスタンスということになるかもしれません(「『普通の業者団体』という選択と欲求」)。しかし、それは弁護士という存在が、結果としてどんどん内向きになっていくことだとすれば、やはり私たちは、それが果たして有り難い「改革」の結果なのかどうかだけは、問い続ける必要があります。


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    No title

    下のコメントの記事に、会社の回答として、
    「弁護士資格を持ち、弁護士事務所や企業勤務実績のある方からの応募者に対しては、従前の収入額を考慮するなど、柔軟な年俸提示をしております」
    とあるので、330万〜400万円を見て応募した弁護士(修習生)はいるのですね。
    弁護士資格を持つ人へ向けた内容ではない求人を日弁連のひまわり求人に出すわけですから、弁護士資格も地に墜ちましたね。

    No title

    例の○将のことが記事になる前に、○将の言い分がもう記事になってたから貼っておくわ。あくまでも弁護士向けの求人ってわけではないってよ。
    弁護士資格も地に堕ちたとか適当に記事にすんじゃねーぞ。
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180219-00000012-jct-bus_all&p=1
    >「弁護士資格を持つ人へ向けた内容ではない」と強調
    >2月19日に文書で回答し、
    >「(募集広告に記載されているものは)あくまで企業法務における法務課社員の募集の内容です」
    >弁護士資格を持つ人へ向けた内容ではない、ことを強調した。

    No title

    >私たちにとってありがたい弁護士像

    どんな負け筋訴訟でも勝訴してくれて(そして訴訟の相手からたんまりぶんどってくれる)
    この事件は勉強になりましたからお代はいりませんよ(にっこり)

    と言ってくれる弁護士のことです

    いねーよそんなもん

    No title

    私たちにとってありがたい弁護士像

    というのものを、明確に示していただければ。

    No title

    若い合格者なら、なおさら市場価値が高いから、そらぁ餃子の王将どういうつもりじゃーって大騒ぎにもなるわな・・・

    No title

    某社の求人で
    http://blog.livedoor.jp/schulze/archives/52207881.html
    >求人対象者 弁護士・修習生いずれでも可
    >弁護士経験年数 不問
    >転勤 なし
    >昇進・異動(転勤以外) あり(社内規定による)
    >勤務日 月~金
    >勤務時間 9時00分~18時00分
    >給与(年俸) 330万~400万円程度  
    >雇用形態 正社員
    >契約期間 期間の定めなし

    なんかネット上ではわーわー不当だとか言ってるけど
    多分これ、(年齢制限できないから極端に言ってるだけで)
    フレッシャーを採りたいだけだぜ。
    年齢制限をあからさまにできない場合は、企業ってのはなるべく曖昧な表現にしながら採用の人物像を語ってるだけなんだがな……。そんなのも分からないで記事をネタにするのか……。

    No title

    >遠くない未来、日弁連会長選挙に「弁護士の生活が第一」とか「弁護士ファーストの会」といった名称、あるいはそういうスタンスを前面に掲げた勢力が推す候補が登場するかもしれない。そして、それは「改革」が生んだ、弁護士としては避けられない、極めて現実なスタンス

    というわけで、選挙も終わりましたから、「弁護士会費ゼロ」と「新弁護士会設立構想」の人への取材とかも本格的にやっていただきたいところであります!

    No title

    対立候補は極左の思想を持たない候補が望まれる。

    サヨク対極左では投票率も下がろうというもの。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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