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    「新弁護士会設立構想」ツイッターが意味するもの

     日弁連会長選挙の真っ只中、「新弁護士会設立構想」(@ShinBengoshikai) というツイッターが、にわかにネット界隈の弁護士界関係者のなかで話題になっています。「弁護士会が強制加入団体であることを自覚し、特定の思想に偏向しない、必要最小限の機能(ミニマム機能)を備えた、新しい弁護士会の設立を構想する」とうたい、現在の東京の三弁護士会に加えて4番目の単位会をつくることを目指す考えを示しています。

     このツイッターが指摘するように、弁護士法34条1項には弁護士会が、その所在地で設立の登記によって成立するとあり、弁護士会登記令7条には、弁護士会の設立登記の申請が規定されています。しかし、弁護士法32条には弁護士会が地方裁判所の管轄区域ごとに設立されることが定められています。東京の三弁護士会の存在が例外的に認められたのは、同法附則89条でこの法律施行の際に、既に存在していた弁護士会の存続を認めたから、ということになっています。

     技術的な可能性については分からないところもありますが、一般的にこの戦後の法的な取り扱いが、戦前のいきさつで分かれ、法的には違いがない三弁護士会の東京での併存を、例外的に固定化させたという捉え方がなされており、同時にこのことから新弁護士会は作れない、というのが、業界内でも一般的な理解になってきたといえます(「なぜ東京に三つの弁護士会?」)。

     ただ、これまで新弁護士会設立という議論が弁護士会内で表立って浮上してこなかったのは、やはり前記法的な縛りもさることながら、そもそもそんなことを積極的に打ち上げようとする人間がいなかった、つまり、そう考える弁護士のなかの動機付けが希薄だったということがあると思います。ときどき弁護士界内でそんな話がなされても、居酒屋談義以上にならなかったのは、当然といえは当然の現実ではありました。

     しかし、今回の動きに対しては、会内に「ついに来たか」という受けとめ方もあります。会費負担を含めて弁護士会強制加入への不満があるなかで、新たな道を会員に提案する動きがいずれ具体化するという見方が会内で広がっていたことがあります。前記実現可能性はともかく、現実に「必要最小限の機能」だけもった、より「業者団体」に近い弁護士会が東京に誕生すれば、現状、相当の会員がそこに流れ、巨大な弁護士会になる、といった想像をかき立てるには十分なものがあるのです(「『普通の業者団体』という選択と欲求」)。

     ただ、この動きに対して、やや違う見方をする人もいます。ツイッター上での発言を見る限り、同構想が弁護士会の「政治的中立性」の観点にこだわっているようにとれる点についてです。会員個人と合わない思想と政治活動のために会費が使われることに納得がいかない、という従来からいわれてきた弁護士会批判の論調が、この構想ツィッターでも繰り出されていますが、日弁連批判、弁護士自治・強制加入廃止論ではなく、強制加入を前提に弁護士会の一角に、従来の発想に立たない弁護士会を実現させて、会員の賛同を得る、という方向です(「弁護士会が『政治的』であるということ」)。同時に同ツィッターはそうした「政治的」活動は、強制加入の弁護士会という枠組みではなく、弁護団など任意団体でやるべき、という立場を打ち出しています。

     これについて、あるブログがこんな疑問を投げかけています。

     「とても勇気ある行動だとは思いますが、少しズレてるかなぁ・・・。私に言わせれば、『特定の思想に偏向』してるかどうかなんて、どうでもいいんですよね。本当の意味で理想の弁護士会は、『徹頭徹尾、会員の利益のみを追求する業界団体』です。会員の利益のため、徹底的な合格者削減を主張し、会員の利益のため、弁護士報酬のデフレ断固阻止を主張し、会員の利益のため、あらゆる分野での弁護士関与の義務づけを主張し、会員の利益のため、隣接士業の職域拡大に徹底的に反対し、そのために必要な政治活動・意見表明をガンガン積極的に行っていく、そういう組織こそが理想なんです」
     「会員の利益になる活動さえしてくれていれば、あとは、死刑賛成だろうが反対だろうが、改憲賛成だろうが反対だろうが、別に好きにしてくれて構わないんです」(「弁護士が会社員に転職して細々と生きてます2」)

     実は、若手会員、あるいは弁護士会に見切りをつけようかどうかを考え始めるレベルの会員意識は、この設立構想ツイッターの発想を越えて、もっと純粋に「業者団体」を志向している、ことをうかがわせます。「政治的」批判、会員の思想・信条の自由という切り口で共感する会員も一定数存在すると思いますが、会員の不満の本筋は、このブログ氏がいう会員利益、いわば「生活」なのだと、ということです。

     ただ、このブログ氏の発言は、奇しくも別の弁護士会の現実を改めて浮き彫りにしています。弁護士会の活動を支えてきたサイレント・マジョリティの存在です。かつても弁護士会の活動に直接かかわる会員でなくても、それを了解事項としてきた、まさに「別に好きにしてくれて構わない」という会員で支えられていた部分は確かに存在し、また、それを支えていたのが業務の安定、つまり「生活」であったということです。

     そう見ると、設立構想のツイッターとは違い、「政治的批判」に屈せず、専門的職能として筋を通す存在としての弁護士会の強制加入・自治を維持することから逆算するとしても、今、何が求められるのかは自ずと見えてくると思うのです。いわゆる「経済的自立」を含め、弁護士の「生活」の安定化、その足を現実的に引っ張る結果となった増員政策を含む「改革」路線から一刻も早く決別し、会員利益にも同時に向き合う弁護士会に転換することです。かつてのように会員の了解を得る基盤を、少しでも回復する方向に弁護士会自身が向かわなければならないはずなのです(「日弁連『偏向』批判記事が伝えた、もうひとつの現実」 「『左傾』とされた日弁連の本当の危機」)。 

     1月18日の開設から現在までに、同構想ツィッターが獲得しているフォロワーは344人ですが、日増しに増えています。同構想ツィッターは日弁連会長選期間中であることを理由に、「匿名」にしていますし、また、強制加入を前提としながら、前記したような「ミニマム機能」会の先に、どういう弁護士会像を描いているのかいないのかも、現段階では皆目分かりません。もっとも、専門職能として権力から独立して筋を通すことがなくなるということは、当然に強力な自治を保持している根拠にかかわってくる話ですから、「ミニマム」化、あるいは純粋「業者団体」化した会に、もはや弁護士自治の未来があるとも思えません。

     今、弁護士会が何を目指すべきなのか、何が失われようとしているのかを私たちも冷静に考えて、この動きを見つめる必要があります。


    弁護士自治と弁護士会の強制加入制度の必要性についてご意見をお寄せ下さい。司法ウオッチ「司法ご意見板」http://shihouwatch.com/archives/4794

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    テーマ : 弁護士の仕事
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    No title

    拡散大歓迎とのことなので
    ブログ主殿はこちらのツイ主に取材すべき。
    新弁護士会どころかもっとスケールの大きな話
    https://twitter.com/ShminLo/status/1024083023128457216
    >突然ですが、いまの日弁連っておかしくないですか。 私たちは「ともに日弁連を変えよう!市民のための司法をつくる会」 (略称「変えよう!会」)という任意団体の設立準備を進めています。 全国の弁護士に向けて発信を始めました。どこかで案内を見たらレスをいただけると嬉しいです。拡散も大歓迎。

    それともあれ?これが例の「新弁護士会設立ツイッター」の人?

    No title

    >新弁護士会設立手順に関する資料のようなものは、存在しているのでしょうか?

    普通にツイ主に聞いてみればいいのではありませんか?
    少なくともツイッターそのものをやめているわけではなさそうですし。

    No title

    新弁護士会設立手順に関する資料のようなものは、存在しているのでしょうか?
    存在するのであれば問題なのですが、表に出ていない今のままでは、絵に描いた餅で終わってしまいそうで…。

    No title

    そういえばこの新弁護士会設立構想のツイッターの更新も止んだな……

    No title

    上記ツイッターにあるけど
    >懲戒請求されて心配している弁A「心を改めました。どうしたら懲戒されないでしょうか?」
    >日弁連元会長「まずは徳を積みなさい」
    >A「はい。まず何をしたら良いでしょうか?」
    >元会長「明日から菊地選対に来て電話かけをしなさい」
    >A「はい!」

    >先日、実際にあったやりとりです。
    >14:46 - 2018年1月27日

    懲戒逃れのための選対参加か……。
    ほんと腐ってるな。

    No title

    何もしない人間が、何かをしようとする人間に対し想像だけで問題を突きつけ、その意気をくじこうとする。

    まあ主流派の息のかかった人間であることは分かるが世論のコントロールをこんなところで出来ると思うのは、浅はかなのでは?
    逆効果だと思うけど。

    No title

    >順次リストラしたらいいんじゃないですか?

    理想はそうですがね、実際にやるとなるとできますか?
    某テ〇〇の雇止めですらあれだけ話題になったんだ。
    正職員となれば無理でしょうな。

    ご本人もどこまで本気なのか。

    No title

    順次リストラしたらいいんじゃないですか?

    No title

    下の公約、拝見しましたが素晴らしい。
    素晴らしいんですが、
    業務ををミニマム化ってことは、過剰になった弁護士会の職員はどうなるんですかねぇ……。

    No title

    合併.com または http://xn--srq54i.com/

    二弁の先生が、3会の合併、ミニマル化、収益化により、単位会の会費をゼロにすると公約されています。当たり前だが素晴らしい。こんなベテランもいらっしゃったのですね。もちろん「唯一」の例外ですが。こういう人材は、つぶしちゃいけませんよ。応援しましょう。

    No title

    自分が儲けたことは棚に上げて、
    「若者も手弁当でやれ」
    って偉そうなことを言う割に、本当に手弁当でやったら潰すよね?
    人権も弁護士自治も見え透いてるんだよ、全部あんたらの私的利益のためでしょ。

    この先の弁護士会をどうするかは、これからの若者に任せてくれないかなぁ。

    さっさと安全圏に逃亡した奴から、上から目線で分かったようなことを言われたくもないしね。

    No title

    各地日弁連会長選挙もあるところ、
    某会では、「会費ゼロ」を公約にあげた候補者が出たそうだ。
    ブログ主殿においては、ぜひこのような単位会の選挙運動も記事にしていただきたい。

    No title

    強制加入団体性を維持するメリットが皆無。

    中国の弁護士会も国家から独立した強制加入だが、政府はいくらでも人権派弁護士とその家族を弾圧している。また、中国は海洋侵略を拡大し、チベットやウイグルや香港で人権侵害を繰り返している。インドやブータン等との国境付近でもしょっちゅう戦闘を行っている。

    その中国と日本の弁護士会は、良好な関係を築いている。弾圧された人権派弁護士のことは黙殺。各種侵略やチベット・ウイグル・香港問題も無視。

    ははぁ、自由と正義とは、侵略と人権侵害のことですか。日本の弁護士会は、70年かけて本質は変わりませんが、あるじが大日本帝国から中国共産党に変わったのですね。弁護士自治、万歳。ありがたくて泣き女のように止めどもなく涙が出ます。中共様のお役にたてると思えば、会費なんて安い安い。

    中共様に忠誠を誓えば、あとは御目こぼしいただいて、ウォールストリートの強欲主義にしたがって自由に経済活動をさせていただけるという訳ですか。何というご慧眼なのでしょう。凡人にはこんな悪魔のようなスキーム、到底考え付くことも実行することもできません。

    もちろん、手弁当で国選を頑張った弁護士に対する冷遇も忘れませんよね。莫大な国家賠償を狙える無罪弁護はガッチリベテランの弁護団が押さえ、若手によるGPS最高裁判決に対する手当は却下。なんとも高貴なおふるまいです。今のベテランによる刑事弁護スキームを、尊敬してやみません。

    既に半分を占める新試験世代から高額な会費を徴収し、ベテランがお好きに運用できる強制加入団体性って、本当に素敵ですね。このシステムを実行なさっている先生方は、悪魔的な天才です。純粋で人間の心を残している若手には、到底まねできません。

    No title

    是非腐り切った業界の体質に風穴を

    No title

    なるほど、業務をスリム化して会費を安くする、というのが、主たる立場ですね。

    それであれば、粘着質の方々に絡まれるという面倒を避ける為、思想信条については沈黙した方が良さそうです。クレーマー対応自体が、無駄なコストです。

    設立後は、日弁連の玉虫色の宣言をうやうやしく拝借し第四弁護士会のHPにコピペすればよいのです。10秒間で十分。コストもかかりません。

    がんばれー。

    No title

    あ、このツイート主を暴けということではなくて、これまで大権力様側が、新人が何か新しい動きをしようとしたら潰したり蔑んだりしてきたって意味ね。

    ただ、ここでブログ主殿が記事にしてしまうと、大事になって
    かえってツイート主の迷惑にならんかね?
    まぁそれで失敗したとしても、「当局に邪魔されましたので失敗しました」ということは言えるわけだが。

    しかし面白い試みではあるな。
    ツイ主が匿名か否か
    仮にツイ主が某事務所出身であったら結果はどう変わるか

    個人的にはここまできて、どこの派閥出身者か、どういう経歴か(イソ弁時代も含め)、主流派か否かなぞ関係ないがね。

    No title

    >同構想ツィッターは日弁連会長選期間中であることを理由に

    いやいやいや、ちゃんと
    >日弁連と東京3会から狙われるのが怖いので、当面はノンネームでやります
    って書いてあるでしょう(1月18日)
    狙われるのも立派な弁護士会の暴かれるべき闇ですよ。

    No title

    強制加入団体としての弁護士会をぶち壊すために、まずその問題点を明らかにした争点を掲げて新団体の設立を目指す動きがあることは歓迎すべきことです。

    No title

    権力から独立してスジを通すことと、会員のことを省みることとは両立します。これが両立しないという発想に既に誤謬があります。
    また、会員のことを省みることと、純粋な業界団体化は、イコールではありません。
    ただし業界団体化することは避けられないし、そうなろうとするのは、これまで漫然と高額会費を何の疑いもなく会員から搾り取るだけ搾り取り続け、かつ一銭にもならぬ会務・厄介事を押し付けてきたことの報いであると考えます。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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