日弁連イメージ広告戦略への距離感

     日弁連が新たなイメージ広告となる、広報用CMを制作しました。昨年、ポスターで起用した女優の武井咲さんを登場させた15秒と30秒の2バージョンです。



      「人生何があるか分かりません。
      そんな時、あなたを助けてくれる人はいますか。
      私に笑顔をくれたのは弁護士さんでした」

     どこか東京の丸の内仲通りのようなオフィス街を悠々と歩く武井さんの前に、突然、現れる大きな崖。そこに落ちそうになる武井さんが、大きなひまわりの茎につかまって救われてニッコリ。上記ナレーションを被せた映像としては、ある意味、とてもシンプルです。

     弁護士が市民に身近な存在であることをアピールする狙いは、前回2013年に作成されたCM(「日弁連『フレンドリー』広告の見え方」)と同じですが、印象は大分違います。全国の弁護士を次々に登場させて、「私たちあなたの応援団」とリレーで歌わせた前作には、弁護士界内で言われ続けてきた「敷居が高い」イメージ払しょくのため会員にひと肌脱いでもらった感があります。それに対して、「頼りになる存在」の方を誇張した本作は、ナレーションがいう、振って湧いたトラブルの時に助けてくれるということのイメージ映像で、武井さんの注目度に寄りかかっている感はどうしてもしてしまいます。

     弁護士役の「大きなひまわり」も、ひまわりが弁護士を象徴していることを知らない人にどういう形で伝わるのか、ということもありますが、意地悪な見方をすれば、大胆な映像を使っている割に武井さんの印象ばかりが先に立って、肝心の弁護士の存在を印象付ける部分が弱い感じはします。

     しかし、以前も書きましたが、あくまでイメージ広告は、消費者のなかによいブランドイメージを形成するためのもので、直ちに成果が出せるものではありません。前回も今回も、最終的に「ひまわりお悩み相談」への誘導も図っていますが、そちらへの反響だけで価値をみるのは、この広告の目的の本筋ではありません。

     長く繰り返し流されなければ、効果は期待できない広告ですから、この種の広告は実質的な、あるいは実証的な費用対効果でみたならば出せないという見方まであります。仮にクライアントから効果についてのクレームがあっても、必ず広告代理店からは反復性や、しまいには直接いえるかはともかく、商品そのものの限界という言い訳が用意される。クライアントの発想で、向き不向きがはっきりしてしまう広告ともいえます。

     今回の日弁連のイメージ広告についても、前記「お悩み相談」への誘導を含め、「会費を使うだけの効果があるのか」といった不満の声が、はやくも会内から聞こえてきますが、そもそもその種の不満が出る主体が出す(出せる)広告ではない、といわなければなりません。

     ところで、一旦手段としての広告から目を離して考えると、弁護士は、今、どういうイメージを社会に形成すべきなのでしょうか。日弁連の広告戦略では、一貫して形成すべきイメージは「身近で頼りがいのある相談相手」です。それは前回にしても今回にしても、市民のなかにある種の固定観念があることや、常に本当の弁護士を知らない層の存在を前提として、そこをターゲットにアピールされてきたといえます。そこには需要開拓という発想も結び付けやすい。

     しかし、今、弁護士が直面しているのは、そこだけでしょうか。例えば、増員政策による経済的な激変に伴う弁護士のイメージ変化――依頼者のカネに手をつける型の横領事案の報道で必ず背景として伝えられる、その変化が生み出した正義に反するイメージ、ビジネス化がもたらした拝金的なイメージ、さらに逆にサービス業化のなかで足かせになる、無償性や採算性を追求することに対する誤ったイメージ。

     弁護士会は業界団体として、もっと弁護士が個人事業主であることをアピールしてほしい、という声まで会内にはあります。「普通の」個人事業主でありなから、普通ではない使命や期待を背負う仕事であること。弁護士の自覚として受けとめるべきところと、それでも「普通の」を理解してもらわなければできないことがある、というところに、イメージの問題を含めて弁護士の難しい現実があります。

     では、それを広告という手段でなんとかできるのか、といわれれば、それはそれで簡単にはいかないとは思います。その意味では、効果はともかく、日弁連は広報活動として、少しでもできることをやっている、あるいはあえていえば、何もやらないわけにもいかないからやっている、という見方もできるかもしれません。

     ただ、前記弁護士が抱えている現実を考えると、会費から高い費用を使い、女優まで投入する日弁連の熱意に反し、「身近」ばかりを打ち出す、そのイメージ戦略は、その効果や狙い以前に、会員の気持ちからは離れつつあるようにみえます。


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    テーマ : 弁護士の仕事
    ジャンル : 就職・お仕事





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    これから生き残るのは、多少の、見つからない程度のラフプレーをしながら、依頼者の依頼を実現するふりをする事務所。
    勝てば官軍なんですよ。
    儲かれば官軍なんですよ。
    そのためには、儲かりそうにない仕事や貧民からの仕事(総じて筋悪、相手無資力、よって儲からない、文句が多い、どうでも良い注文が多い、ヒマだから電話が長い)はやらないのがベスト。

    たった数万円の請求のためにワーワーいうほどヒマな人のおつきあいをする義理はない。たった数万円でも弁護士費用は最低10万と決まってるのだから、請求額の多寡に関わらず手間通りの報酬を取るべき。
    貧民からの仕事は、上述のように、やたらとどうでもいい注文を持ち込んでくるから、手間ばかりかかって割りに合わないからね。
    企業よりも貧民からの仕事の方がタイムチャージにするべきなんじゃないかな。

    No title

    ネットで特定の名前出したら名誉毀損になるでしょw
    それに表向きは名前隠してても身内にはバレバレだろうし。

    なのでもし本気で「一般人にも事実が認知されて欲しい」と思うのならば、現状のルールはクソだ、悪い評判を流しても事実なら名誉毀損にならないルールを作りやがれ、とでも主張するしか無い。
    というか何らかの方法で弁護士と関われば、一般人が弁護士会の現状を知るのは難しくないよ。

    No title

    黒猫さんは
    >現在は日本を代表する大手事務所までが,良識ある市民の眉を顰めさせるような悪徳商法に手を染めるようになり,悪徳弁護士が弁護士業界における「市民権」を獲得してしまった

    とここまで言っておきながら、その大手事務所がどこなのかを言おうとしない(弁護士界ではわかるからか)が、それは一般の依頼者にとっては何もわからず不安を煽るだけではないか。ましてや、ここまで断言するからには明らかな証拠があるのか。
    なくてただ体感で言っているだけならば、ネガティブキャンペーンに乗じているのと変わらないのではないか。

    No title

    意味のないイメージ広告より、弁護士の犯罪による被害者救済が先でしょう。

    指定暴力団と非弁提携をして、10億を超える被害を出した新司法試験第1号の非弁提携事務所の弁護士法人つくし法律事務所の問題は放置されたままです。
    もみ消されたといった方が正しいでしょう。

    これでは弁護士会は身内に甘いと言われてもしょうがないですかね。

    新司法試験制度を守るためとは言い、あまりにもいい加減な対応です。
    弁護士界は、やるべきことを先にやってからモノをいいましょう。

    No title

    そういえば黒猫先生。去年6月の最高裁判決を題材に、今後「司法書士狩り」が流行るとご自分のブログで予想されたようですが、どこの弁護士事務所がそんなことやってますか? 広告なんか見ます?

    やはり「司法書士狩り」は、閉山済みの金鉱跡で砂金探すような、不採算事業だったのでしょうか。

    No title

    本当に金の無駄遣い
    一日も早く日弁連を任意加入団体にしていただきたい。

    No title

    まんま「リーガルハイ」とか「真田丸」(22回「裁定」)のシーンでよかったんじゃね?と思わなくもない。

    あるいは芸能人で刑事事件とか離婚、遺産の紛争に関わった人とか使ったほうが真実味………。

    No title

    弁護士業界として本来取り組むべき課題は,「弁護士費用の適正化」でしょうね。
    明代の中国は,前後の時代と比較しても官吏の給料があまりに安く,官吏たちは(もちろん不正行為に手を染めて)賄賂を貰わなければ生活できないと言われていましたが,現在の弁護士が置かれている状況は,明代の官吏たちによく似ています。
    正当な弁護活動で得られる弁護士費用があまりに安く,しかも弁護士自体が大幅な供給過剰になってしまっているため,身内が逮捕された人の不安に付け込んで法外な金額の弁護士費用をせしめたり,昔は暴力団がやっていたような不当要求に手を染めたりと,ブラックな金を取る方法を開発し実践しているような弁護士しか生き残れない時代へと変わりつつあります。
    もちろん,司法改革以前にもそうした悪徳弁護士がいなかったわけではありませんが,現在は日本を代表する大手事務所までが,良識ある市民の眉を顰めさせるような悪徳商法に手を染めるようになり,悪徳弁護士が弁護士業界における「市民権」を獲得してしまった感があります。
    今時,日弁連の広告を見て弁護士を目指そうとするアホはほとんどいないと思いますが,仮にいたとしても,日弁連の振り撒いているイメージとはあまりにかけ離れた弁護士の実像を知った時点で幻滅し,法曹界から離れていくでしょう。
    プロフィール

    河野真樹

    Author:河野真樹
    司法ジャーナリスト。法律家向け専門紙「週刊法律新聞」の記者・編集長として約30年間活動。コラム「飛耳長目」執筆。2010年7月末で独立。司法の真の姿を伝えることを目指すとともに、司法に関する開かれた発言の場を提供する、投稿・言論サイト「司法ウオッチ」主宰。http://www.shihouwatch.com/
    妻・一女一男とともに神奈川県鎌倉市在住。

    旧ブログタイトル「元『法律新聞』編集長の弁護士観察日記」


    河野真樹
    またまたお陰さまで第3弾!「司法改革の失敗と弁護士~弁護士観察日記Part3」
    河野真樹
    お陰さまで第2弾!「破綻する法科大学院と弁護士~弁護士観察日記Part2」
    河野真樹
    「大増員時代の弁護士~弁護士観察日記Part1」

    お買い求めは全国書店もしくは共栄書房へ。

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