法学部生の意識から見る法曹志願者減の現実

     2月13日に開催された中央教育審議会の第78回法科大学院特別委員会で、興味深い資料が配布されていました。法務省と文科省が昨年9月から10月にかけて、2015年の司法試験合格者数上位20校の法科大学院設置を置く大学の法学部生を対象に実施した志望に関するアンケート調査(有効回答数5071人)の結果です。

     調査の目的には、「法曹志願者の減少に関する要因等を把握し、今後の施策の検討に活用する」ことがうたわれています。いわば志願者予備軍たちが現状何を考えているのかを解き明かすところから、法曹志願者減の原因に迫るものですから、これ以上の直接的なアプローチはない、といってもいいものです。

     詳細はご覧頂くとして、いくつか興味深い数値をピックアップします。

     ① 将来の職業の第1志望 「法曹等」30.0%、「国内企業」23.2%、「国家公務員」19.1%、「地方公務員」12.8%、「外資系企業」2.9%、「法曹以外の隣接法律専門職」2.3%。
     ② 職業選択に当たり重視すること(複数選択可) 「興味・関心ある分野で活躍できること」70.3%、「経済的安定」51.3%、「社会への貢献度の高さ」47.0%、「身に付けた専門的知識を活かせること」39.8%、「社会的地位・信用の高さ」33.3%、「働き方の多様な選択肢、ワークライフバランスの実現」31.5%、「高収入が期待できること」31.2%。
     ③ 法曹等志望の有無(カッコ内4年次以上) 「現在志望している」25.5%(28.9%)、「選択肢の1つ」15.3%(4.4%)、、「過去に志望」10.5%(12.8%)、「過去に選択肢の1つ」22.7%(27.5%)、「志望してない・選択肢として考えていたこともない」26.1%(26.4%)。
     ④ 志望者・選択肢として考えている学生の法曹としての進路(複数選択可) 「弁護士」65.4%、「検察官」34.4%、「裁判官」24.2%、「未定」10.1%、「その他」2.4%。
     ⑤ 法曹等の魅力(現在志望・選択肢、過去に志望・選択肢の順。複数回答可)「専門的知識を使った仕事」64.7%、56.2%、「社会的弱者救済、人を助ける仕事」50.5%、48.0%、「社会的地位・信用の高さ」46.9%、44.4%、「高収入が期待できる」36.5%、31.9%、「仕事内容の選択肢・自由度」36.5%、14.8%、「基本的人権の擁護、社会正義の実現に寄与」30.7%、29.4%、「経済的安定」28.0%、15.6%。
     ⑥ 現在志望者・選択肢の学生で法曹志望に不安・迷い 「感じている」54.8%、「少し感じている」33.1%、「感じていない」12.0%。
     ⑦ 現在志望者・選択肢の学生の不安・迷いの内容(上位3つ回答) 「司法試験合格に自信がない」50.7%、「法科大学院修了までの経済的負担」33.6%、「法曹としての適性」30.2%、「他の進路に魅力」28.6%、「法科大学院修了までの時間的負担」26.7%、「法科大学院修了者の司法試験合格率の低さ」23.0%。
     ⑧ 過去に志望・選択肢の学生の不安・迷いの内容(同)「他の進路に魅力」53.7%、「司法試験合格の自信がなくなった」40.7%、「法曹としての適性がない」32.9%、「法科大学院修了までの経済的負担」29.9%、「法科大学院修了までの時間的負担」26.4%、「受験資格を得るまで複数の試験を受ける負担」25.4%、「就職後の収入に不安」17.3%、「就職できるか分からない」17.0%、「法科大学院修了者の司法試験合格率の低さ」11.1%。

     これをみると、法科大学院の受験要件化や増員政策に伴う弁護士の経済的魅力の減退という「改革」の結果が、志願者予備軍の「選択」に、どの程度のウエイトでのしかかっているのかが見えてきます。この中には、もちろん、司法試験合格への自信や適性への不安といった、旧司法試験体制でも同様にあったと推測できるものもあります。しかし、現在の不安・迷いである⑦でも、実質的な断念理由といえる⑧においても、法科大学院制度がもたらす経済的・時間的負担は、やはり大きな原因であることが分かります。
      
     法曹の魅力や志望の動機のなかでは、専門的知識の活用や弱者救済・人権擁護といった仕事の性格とともに、「経済的安定」とか「高収入」といった要素が大きなウエィトでくっついている現実がくっきり示されています。

     法曹志願者減の要因把握というこの調査の目的と照らせば、法科大学院の時間的経済的負担と合格後の収入への不安という、「改革」がもたらした新たなマイナス要因が、この仕事の性格上の魅力を理解し、一定の志をもって門をたたこうとする人材を遠ざけているということがうかがえる結果です。それは、別の見方をすれば、かつての法曹養成が何を担保していたから、志望者を獲得し得ていたのか、という最も現実的な切り口を浮き彫りにしているといえます。

     現在のところ、この78回法科大学院特別委員会の議事録は公開されておらず、同日、この配布資料がどのような扱いで、どのような議論になったのかは分かりません。一方で、この委員会ではもはや連携も視野に法学部と法科大学院のあり方を見直す方向が出ていますが、そのこと自体未修コースを基本とする建て前をとり、かつ法科大学院を法曹養成の中核と位置付けてきた「改革」路線の抜本的な見直しにつながるという認識も委員から示されています(第76回同委員会)。こうした議論のなかで、このアンケートが浮き彫りにした「改革」の結果がどこまで直視され、制度の見直し議論に反映するのか、そのことに注目する必要があります。


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    No title

    早く法科大学院消えてなくならないかなー

    No title

    >なのになぜ法テラスとか設けてダンピングしてんですか?それも、ダンピングに自ら飛び込むおバカさんの多いこと・・・

    弁護士法1条があるからでしょうね。

    >法テラスの幹部や日弁連の幹部は法テラス事件と国選しかやらないって聞きました。企業の顧問とかやらないそうですが事務所維持できるのかな。心配になります。

    そんな話聞いたことがありませんね。逆に……
    おっと誰か来たようだ。

    司法改革の本旨って、
    儲かる事件だけを考えろ
    儲かる方法だけを考えろ
    儲からない奴は淘汰されろ
    だと理解しているのですが。
    なのになぜ法テラスとか設けてダンピングしてんですか?それも、ダンピングに自ら飛び込むおバカさんの多いこと・・・
    法テラスの幹部や日弁連の幹部は法テラス事件と国選しかやらないって聞きました。企業の顧問とかやらないそうですが事務所維持できるのかな。心配になります。
    まあオイラはそんな高潔な人間じゃないから、法テラス案件を受けるなんてことはほとんどなく、人ごとにしか思わないが。
    弁護士の成功の鍵は、富裕層に関わること。それしかない。弁護士費用の価値をわからない人と関わるのはトラブルの元だからね。現に、つまらないクレーマー的なトラブルは法テラスに多く、富裕層案件には少ない。公認会計士で法テラス案件で出てくるようなクレームはないだろう。そういうくだらないクレーマーに関わるから、弁護士全体が悪く見られるんだよ。法テラスでクレーマーにまで門戸を広げたのは良くなかった。
    クレーマーなんかの依頼受けても、儲からない、感謝されない、文句言われる、世間から白い目で見られるといいことなし。

    No title

    司法試験受験者数5,967人
    合格者は恐らく1500人を下回ることはあるまい。
    去年よりも人数が減ってるのだから、合格する人数は多いだろう。頑張ってもらいたい。

    No title

    >「経済的安定」とか「高収入」といった要素が大きなウエィトでくっついている現実がくっきり示されています

    何と嘆かわしいことか。
    弁護士たる者、高収入を志望する者はそもそもこの業界を目指すべきではない。
    求められているのは、社会的弱者に対し、己の私財をなげうってまで公権力と闘う気概であったのではないのか。それが在野法曹としての心意気ではなかったのか。
    あるいはかつての先達がそういう姿勢を見せていたならば恥を知れと言いたい。

    No title

    金のためにロースクールにお布施をした上で成仏しないとは心が貧困です。
    いまや弁護士の資格は金で買える時代なのですから金を出せばいいのです。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

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