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    法科大学院修了生「モテモテ」記事の危うさ

     「法科大学院、企業にモテモテ 志願者・募集減の中なぜ?」というタイトルで、朝日新聞が法科大学院修了生をめぐる新たな動きとして、注目しています(11月28日付け大阪本社版夕刊、朝日デジタル12月16日付け)。大手企業が法科大学院修了生を対象とした法務部門の説明会を開くなど、採用に積極的な姿勢を示し出したととれる内容です。

     正直、ここに出てくる企業はともかく、この動きがどのくらいの広がりを持っている話なのか、判断材料不足であり、多少盛った見出し表現だとしても、「モテモテ」などという状況にあるという現状認識には疑問もあります。しかし、文中に登場する修了生就職支援サイトの運営会社や法科大学院の関係者は、企業が修了生の能力を積極的に評価し、法科大学院養成の人材が役立つと認めたと、この動きを手放しで歓迎しています。

     こうした動きがあり、現実的な広がりをみせるということであれば、それ自体は、修了生にとっては、結構なことかもしれません。ただそうだとしても、これを法科大学院修了生の活用案として、あるいは今、生き残りがかかっている法科大学院そのものの存在価値として、期待に結び付けるというのであれば、その前に少なくとも二つのことを押さえておく必要がある、と思うのです。

     一つはいうまでもなく、これは法科大学院が担ったはずの法曹養成からはズレた話であることです。必ずしも弁護士である必要はないという企業側のニーズ、さらに法科大学院制度と一体で推進された増員政策の失敗で、弁護士そのものが経済的な意味での資格の価値が下がっているという現実が背景にあります。しかし、前記記事中の法科大学院関係者は、これも「法科大学院の設立の目的」などとして、この点をさらっと流していますが、これはあくまで「改革」の想定外の結果、つまりは社会が将来必要とする法曹を量産するという目的が不調に終わったうえでの話なのです。「改革」見直しの議論のなかで、法曹ではなく、いつのまにか「法曹有資格者」という注目の仕方が登場したのと同様です(「法曹有資格者」への変化」)。

     なぜ、そこにこだわる必要があるのか、といえば、そのこと自体が、これからも法科大学院に、本来の意味での法曹養成について、中核たる地位を与えるべきかどうかという問題にかかわってくるからです。今のところ、法科大学院は修了を司法試験の受験要件とすることを伴った、法曹養成の中核的地位を維持することになっています。しかし、その「価値」をもはや本来の法曹養成自体とは違うところに求めて存在していくというのであれば、法曹界にとっては志望者のチャレンジ機会を奪っている受験要件化にしがみつく、法曹養成制度としての根拠は希薄化してくるはずです。

     既に法科大学院を、新たな法曹を輩出する登竜門としてではなく、むしろ弁護士を含めた有資格者の教育機関とするという提案もあります。受験要件化を外し、予備試験を廃止して、法曹への関門は司法試験ひとつに戻す。法科大学院は前記したような社会に必要とされる法務ニーズを視野にいれた教育と、法曹の再教育機関として存続する。また、そのなかで、司法試験の前に法科大学院を自主的に経由して合格した人材が社会から評価されれば、その時、はじめて本当の意味で法曹養成のプロセスとして「価値」も認められる――。こうした方向への移行が、より説得力を持ってくるように思うのです。

     そして、もう一つは、現在の中核たる法科大学院制度を前提としたときの、この記事が伝える修了生活用案の、志望者からみた「価値」の問題です。記事はインハウスの増加という、あえて前記対象とは異なる弁護士資格者の動向をごちゃまぜにしながら、「修了生の多くは法曹界を目指していたが、学生たちにとっても新たに進路先の選択肢が増えることになる」などとしています。

     冒頭に書いたように、この記事が伝える動きが、どのくらいの広がりをもつものになるかもさることながら、志望者としては、法科大学院の時間的経済的コストとの対比で考えなければならないのは、法曹界志望と変わりません。それだけの「価値」があるということにするには、経済的リターンを含めて、法科大学院を経て企業に採用される、より動機付けになる魅力がなければなりません。チャンスというだけではなく、処遇にしても、法科大学院を経ることによって上乗せされるものがあって、はじめて「選択肢」になるのではないか、ということです。逆にそこをあいまいにするような、情報の発信は、効果が期待できないばかりか、誤解を生みかねないものになるはずです。

     法科大学院修了者の有効活用、そして有効活用できることによっての法科大学院の「価値」強調――。法曹人口増員論同様、ある意味、企業側の意図を超えて、「改革」、制度を維持したい側の思惑をはらんでしまいそうな、「企業にモテモテ」記事には、やはり危うさを感じます。


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    テーマ : 資格試験
    ジャンル : 就職・お仕事

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    No title

    その中本が自ら、企業内弁護士でも地方公共団体にでもいきゃいいじゃん
    それを魅力的な仕事の内容だというならさ

    けど、自分はそうしないんだろ?
    それでいて、自分とは違う道があるよ、魅力的だね、とか
    説得力ねえし。

    No title

    Funny.今日って4月1日だった?

    No title

    「日本の権利救済は世界で通用しない」日弁連・中本会長が語る司法の課題」
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171225-00007182-bengocom-soci

    >私はこんなに素晴らしく魅力的な仕事はないと思っています。自分で仕事が選べ、社会から評価されます。最近では、企業内弁護士になる人もいれば、地方公共団体や中央官庁で働く人もいて、キャリアの積み方も様々です。企業で会社員として働いてから、弁護士業に戻ってくることもできます。また、報酬が明確になっていて、自分の努力が目に見えることも弁護士の良いところです。
    >また、法科大学院を卒業すること自体のメリットもあります。最近では、法務部門の人材として、法科大学院修了生を積極的に採用しようとする企業が増えつつあるという報道もなされているところです。

    とのことです。
    ネガティブキャンペーンはほどほどに。

    No title

    There is a high unemployment rate among attorneys, and this is worldwide, not just in the USA. It began in the USA but now in worldwide.

    Still Mr 中本 和洋 insists attorneys can get profitable job by going global, which is an outright lie. Or, he might have severe difficulty in English or mathematics. JFBA should elect someone more intelligent not to make matters worse.

    No title

    法科大学院修了生が本当に「企業にモテモテ」と言える状況であれば,法科大学院修了を司法試験の受験要件から外しても,法科大学院はビクともしないはずですね。

    No title

    2年間とローの授業料2年分(500万円くらい?)の投資に見合うリターンかどうかを考えて選択すべき
    てか、これで崩壊大学院に未来があると考える奴は所詮その程度
    競争社会を生き残ることはできないからなんでもいいんじゃない(鼻ホジ)
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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